石垣教授インタビュー

各方面で注目されはじめている眼力トレーニング!

石垣教授

N.O.M:トレーニングの効果は具体的にどのようなものが?

石垣:私たちは視覚から多くの情報を得ています。一説によれば情報の80%は視覚から得ると言われます。眼の力をトレーニングで鍛えることによって、この情報処理の正確性とスピードの向上が期待できます。具体的には物事を判断する際の正確性とスピードに効果があると思います。
その結果どうなるか、身近な例を挙げれば新聞や本などをスムーズに読むことができ、理解力も上がると予想しています。それと色々な状況判断が求められるクルマの運転などにもプラスに働くかと思われます。信号や標識をしっかり認識する、他車や歩行者への配慮が余裕を持って行えるようになることで安全な運転にも役立つのではないでしょうか。
また、眼力のトレーニングは元々スポーツの上達を目的とした研究を根幹としていますので、スポーツをされる場合も効果が期待できますよ。

N.O.M:実際にスポーツの分野で効果は上がっているのでしょうか?

石垣:ここ近年、メジャーリーグなど、各界のプロスポーツ選手が、ビジュアルトレーニングを始めて成果を出しているようです。私の考えなのですが、プロスポーツでトップレベルを維持するために最終的には何が効いてくるかというと眼力だと思っているんです。プロのアスリートといっても加齢と共に各種能力は衰えていきます。じゃあ、その段階でどこを鍛え直すのが効率的かというと、じつは眼なんですね。
また、意識的に眼の力を鍛えることでトップパフォーマンスを維持していらっしゃる方では、ラリードライバーの増岡浩さんが有名です。

N.O.M:パリ・ダカールラリーで2年連続総合優勝されているんですよね。

石垣教授

石垣:ええ、そうです。昨年開催されたスポーツビジョンセミナーで増岡さんに特別講師として講演をお願いしました。パリ・ダカールラリーといいますと似たような景色の砂漠をずっと走ると思われるでしょうが、細かい地面の段差などに対して細心の注意を払いながら運転しなくてはいけないようです。スピードも出ていますから、一瞬で地面の状況を判断し、うまくハンドルを切らないと横転してしまうんですね。ですので、メガネを10種類用意して天候や砂の色でかけるメガネを選んでいたり、パソコンを現地に持ち込んでそこにビジュアルトレーニング用のソフトを入れ、眼球運動と瞬間視を中心に鍛えていたりと、非常に眼を重要視していらっしゃいました。増岡さんとは、私が以前監修したパソコン用のビジュアルトレーニングソフトがきっかけで知り合ったのですが、社交辞令でも「あのトレーニングのおかげで世界一になれました」と言われたのは嬉しかったですね。

N.O.M:トレーニング効果の高い年代などはありますか?

石垣教授

石垣:とくに効果的なのは小学校高学年から中学生ぐらい、スポーツの世界でいうところのゴールデンエイジと呼ばれる年代です。この時期には身体能力の基礎が形成されるので同時に眼力のトレーニングを積んでおくのも勧めたいですね。
ちなみに、スポーツに親しんでいる子供たちの方が眼力は高い傾向があります。例えば動体視力などは野球を続けている子供たちのほうが専用機器で測定してみると平均値よりも高い。それは野球という現場で動体視力が鍛えられているからです。そこに眼力トレーニングが加われば、相乗効果が出ると思っています。眼力がアップすれば実際のプレイでもミスが少なくなって競技に対しても自信を持てる。自信を持つことでその競技がもっと好きになれるはず。
その他ではサッカーなども広い視野と瞬間的な状況判断の速さが求められますよね。そのため眼力のトレーニングを取り入れている少年サッカーのクラブもあるんですよ。

N.O.M:では大人の場合はいかがでしょうか。

石垣:眼力は通常の生活では鍛えにくい部分ですので、年配の方でも鍛える余地はおおいにあります。視力の低下などを眼力でカバーすることで実生活がスムーズに過ごせると思いますよ。もちろん、お子さん同様にスポーツに親しんでいる大人にも効果はあるはずです。
それと毎日眼力トレーニングを続けることで、自分のコンディションを知るのに役立つでしょう。トレーニングの結果が普段よりも上なのか下なのかで、「今日は調子がいいぞ」だとか「ちょっと疲れているのかなぁ」というように自分の状態を知ることができる。そういう目安にも活用していただければ。

●任天堂開発スタッフからのエピソード
今回ソフトのなかで眼年齢を測る機能を入れていることもあって、20代から70代まで118名の方にモニター試験を行ったのですが、50歳を過ぎていても成績が良い人がいたんです。職業を聞いてみると運転手をされているとか。やはり、生活環境や職業によって眼力を使っている度合いに違いがあるのかなと感じています。

N.O.M:ソフトのなかでは眼のストレッチなど眼を休めることにも注力されています。

石垣:眼はとても疲れやすい器官です。筋トレを無理して続ければ筋肉を傷めてしまうのと同様に、眼力トレーニングでも無理は禁物です。また15分間以上のトレーニングはお勧めできません。短い時間で構わないのでコツコツと毎日続けることが大切なんです。

N.O.M:眼力のトレーニングが疲労軽減につながるといいますか、眼が疲れにくくなる効果が期待できると伺っています。これはどうしてでしょうか?

石垣教授

石垣:眼力トレーニングは、いわば眼に負荷をかけている状態です。トレーニングによって、日常生活では経験しない負荷を加える。そして休息をとる。またトレーニングで負荷を加える……、というように負荷をかけることを繰り返していくと、日常生活でかかる負荷に対する耐性が上がってくるわけです。
ただし、先ほども言いましたとおり過度のトレーニングは逆効果なのでくれぐれも注意してください。けして眼力トレーニングをすると眼の疲れが無くなるのではなく、眼力を鍛えることによって、以前と同じことをしても眼が疲れにくくなると捉えていただければ。まさに長い眼で見ていただくと良いかと思います。


N.O.M:お話を聞いてじっくりと眼力トレーニングに取り組みたくなりました。ありがとうございました!


なお、この他にもビジュアルトレーニングの機器を色々と体験してきました。そのレポートは6月1日掲載予定のニンテンドーオンラインマガジン2007年6月号でお伝えします。


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