4. 愛犬にも

岩田

実は『脳トレ』のときも、『Wii Fit』のときも
共通して感じていたことなんですけど、
見えないものが、見えるようになって、計れるようになる。
しかも推移がわかるってことのおもしろさという点で、
今回のソフトは、ちょっと共通してるように感じます。
しかも、「生活リズム」というキーワードを見つけたことで、
見えなかったことが見えるようになったということも、
とても不思議な感じがします。
ちなみに、正式タイトルは
『歩いてわかる 生活リズムDS』になりましたけど、
それはどうしてなんですか?

水木

そもそも「生活リズム」というのは、
いつ食事をしたんだとか、どのくらい寝たのかとか、
そういうこともひっくるめての話になりますよね。

岩田

「生活リズム」という言葉は、
基本的に、起床時間や睡眠時間、
それに3度の食事に深く関わっているということですね。

水木

そうです。
歩くことだけが、生活リズムを決めているわけではないんです。
でも、1分ごとや週ごと月ごとに
様々な角度から歩数データを見ることによって、
「生活リズム」に対する気付きを与えることができるんじゃないかと。

岩田

つまり、人がそれぞれ生活リズムを持っていて、
歩いてわかる、歩けばこそ気がつく部分があるということですね。

森村

はい。そこで、気付きの部分をより明確にするために、
自分の平均の生活リズムと比べて、「脳年齢」のように
評価するようなことも試してみたんですけど、ダメでした。
やっぱり人の生活リズムはそれぞれですので、
押しつけがましくなってしまうんですね。

下村

そこで、1日の生活リズムを振り返るときに、
クリーチャーズさんからの提案で、
動物に喩えて診断することにしました
たとえば「朝型のコアラタイプ」と言われて、
そうか、そう言えばコアラのように動かなかったもんなあって、
ちょっと反省したりとか。

森村

それに、動物に喩えることで、
友だちとコミュニケーションがとりやすくなるんですね。
「昨日は8000歩、歩いたんだよね」とか言われるより、
「オレ、昨日は夜型のコウモリだったんだ」と言われると、
何だろうって思いますし。

下村

夜、どこをほっつき歩いていたんだって(笑)。

水木

あと「プチ目標」もそうですね。
毎日健康に関するお題が出されるようになっているんです。

下村

「プチ目標」については、クリーチャーズさんと、
今回、開発のサポートをいただいたエンジンズ(※12)さんから
提案をもらって、内容もいろいろと考えてもらいましたね。

※12

エンジンズ=ゲーム開発10年〜20年のメンバーを中心にして、立体造詣・出版・コミュニケーションデザイン・映画製作などキャリアのあるメンバーが集まって2005年に設立された開発会社。

森村

たとえば「嫌いなものを食べるようにしましょう」とか、
「階段を使ってできるだけ歩きましょう」とか、
ごく当たり前のことなんですけど、
そんなお題が出されることで、
ちょっとでも生活リズムを意識するようになって、
少しだけでも生活がよくなればということなんです。

水木

プチ目標が実行できなくても、
マイナスに評価されることは一切ありません。
実行できたかどうかを、「はい」「いいえ」で
自己評価するだけなんですね。

岩田

つまり、日課になるような。

下村

そうです。まさに日課です。
生活リズム計は、とてもコンパクトですので、
ポケットにずっと入れっぱなしでも、じゃまになりませんし。
だから、朝起きて、寝るまでの間、ぜひ身につけるようにして、
歯みがきのような習慣にしていただけるとうれしいですね。

岩田

その生活リズム計は
2個入りで発売することになったわけですが・・・。

秋田

1個は自分用で、もう1個はワンちゃんに(笑)。

下村

もちろん家族用でもOKです(笑)。

岩田

秋田さんはすごい犬好きなんですね。

秋田

はい。うちではミニチュアダックスを飼ってるんですけど、
服を着せると非常に嫌がるくらい装飾物がダメなんです。
そこで、生活リズム計がカートリッジ式の時代に、
試しに持って帰ったら、やっぱり固まってしまって・・・。

岩田

1歩も動けなくなっちゃったんですね。
そもそも犬の歩数を計るという発想は
どうやって生まれたんですか?

下村

もともと、このプロジェクトがスタートしたとき、
なぜ人は歩くんだろうと思って、
近所を散歩しながら、歩いている人をじっくり観察してみたんです。
すると、多くの人が犬を連れて散歩していたんです。
だから、人だけでなく犬にも生活リズム計を
つけてもらえるようになれば、これはすごいことになるかなと。

岩田

それはすごい。商売人の発想という意味で(笑)。

一同

(笑)

岩田

秋田さんの愛犬はその後どうだったのですか?

