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社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』

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社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』

オリジナルスタッフ 篇 その2

目次

4. 釣りのゲームをつくるということ

岩田

森田さん、そろそろ
釣りの話を訊いてもいいですか?

森田

え? 僕が先でいいんでしょうか?

岩田

宮永さん、
ステージの話はのちほどお訊きしますね。

宮永

はい。

森田

えーっと、どこからお話ししましょうか。

岩田

「『時のオカリナ』には、
釣りゲームが丸ごと1本入っているんじゃないか」
と言われるくらい、「釣り堀」が充実していますよね。
それは『ゼルダ』の伝統として
いまも続いていることなんですけど、
そこまで言ってもらえるようなものを
どうしてつくることになったんですか?

森田

ハイラル湖に水の神殿がありますよね。
あの神殿は青沼さんが設計したダンジョンなんですが、
そこで登場するボスはモーファといいまして、
それをつくっているときに
ちょうどプールみたいな地形があったんです。

岩田

プールからモーファが飛び出してきて、
リンクと戦うようになっていますよね。

森田

そうです。
で、そのボスをつくっているときに、つい・・・。

岩田

「つい・・・」って(笑)。
あの当時、そんな時間はなかったはずなんですが。

森田

でも、なぜかあったんです、時間が(笑)。

一同

(笑)

森田

それで、たまたまなんですけど、
サカナのモデルがありましたので・・・。

岩田

それも「たまたま」ですか(笑)。

森田

はい(笑)。
あきビンに入れるサカナのモデルがありまして、
それをちょっと拝借して、ダンジョンのプールに泳がし、
ちょこちょこっとやってみたら、
「お? なんか釣りできるやん」と。

岩田

釣り竿はどうしたんですか?

森田

何かのモデルを筒状に変形させて、
それで(竿を投げる仕草をして)こうしてました。

春花

リンクが剣をふるモーションを、
そのまま使ったんですよね。

森田

そうです。
でもそのときは個人的な遊びで。
まあ息抜きといいますか・・・。

岩田

その個人の趣味が、
プロジェクトチームの人たちに発見されるまで
どれくらいかかったんですか?

森田

えー、わりと早かったんじゃないでしょうか。

青沼

いや、僕は最初の頃、
森田さんがそんなことをやっているなんて
まったく知らなかったんです。

森田

あ、それはそうですよ。
青沼さんが来たらヤバイと思って、
画面をパッと消してましたもん。

一同

(笑)

青沼

だって、ボスをつくってもらわないといけないのに。

岩田

プロジェクトは何回も延期しているわけですし、
何よりボスをしっかりつくることが急務で、
ふつうはそんなことをしている場合じゃないですよね(笑)。

森田

ところがなぜか、だんだんできていきまして・・・。

岩田

「なぜか」って・・・。
それは森田さんがエネルギーを注いだからでしょう(笑)。
でも、そんなにかんたんに
釣りゲームができるものなんですか?

森田

ええ、それほど力をかけずにできました。

青沼

うそでしょ?

森田

いえ、ホントです。
というのも、イメージどおりなので。

青沼

ああ、つくる前から完成が見えていたんですか。

森田

そうなんです。

宮永

しかも、試行錯誤が少なかった・・・。

岩田

なるほど。
もともとつくりたいもののイメージは
森田さんの頭のなかにすごくクリアにあったんですね。

森田

そのとおりです。
あとは、素材と場所さえあれば、
パパッとできる状態になりました。

青沼

そこで、宮永さんたちが
地形をつくらなきゃいけなくなったんですよね。

宮永

はい。ある日、突然、
「釣りができる場所をつくってくれ」と
フィールドチームに相談がきて、
でも、「一体、どこにつくったらいいんだろう・・・」と。

岩田

そもそもリンクの冒険と
釣りのゲームはまったく関係ないわけですからね。

宮永

そうなんですよ(笑)。
でも、あそこまでリアルな釣りができちゃうと、
僕らの仕事が増えたとしても
「入れたい」という気持ちにみんながなりましたね。

青沼

そう、逆に周りの人が「これは絶対に入れよう」と
すごく盛り上がっていましたから。

宮永

そこで、「釣り堀」といえば
「やっぱり水に近いところだろう」となって、
ハイラルの湖畔につくることにしたんです。
ただ、もともとそのような設定がなかったものですから、
湖の端っこの、何もない崖のところに
扉を無理やり付けました(笑)。

青沼

そうだった、無理やりだった(笑)。

森田

釣りのミニゲームといっても、
けっこう大きなものになりましたから、
そのデータを読み込むために
別の部屋にする必要があったんです。

岩田

そうやって「釣り堀」の場所も決まり、
実際に中身をつくることになって、
最初の話に出た「釣り堀のおっちゃん」のように
森田さんからいろんな注文があったんですか?

森田

いえ、注文するというよりも、
「釣り堀」の設計は僕が担当させてもらったんです。
「ここに杭を」とか「こっちには浮き草を」みたいに・・・。

宮永

僕たちはベースになる土台の部分だけをつくって、
あとは森田さんが、浮き草とかの配置やら
何から何まで設計されました。

岩田

プログラマーが野望を持ったときは、
本当に強いということですね(笑)。

青沼

そういえば、「釣り堀」のサウンドは
敵と戦うときの音が鳴っているでしょう?

森田

あれは緊張感を出すために・・・。

宮永

あの曲、森田さんのリクエストなんですか?

森田

えー・・・はい、そうです。

岩田

森田さんがサウンドまで決めたんですか?

森田

僕が最初にリクエストして
自分で入れたのが、そのまま使われることになりました。

青沼

それって、リクエストしたというよりは、
どっかから勝手に持ってきて、
自分で鳴らしたってことじゃないですか?(笑)

森田

あ・・・はい、じつはそうです(笑)。

一同

(笑)

森田

いまやったら怒られますね~。
サウンドさんに「勝手に流すな!」って。

滝澤

それくらい、「釣り堀」は、
森田さんの“聖域”なんですよね(笑)。

春花

森田さんが好きなようにする場所なんです(笑)。

宮永

僕たちはサポートするだけなんです(笑)。

森田

えー・・・すみません、
本当にありがとうございました(笑)。