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2007年3月期 決算説明会
質疑応答
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Q 1  以前、社長が「ハードは勢いのビジネスなので、垂直立ち上げをしないと駄目だ」といったようなコメントをされたことがある。ここまでうまくいっていると思うが、Wii発売後4〜5ヶ月以上経ち、次の軸になるタイトルの発売が見えない。コアユーザーが満足できるようなやり込めるタイトルというのは、いつ頃どんなものが出てくるのか教えてほしい。
A 1

取締役社長 岩田 聡:

 まず、ゲーム機のプラットフォームは勢いのビジネスであるということはまさしくご指摘のとおりでありまして、勢いが一旦つきますとお客様に安心して買っていただきやすくなります。そしてソフトメーカーさんは安心してソフトを作ってくださるようになります。そしてそれがまたポジティブなサイクルとして相乗効果をもたらしてどんどん勢いがつくわけです。逆にこの歯車が逆に回りますと非常に苦しくなります。ですからプラットフォームが特にWiiやDSのように全く新しいチャレンジをする場合には、1年目に、そして1年目から2年目にかけて、まだプラットフォームがよちよち歩きのときに、いかに間を空けずに次々と新しい提案をしていくかが重要で、それは、私は自社のソフト開発の仕事だと思っています。で、それらの方向で一定の勢いがついたのを見極められてソフトメーカーさんのタイトルが充実していくことが基本構造と思っています。

 残念ながらWiiの場合、率直に申しあげて、事前の下馬評では「期待されていたとは言い難い」面があったと思います。ですからより私どもの中でソフトを作らないといけませんでした。

 今日現在、Wiiのソフトは、社内とそれから任天堂ブランドで発売する社外の開発会社さんと協力して作っているタイトルと合わせまして、45タイトル、DSでは79タイトルを開発をしているんですが、もちろんこれが必ず全てものになって、全部お客様にお届けできると今言えるわけではありませんが、これだけのソフトが実際にチームを組んで予算がついて開発が進んでいます。 これらが順次に出てくるんですが、今仰ったやりこみ要素の強いタイトルはいつ頃充実するのか、ということになりますと、今年の夏の終わりから暮れにかけて、になってくると思います。

 そこには、スーパーマリオの新作(『スーパーマリオギャラクシー』)ですとか、あるいはスマッシュブラザーズ(『大乱闘スマッシュブラザーズX』)ですとか、主に海外のマーケットになりますがメトロイドプライム(『メトロイドプライム3 コラプション』)が、今年の夏から年末商戦を支えるタイトルとして用意していますので、その時期にはそういう期待にお答えできるのではないかと思います。

 われわれも理想でいえば、この春に1本ぐらいそういうタイトルがあると、より良い流れを作れたと思いますが、一方で、お客様に新しい提案をする以上は、ご満足のいただけるような水準に磨きたい、という気持ちも強く持っておりまして、これらの看板タイトルを、中途半端な仕上げの状況で世の中に出すことはどうしても避けたい、ということで、ちょっとお時間をいただいているというのが現実でございます。

Q 2  ニンテンドーDS向けのタイトルを作っている会社が非常に増えてきているが、ソフトのタイトル数が増えてくることに対してのマーケットへの影響を、単純に本数、タイトルが増えたら販売本数が増えるというそういう考えなのか、それともマーケットを崩す要因になるのか、考え方を教えてほしい。
A 2

岩田:

 一つはですね、プラットフォームにとってソフトタイトルが増えることは本来喜ぶべきことで、また、いいことであると思います。一方で、タイトル数が一定の期間に一定以上の数出ますと、お客様が「ゲームソフトで何がいいんだろう」ということを、調べたり、検討したりするのに使えるエネルギーは有限ですし、お客様のアテンションそのものが有限ですから、だんだんわからなくなってきます。

 あるいは、これは現実に私が営業の人間から聞いているんですが、(タイトルが増えることで)今までの棚のスペースだと、だんだん置けなくなってきているようです。今までは平置きといいまして、パッケージの表が見えるように棚に置いていただいていたのに、もうみんな立てられて(背表紙しか見えなくなって)しまうので、だんだん売り場でのアピールができなくなってきているのです。ですから、折角面白い要素のあるタイトルが出ても、マーケティングがうまくいかないと、お客様に知られないままで終わってしまうわけです。

 それから当然たくさんのタイトルが出ていれば、お客様が毎回お買い求めになるたびに必ずアタリを引くということがその分難しくなってまいります。万が一お客様が失望されるようなことがあった場合に、折角ゲーム人口が増えたのに、その方がそれに失望して、「もう二度とゲームなんかやらない」って仰るかもしれません。

 ですから私たちとしては、プラットフォームの総タイトル数が増えたら、増えることそのものは大変結構なことなんですが、同時にただ喜んでいればいいというものではありません。すなわちお客様の有限のアテンションの中から、どうやってお客様にとって本当に必要なものをお知らせしお届けするのか、そしてお客様の期待を裏切らないようにするためにどうするのか、ということです。これは、ますます今後課題として大きくなってくると思いますので、今年の一つの重点課題として取り組まなければならないなというふうに思っています。

Q 3  今日、バンダイナムコから、任天堂によるモノリスソフトの買収のリリースが出たが、M&Aはしないという方針を変更したのか、あるいは今回は例外なのか、どういう狙いがあるのかという点について伺いたい。
A 3

岩田:

