社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第18回:『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』

目次

2. “RPGの魅力”

岩田

ではつづいて、金田さんの
ビデオゲームとの出会いをお願いします。

金田

小森と同世代なのでかぶるんですけど、
僕も最初はファミコンで、
はじめて遊んだのは『ポパイ』(※10)です。
友達の家でビデオゲームをはじめて見て、
とにかくびっくりして。
それまでそれほど仲のいい友達でもなかったのに、
ほぼ毎日、遊びに行ってました(笑)。

※10
『ポパイ』=アメリカのアニメ『ポパイ』を題材として、1981年にゲーム&ウオッチ版、1982年にアーケード版、1983年にファミコン版が発売された任天堂のアクションゲーム。

岩田

当時、そういう事例はよくありましたよね。
どの友達の家に遊びに行くのかは
“ファミコンがあるかどうか”で
決まっていたということですね。

金田

そうでした(笑)。
あのころは子供だったせいか、
敵のブルートがちょっとでも違う動きをすると、
「こいつ、どんどん強くなっているんじゃないか!?」
とか、いろいろ想像してしまうんです。
「昨日のことを覚えているんだな、こいつは!」とか。

岩田

ああ、すごいですね。
そこまで考えていたんですか?

金田

それくらい想像がふくらんでいました(笑)。

岩田

どのジャンルにいちばん夢中になりましたか?

金田

小森と同じで、僕もRPGです。
物語をキャラクター目線で楽しむこと自体が新鮮だったし、
世界観にも夢中になったんです。
たとえば誰かが学校に説明書を持ってきたら、
その説明書にグワッとみんな集まって、
武器の絵ひとつとっても
「すげーっ!!」「おー、“こんぼう”だって!!」
とか言ってました(笑)。

岩田

こんぼうの絵で興奮ですか(笑)。

金田

「こんぼうだー!」「たけやりだー!」
ってとにかく興奮して・・・。
ちょうど『ドラクエ』で、
社会現象が起きていた時代でしたので。

岩田

とくに『III』(※11)では
発売日に長い行列ができて、
あれから風物詩になったんですよね。

※11
『III』=『ドラゴンクエストIII そして伝説へ・・・』。1988年2月に、ファミコン用ソフトとして発売されたロールプレイングゲーム。ドラゴンクエストシリーズ第3作目。

金田

はい。まさに、あの現象を
遊ぶ目線で経験していたので、影響は大きかったです。
その後は、ゲームを細く長くつづけながら、
映画や映像を勉強する大学に行きました。

岩田

“映像を志した人がゲーム業界に行く”というのは、
ある時期多かったパターンでしたよね。
映像表現の選択肢のひとつだったんですよね。

金田

はい。ただ当時、ゲームをつくる仕事は
やっぱり雲の上の存在だったんです。
でも学校の先輩がゲーム業界へ就職したのを見て、
「本当に入れるものなのか!」
って実感が湧いたんです。

岩田

ああ、身近な人がゲーム業界に就職したから、
いままで離れていた距離が近づいたんですね。

金田

はい。それで僕もゲーム関係の会社を受けまくって、
最初の会社で格闘ゲームを企画することになったんです。

岩田

おふたりとも、最初は格闘ゲームにかかわっていたんですね。

金田

でも、そのときは結局、
企画だけでおわってしまいました。
その後、いくつかの会社を巡ったあと、
「やっぱりRPGをつくりたい!」
という気持ちが強くなって、アトラスに入社しました。

岩田

金田さんは、アトラスさんで、すぐにRPGをつくれたんですか?

金田

はい、僕は幸いなことに東京勤務でしたから(笑)。

岩田

おふたりともRPGの面白さに目覚めてから、
「RPGをつくりたい」という気持ちが
ずっと心を占めていたんですね。
おふたりをこれほど惹きつけてやまない、
“RPGの魅力”とは何だと思いますか?

小森

うーん、難しいんですよね・・・。
僕のRPG原体験は『ドラゴンクエスト』や
『ウィザードリィ』(※12)や『ウルティマ』(※13)で、
そのあとテーブルトークRPGに移行したんですけど、
テーブルトークRPGって、ゲームソフトと違って
存在するのはルールブックだけなんです。
どんな冒険をするか、どう遊ぶかは、
自由に考えることができるんです。

※12
『ウィザードリィ』=1981年にアメリカでパソコン用ソフトとして発売されたロールプレイングゲームシリーズ。日本では1985年にパソコン版、1987年にファミコン版が発売され、その後もさまざまなハードに移植されている。
※13
『ウルティマ』=1979年にアメリカでパソコン用ソフトとして発売されたロールプレイングゲームシリーズ。日本では1985年にパソコン版、1987年にファミコン版が発売され、その後もシリーズ作品がさまざまなハードに移植されている。

岩田

ゲームマスターがゲームを制御するから、
いいゲームマスターほど、
場を面白くしてくれるんですよね。

小森

そうですね、それが本当に楽しかったです。
そういった経験から考えて、
「仮想世界で、自分ではない人を演じ楽しむ」
というのが本質的な魅力かなと思います。

岩田

金田さんはいかがですか?

金田

RPGは“物語の主人公になれる”ことがすごく魅力的でした。
子供のころは、本当にそういう気持ちでやっていたんです。
みんなで集まってRPGをプレイして、
戦闘で仲間が眠らされようものなら、
全員で「起きろーっ!!」って声を張り上げて(笑)。

岩田

コントローラーを握っているのは1人なのに、
みんなが戦っているかのように反応するんですね。

金田

そうです。
パーティがテレビのこちら側にもいるんです(笑)。
いまでこそ、ゲームは確率で動いていることを知っていますけど、
当時は、眠らされてフラッフラになっているキャラクターを
まるで自分のことのように感じていたんです。
それほど、“想像力”で楽しませてくれたのが、
RPGでした。

岩田

わたしには『世界樹の迷宮』というソフトで
おふたりが原体験で夢中になった“古き良きRPG”を、
「いまのゲーム機でどうやって届けようか?」
という命題に挑戦している感じがするんですが。

金田

ええ、そうかもしれません。
昔と比べて、いまのゲーム機はグラフィック能力が
ずいぶん上がりましたけど、想像力で楽しむ部分は
決してなくなってはいないと思うんです。
やっぱり、自分が物語に入って遊ぶ
“空気”を味わうのは想像力ですし、
昔のように“イマジネーションで楽しむ感覚”は、
常に意識しないといけないと思っています。

岩田

世の中にRPGという一大ジャンルが形成されて、
ゲーム機がどんどん発展していくなかで、
RPGはビジュアルの進歩やシステムの深みを
極めていく方向に進んでいきましたよね。
でも、その流れの中で、
「想像力をふくらませるのが面白い」
というRPGへの思いが、
おふたりに共通するポイントかもしれませんね。

小森

ああ、そうですね。
『世界樹の迷宮』シリーズの
押さえるべきキモとして認識しています。

金田

それから、いまの世代の方にも、
「僕らが子供のころに味わった“空気”を感じてほしい」
という気持ちもあります。

岩田

1人がコントローラーを握りながら、
みんながパーティの気持ちになって絶叫する、
あの独特なムードですね(笑)。

金田

もう・・・ホントにすごかったんですよ!
後ろから、次に使う魔法を言ってくるんです。
「こいつにはこれが効くに違いないっ!」って。
まあ、根拠はぜんぜんなくて、単に魔物の絵とか音楽で、
弱点を想像していただけなんですけど(笑)。

一同

(笑)