社長が訊く
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社長が訊く『マリオカート7』

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社長が訊く『マリオカート7』

社内スタッフ 篇

目次

5. シリーズ初のドライバー視点

岩田

今作には、3DSの本体を傾けることでカートを操作する、
ジャイロ操作」も入っていますね。

矢吹

はい。まず、
「ジャイロ(※20)を何かに使えないか」と
紺野さんから話がありました。
たまたまその頃に、『マリオカートWii』の
ハンドル操作を担当したプログラマーがチームに合流して。
では今回は、ジャイロを使った操作に挑戦してみよう、と。

岩田

『マリオカートWii』のときは、ハンドルを切る速さを
Wiiリモコンに搭載された加速度センサー(※21)を使って
感知していましたよね。

※20
ジャイロ=ジャイロセンサーのこと。物の角度や回転速度を検出し、姿勢制御などに利用される計測器。ちなみにジャイロ(gyro)は「輪」や「回転」の意味。
※21
加速度センサー=速度の変化を検出するための回路素子。Wiiリモコンに搭載している加速度センサーでは、三次元の加速度を検出することが可能。

紺野

プログラマーに言わせると、
ジャイロのほうが操作精度が上がるそうです。
すごく車好きなプログラマーが担当したものですから、
ディティールにこだわりながら
すすんで調整してくれました。

矢吹

そうですね。
そして調整している間に、
今回、『マリオカート』初の
ドライバー視点のカメラが入りました。

岩田

そういえば、『マリオカート』シリーズでは
ドライバー視点の表現は、はじめてですね。

矢吹

最初は、いつもどおりの全体が見えるカメラで、
本体を傾けると、ハンドルを切れるようにしました。
ただ、どうも一体感を感じられなくて。
じゃあちょっとカメラ変えようか、となりました。
当然デザイナー陣からは、
「こんなふうにしちゃっていいの?」と言われましたけど。

岩田

「これは『マリオカート』じゃない」って言われました?

紺野

まぁ、そうですね(笑)。
そもそもドライバー視点にすると、
自分が操作しているキャラクターが映りませんよね。
それと、急にハンドルの画像がアップになるんです。
「いや、そんなつもりでハンドル画像はつくってませんし!」
と言われてしまったり。

岩田

大写しすることが前提でないモデリングなんですね。

紺野

「ハイディティールなものをつくると
 時間がかかりますが・・・いいですか?」
と言われたりとか。
ちなみに、リプレイモードでもカメラを切り替えられるので、
ふだんはいつものカメラで遊んで、
リプレイのときだけドライバー視点に切り替えることもできます。

岩田

ドライバー視点でカートを運転していると、
ほかの車と当たっているかどうか、
感覚がつかみにくくなったりはしないんですか?

矢吹

そこは大丈夫です。
ただ、自分がこうらを当てられたときに、
何が起きたのかわからない、という問題があって。

岩田

そこはどう解決したんですか?

矢吹

当たったらカメラを引くことにしました。
で、すぐドライバー視点に戻ります。

岩田

ああ・・・。

紺野

バナナも、踏んだ瞬間にスピンしますよね。
ドライバー視点だと自分まで目が回ってしまいますから、
そのときもカメラをスッと引いて、
カートだけ回るようにしています。

岩田

なるほどねぇ。
多分これから遊ぶ人は、
何の違和感もなく受け入れると思うんですけれど、
その工夫をするのとしないのとじゃ大違いですよね。
大事なことなのに、つい見逃してしまうことだと思います。

紺野

最初は当然のように、スピンしたときに画面が回っていたんです。
1レースやったら、目も回ってしまったので(笑)、
それから調整していきました。

矢吹

当初予定していなかったジャイロですが、
『マリオカート』に慣れた人ほど、新鮮だと言ってくれます。
いつもと違う視点を、ぜひ楽しんでいただきたいです。

紺野

ちなみに、インターネット対戦をするときも、
『マリオカートWii』でハンドルマークが出ていたように、
相手がドライバー視点で遊んでいるのがわかるようになっていますので、
ぜひそこのところをチェックしてみてください。