秋田

2回目につくった生活リズム計は
自分としてはすごくコンパクトにしたつもりだったんですけど、
それでもやっぱり嫌がって動かなくなりました。
ところが、最終形の生活リズム計をつけたら
嫌がらないどころか、まったく気にしなくなって。
普通に散歩に行けますし、これをつけたままボールで遊んだりしてるんです。
だから、1度どころか、2度の猛烈なちゃぶ台返しにあって、
そのときは、「冗談はやめてくださいっ!」って感じだったんですけど、
いまとなっては・・・ものすごく感謝しています。

一同

(笑)

岩田

犬にはどうやってつけるのですか?

秋田

我が家の愛犬の写真を持ってきたんですけど・・・。

岩田

おっ、ついてる、ついてる。

秋田

最初は巾着に入れたりとか、
ストラップをつけて、ぶら下げることも考えたんですけど、
ブラブラ揺れて、正確な歩数が計れないんです。
そこで、このようなフックを急きょつくることにしました。

下村

裏ぶたを取り替えることで、
フックつきの生活リズム計になるんですね。

秋田

製品版には生活リズム計が2個ついておりますので、
専用フックももれなく2個、オマケでついてきます。

岩田

ここにも商売人が(笑)。

一同

(笑)

秋田

このフックを使って
犬の首輪やハーネスにつけていただければと。

下村

もちろん犬を飼っていないお客さんもいらっしゃるわけで。
とくに女性の場合、ポケットのない服を着ることもありますよね。
そんなときは、バッグに入れていただいても構いませんが、
このフックでどこかにつけていただければいいなって。

秋田

わたしとしては、ぜひ犬につけていただきたいですけど(笑)。

岩田

犬に生活リズム計をつけるって簡単に言いますけど、
人間と動きが違うはずですから、
歩数を検証するのは簡単じゃなかったんでしょう。

下村

小型犬だと、ちょこまかと小走りで動き回りますし。

岩田

しかも足が4本ですしね。

下村

そこで前足でカウントしたほうがいいのか、
それとも後ろ足なのか、4本足を全部なのかというところで
議論があったんですけど、
最終的には前足だけでカウントすることにしました。
で、最後に近隣にある犬のテーマパークにご協力いただいて、
どの種類の犬でもちゃんと歩数カウントできることを検証したんです。
そのテーマパークには大型犬から小型犬まで、
たくさんの犬種がそろっていましたので、
25種類の犬に生活リズム計をつけて、
散歩をさせながら、ビデオ撮影しました。
そのビデオを会社に持ち帰って、スロー再生しながら、
ひとコマずつ歩数が合ってるかどうかの確認をしたんです。

岩田

あきれますね。犬といえども一切手抜きはしなかったと。

下村

はい。
もちろん人に関する検証にも多くの人間が
時間をかけて取り組みました。
開発スタッフがカバンに入れてひたすら歩いたり、
坂道でダッシュをくり返したり・・・。
たくさんの人たちが開発室のある広いフロアで
意味なく歩き回っている光景は異様でしたね(笑)。
正確に歩数がカウントされているかを検証するために、
「イチ、ニ、サン、シ」って歩数を数えながら歩くものだから、
さらにいっそう・・・(笑)。

岩田

中学の運動部みたいですね(笑)。

下村

自動車で会社の駐車場の中をぐるぐる回りつづけたり、
バスに何度も乗ったりしました。
そういった様々な検証を重ねて、
誤測定を防止するための基準値を定めました。
連続して約10秒以上歩いた場合に、歩数として
最初の1歩目からカウントするように設定したのですが、
これは自動車や電車に乗っていても
誤測定を起こしにくくするためです。
そのかわり、台所で晩ごはんを作るような
歩数の少ない動きに関してはカウントしない場合もありますが、
悩んだ末、トータル的に生活の中で使う上で、
もっとも精度が高いと考えた今の仕様になっています。

岩田

なるほど。

秋田

我が家の愛犬でもチェックしたので、
是非ワンちゃんと一緒に生活リズム計を使っていただきたいですね。
他にも面白い機能があるんです。
「リズムにあわせてライトアップ」という機能がソフトに入っていて、
家族の誰が散歩に連れて行ったかが、あとからわかるんです。

下村

つまり、同じ時間に一緒に歩くと、
Miiが喜ぶというモードがあるんですね。
犬の散歩から帰ってきて、犬と自分のデータを吸い上げると、
犬と自分が「シンクロ〜!」って言うんです。

秋田

だから、家族の誰が
犬の散歩に連れて行ったかもわかりますし、
シンクロしたときに、犬との不思議な一体感があって、
すごくうれしいんですよね。

下村

一体感を感じるのは、もちろん犬だけではありません。
わたしは、夜遅い時間に帰宅することが多いんですけど、
家に帰ってからデータ通信をすると、
昼の13時くらいにヨメさんとシンクロすることがあるんですね。
「そうか、僕がランチから帰ってくるときに、
うちのヨメは買い物に行ってるんやなあ。
会社に行っている間もちゃんと家で生きてるんやなぁ。」って。
そこで、ちょっと愛おしくなったりして・・・。

一同

(笑)