 当社がM&Aをしない、といいますのは、少し前提条件を含めてご理解いただく必要がございます。どんな場合でもM&Aは決してしません、と申しあげているのではなくて、M&Aをして、会社を買って、その会社の価値が任天堂の中にちゃんと取り込めるのであれば良いわけです。たいていの場合、ソフト開発会社の価値というのは、会社という入れ物ではなくて、会社に属していらっしゃる人についているんです。ですから、入れ物を買っても、中身が手に入るわけではないわけです。ですから、私たちはソフト会社を、他社さんと競争して買って、中のソフト開発者を増やすことを仮にやったとしても、それは短期的には効果が上がるかもしれないけれど、長期的にはプラスにならないという考えで、そういうM&Aはしませんよと申しあげています。

 今回のモノリスソフトさんの場合には、モノリスソフトの社長の杉浦さんと任天堂はこの間、長くお付き合いをさせていただいていて、杉浦さんの考え方と任天堂の考え方は十分近いということ、そして杉浦さんのやられたいソフト作りの方向と、任天堂の求めているものが噛み合っているので、任天堂として応援したい、ということがあったので、こういうことをしたということです。

 今後も、もしこういう条件が整えば(M&Aを)やれると思います。ただそれはあくまで、その結果として任天堂が長期にわたってその方たちと一緒に仕事をしていけるかどうかということの見極めが非常に重要になってくると思っています。

Q 4  Wiiチャンネルの今後の可能性と、収益に与える影響について考え方を教えてほしい。現時点ではバーチャルコンソール以外は無料で使えるが、今後マーケティングに使えそうなツールなど、今後どのように収益に活かしていくのか。ほかに有料で、収益に貢献できるようなチャンネルというのが増えていくのか。そのあたりの考え方について教えてほしい。
A 4

岩田:

 Wiiチャンネルという仕組みは、「どうすれば家族全員にとってビデオゲーム機は関係のあるものになるのか」「どうすれば取り巻く人が、笑顔になる機械になれるんだろうか」ということを考えてできた仕組みなんですが、もともとここで収益を上げようと思って作り始めたものでは必ずしもないです。ないですが、結果として申しあげますと、Wiiチャンネルという仕組みには、(収益を生む)いろいろな可能性があります。現状でバーチャルコンソールという形で示しておりますように、すでに電子的に配信し、課金をして商品を電子的に販売するという仕組みは一応成立し、世界中で動いています。ですから任天堂がこれはお客様からお金がいただけるだけの価値のあるチャンネルができた、というふうに思ったら、それはいつでもそのような形でビジネスにすることが可能です。もちろん今ご提供しているチャンネルがある日突然、有料になるということではなくて、今そういうふうに申しあげているのは、インターネットチャンネルを期限をつけて「6月末まで無料にしますよ」「6月末を過ぎたら本来は500Wiiポイントですよ」というのが一つだけありますけれども。あとはすべて無料でやってきました。

 いままで無料でしてきたものをある日突然変えるという考えは持っておりませんが、では将来Wiiのチャンネルとしてどんなものを作るのかということに対して、これはいろんな可能性があると思いますし、またお客様から直接お金をいただくビジネスモデル以外に、広告であるとか、あるいは他社さんとのアライアンスで、新しい構造の収入源をいただけるようなビジネスモデルが作れるかもしれません。

 長年任天堂は、「自社で商品をつくって製造して世界中に売る」、「自社が努力をして普及させたプラットフォームをソフトメーカーさんにお使いいただいて、そこからライセンスフィーをいただく」、この2つのビジネスの方法でやってきたわけですが、それ以外の構造が将来できるための土台はできたと思います。ただ今日の時点で、「具体的にこういう計画があるので、いついつからこういうことをします」と申しあげられる材料はありませんが、いろいろな会社さんから、「こんなことやれませんかね」ってお申し出をいただけるようになってきましたので、そう遠くないうちにそういう実例もでてくるのではないでしょうか。それがどれほどの大きさのビジネスになるのかということについては、今日の時点ではちょっと申しあげるのは早すぎると思います。

Q 5  将来的にはソフトの年間販売本数が、今の倍以上になるということで、それに向けて現在の開発陣の体制はどのようになっているのか。毎年人員数や研究開発費が増えているが、そのまま伸ばしていくイメージなのか、あるいは研究開発効率を重視していくようになっていくのか。その中で社長と宮本専務の役割分担はどのようになっているのかということを聞かせてほしい。
A 5

岩田:

 中期という観点で申しあげますと、ここ数年そうであったように、開発の人員をある程度増強していくという考えです。それはそれをやっていかないと、既存のプラットフォームを維持しながら、将来への研究開発の投資ができないからです。ですからその意味では、開発体制は当然増強いたします。

 ですが、その2倍ソフトが売れるマーケットを作りたいと申しあげたのは、イコール任天堂の中の人員が2倍になるという意味ではもちろんございません。それは任天堂とパートナーシップを結んで一緒に商品を開発している会社さんの数が増えるかもしれませんし、また、プラットフォームが栄えれば、ソフトメーカーさんが、サードパーティとしてソフトを作られてそれを売られるわけです。それらも、先ほど申しあげた年間3億本以上のソフトが売れるマーケットを作りたいということに当然含まれるわけですから。

 それから、私は、当社の宮本には、なるべく自社の宮本が自分のチームで手がける商品の開発に集中してもらえるようにしたいというふうに考えていまして、ソフト全部の、先ほど申しあげた45プラス79を全部見るといっても、宮本も人間ですから物理的に無理ですので、その中からやはり自社の自分のチームで作る商品をしっかり見てもらって、他社さんから「真似ができない」と言っていただけるような、高いクオリティに保つということに彼のエネルギーを集中してもらうのが、任天堂の経営にとっては一番大事なのではないかというふうに考えています。

 私も多少は見ていますが、他にも優秀なスタッフが育っておりますので、彼らがどんどんかつて宮本のやっていた仕事を取っていくというふうに今なりつつあります。それができてきたので、逆にミリオンセラーソフトが増えてきた、ということでもあるのではないかなと思います。

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