コーエーテクモゲームス^（※1）で、
『無双』シリーズ^（※2）を担当されている
鯉沼さんからお話をお訊きします。
今日はご足労いただき、ありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

まず、ニンテンドー3DSの新作ソフト
『戦国無双 Chronicle』の話に入る前に、
鯉沼さんとビデオゲームとの
出会いの話からお訊きしようと思います。
そもそも鯉沼さんがビデオゲームに出会ったのは、
どのくらい前なんですか？

ちょっと記憶があいまいなんですが、
ゲームに対して確実に興味を持つようになったのは
小学２年生のときです。

そのとき、どんなゲームに興味を持ったんですか？

その当時、とくに好きになったのは
『ヘッド・オン』^（※3）というアーケードゲームです。

ああ、『ヘッド・オン』ですか。
同心円状の何重かのコースがあって、
そこにクルマを走らせて、
ドットをどんどん消していくゲームですよね。

そうです。

小学２年生という早い時期に
アーケードゲームに興味を持ったのはどうしてなんですか？

わたしには３歳上の兄がいるんですけど、
兄に連れられて、兄の友だちの家で経営している
ゲームセンターみたいなところに行っていたんです。

では、わりと小さい頃から
ゲームセンターに縁があったんですね。

そうですね。
なので、ファミリーコンピュータが出る以前から、
『ドンキーコング』^（※4）や『マリオブラザーズ』^（※5）
といったゲームを、ゲームセンターで遊んでいました。

その頃から「ゲームを遊ぶ」ことに興味があった一方で、
「ゲームをつくる」ことを意識しだしたのは
いつ頃なんですか？

つくることを意識しはじめたのは、中学生のときです。
その頃『ベーマガ』という雑誌があったのはご存じですか？

はい、『マイコンＢＡＳＩＣマガジン』^（※6）のことですね。

そうです。
その雑誌にはプログラム投稿ページがありまして・・・。

当時はインターネットがありませんから、
毎月発売される雑誌が主な情報源になっていて、
そこに載っているプログラムを見ながら打ち込んだり、
自分でつくったプログラムを投稿したりしていたんですよね。

そうなんです。
ただ、あの当時はパソコンがとても高価でしたので、
中学生だったわたしは買ってもらうことができなかったんです。
そこで、空想で手描きのプログラムを書いたりして、
ひとりで遊んでいました。動くかどうかもわからないのに（笑）。

その頃、ビデオゲームに興味を持った人は、
プログラムからアプローチしていた人が多いような気がするんですね。
まあ、わたしもそうなんですけど。

そうですよね。
だから、どうしてもパソコンがほしくて、
それまでに貯めたお年玉をくずして買わせてほしいと
親に懇願したんですけれども、けっきょく実らなかったんです。

じゃあ、“空想プログラマー”時代がけっこう長かったんですね（笑）。

そうですね（笑）。
友だちの家に行くと、ファミリーベーシック^（※7）とか、
ぴゅう太^（※8）とか、ホビーパソコンと呼ばれるようなものがあって、
それを触らせてもらったりしていました。
そういうことが、高校まで続いたでしょうか。

すると、本格的にコンピューターを触れるようになったのは
大学に入ってからなんですね？

そうです。
ただ、あの頃は、情報系の大学や学部がまだ少なくて、
そのなかでも、パソコンの設備が充実したところへと思いまして、
東京電機大学の情報学科に入学しました。
そこから、本格的にパソコンを触りはじめたという感じです。

授業の課題以外にも、
学校のコンピューターにはかなり触りましたか？

えー、実を言いますと、
やっぱりゲームが大好きでしたので、
高校時代から大学を卒業するまで、
ゲームセンターでずっとアルバイトをしていたんです。
なので、ゲーセンで遊ぶことが多くて（笑）。

（笑）。
仕事を選ぶときは、
どんなことを考えて会社を決められたんですか？

ゲーム会社に就職しよう、というのは
大学に入る前から決めていたことだったんです。

ああ、そうなんですね。
それを実現するために情報学科を選んだということですか。

はい。なので、就職活動では
ゲーム会社を３社くらいしか受けませんでした。
それで昔のコーエー^（※9）、いまのコーエーテクモゲームスに
１９９４年に入ったという流れです。

その当時のコーエーさんというと、
まだ『無双』シリーズが出る前ですよね。

はい。

代表的なゲームは『信長の野望』^（※10）で・・・。

それに『三國志』^（※11）とか、
競馬ゲームの『ウイニングポスト』^（※12）などがあった時代です。
で、「どうしてコーエーに入ったの？」と
よく聞かれるんですけど、
実は高校時代に入っていた天文部の部室に、
パソコンと『三國志』のソフトが置いてあったんです。

どうして天文部の部室に、
『三國志』のソフトが置いてあったんですか？

もともと天体のシミュレーションをするために
パソコンが部室にあったんですけど、
そこに先輩が『三國志』を持ち込みまして。

それで遊んでいたんですね（笑）。

はい（笑）。
それでコーエーという会社があることを知ったんです。
あと、わたしが高校生の頃は
パソコンを遊ばせてくれる駄菓子屋さんがありまして。

え？ 駄菓子屋さんでパソコンをですか？

はい（笑）。
確か３０分、５０円か１００円で。

ああ、パソコンの時間貸しをさせてくれたんですね。

そうなんです（笑）。

駄菓子屋さんがファミコンの時間貸しをしていたのは、
わたしも見たことがありますけど・・・。

パソコンの時間貸しもあったんです。

へえ～。

そこで初めて、『信長の野望』を触ったんです。
なので、わたしにとってコーエーは・・・。

高校生の頃からなじみ深い会社だったんですね。

はい。そういうことがあって、いまの会社に決めました。

なるほど。
それにしても人生って不思議なものですね。
やっぱり、いまにつながる、不思議なご縁がありますからね。

そう思いますね。