プロローグ

Prologue 俺の名前はカイル・ハイド。レッドクラウン商会のセールスマンだ。俺の住処はダウンタウンの裏通りにある古いアパート。昔ホテルだった建物を改装した「ケイプウェスト」という名前のそのアパートの屋上には、小さな灯台の形をしたモニュメントが建てられている。 4年前、刑事を辞めてマンハッタンからこのロスの街に移り住んだ日、俺はなぜかその灯台のモニュメントが気に入り、部屋もろくに見ずに、このアパートに住むことを決めた。 俺の部屋は202号室。部屋は古いが、男ひとりで暮らすには十分な広さで、窓から見える街の景色も悪くはない。特に出て行く理由もなく、俺はこのアパートでまた新しい年を迎えようとしている。そして気が付けばいつのまにか、25年前にこの街で死んだ親父と同じ歳になっていた。 1/5