株主・投資家向け情報

2009年5月8日(金)決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

さて、引き続き、2010年3月期の業績予想についてお話ししたいと思います。


主要ハード・ソフトの予測についてですが、今期のニンテンドーDSハードは、3,000万台、ソフトは1億8,000万本を予想しております。
ちなみに、DSiの発売によって平均単価が上昇するため、ハードの予想数は前年を若干下回っているもののハードの売上では対前期比でプラスになると予想しており、DSハードのビジネス規模が縮小すると考えているわけではありません。
また、Wiiについては、ハードが2,600万台、ソフトは2億2,000万本を予測しております。ここでご注意いただきたいことがあるのですが、右側の前期ソフトの実績には、海外のWii本体にバンドルされている本数を含んでいるのですが、左側の予想本数にはバンドル分を含んでいませんので(※注)、その影響を考慮すると、Wiiソフトの販売数は実質的には前年に比べ約4,000万本の増を見込んでいることになります。

(※注) 海外市場では、一部の地域を除きWii本体にはソフトをバンドル(同梱)して販売しており今後も継続する予定ですが、従来よりソフトの期初予想数量には本体同梱ソフトを含めておりません。

これに基づきまして、当期の業績予想は、売上高1兆8,000億円で営業利益は4,900億円を見込んでおります。経常利益は、期末における想定為替レートを1ドル100円、1ユーロ130円を前提にしており、前期のような為替差損は発生しませんので、経常利益の予想としては5,000億円を見込んでいます。これにより、当期純利益は、3,000億円を見込んでいます。

この数字をご覧になると、経常利益や当期純利益は増える見込みではあるものの、売上高や営業利益が前年を若干下回る予想になっていることから、


過去3年間続いてきた任天堂の成長は、ついに止まったのか?というように感じられるのではないかと思います。
今期増収・営業増益の計画が立てられていないのは、これはビジネスの規模そのものが成長しないからではなく、為替による影響を見込んでいるためです。前期の期中平均レートは、$1=\100.54 €1=\143.48 と、対ドルでは今期の予想レート $1=\100 と大きな乖離がないものの、対ユーロでは予想レート €1=\130 と大きな乖離があり、このためユーロ建ての売上を円換算すると前期に比べて減少し、営業利益においても前期に対して悪化する方向の力が働きます。例えば、前期の場合ユーロ建ての売上が約50億ユーロありましたので、この為替の差で、売上を約650億円減らす力が働くわけです。この影響を考慮した上でなお、ほぼ前年並みの円換算売上を達成し、経常増益を目指すというのが、今期の任天堂の展望です。


一方で、日本では特に今年に入ってからWiiの販売に勢いがないのは事実ですし、Wiiの販売が失速しているとの報道もなされています。また、昨年11月に発売されたDSiはまずまず好調に推移しているとはいえ、DSは一時のような猛烈なペースでは売れているわけではありません。
私がいつも引用させていただいているCESAの昨年の市場統計データはまだ発表されていませんが、調査機関の集計によれば、2008年の日本のゲーム市場は約15%ほど縮小したと言われており、また、年が明けてからもハード・ソフトの販売は前年水準を割り込む状況が続いています。
もちろん、任天堂としてもこのような状況を放置するつもりはありませんし、夏以降に有力ソフトが出るタイミングで如何に勢いを取り戻すかということに当然力を注いでいくわけですが、現時点での日本市場がこのような状況にある以上、業績予想の前提としているように、ハード、ソフト共に高い水準の販売を維持することが達成可能なのか、言い替えれば、


海外の市場で、DSやWiiは売れ続けるのか、ということがポイントになってきます。

そこで、海外の市場の足下の状況を少しお話ししたいと思います。


これは、アメリカのNPDグループが公表しているゲーム市場規模のデータから、各暦年の第1四半期、すなわち1月から3月のデータだけを取り出したものです。前年と今年では、経済環境が全く異なるので単純な比較ができませんが、1〜2月は前年比でプラス、3月は前年比マイナスになっており、過去2年と比較すると市場は伸び悩んでいると言わざるを得ません。


しかしながら、この中から、ニンテンドーDSやWiiなど、任天堂のプラットフォームに関わる部分を色分けすると、任天堂による市場拡大は今年に入ってからも続いていることがわかります。

ただし、私たちは、現状を楽観視していません。それは、Wiiハードを牽引するソフトが発売される時期が、昨年と今年では異なり、売れ方のパターンも昨年とは異なってくると予想されるからです。


これは、NPDグループが毎月発表している据置型ハード販売数の推移を昨年と今年で比較したものです。以前にもお話ししましたが、NPDの月別データは、4週間の月と5週間の月がありますので、1週毎の平均値にして表示しています。ご覧のようにWiiは、1月〜2月は前年を大きく上回ったものの、3月は前年を下回っています。昨年は3,4,5月と『大乱闘スマッシュブラザーズX』、『マリオカートWii』、『Wii Fit』と3ヶ月連続でハードを牽引する強力なタイトルが次々と発売され、ちょうどこの時期からハードの増産ができるようになったことと相まって、Wiiハードの販売数は例年の販売パターンと異なる非常に高い水準になっていました。これに対して今年は、ハードを強力に牽引するタイトルは7月発売予定の『Wii Sports Resort』を皮切りに、年末にかけて発売になる予定になっています。ですから、4、5月のハード販売数は前年の実績をある程度下回り、またWiiハードは昨年より年末商戦期に集中して売れることになると予想しています。一方で、過去のゲームハード販売の季節性パターンを分析すると、Wiiは年末商戦期での販売比率が低く、これは、昨年も一昨年も、Wiiハードは年末商戦期に品切れを起こして、かなりの機会損失が発生していたことによると考えられます。今期はそのようなことがないようにしっかりと準備して、年末商戦に備えることで、ビジネスを最大化したいと考えています。


これは、同じくNPDグループのデータを元にした、携帯型ハードの販売推移です。3月にDSの販売が前年を割り込んでいますが、これは、4月に新製品のニンテンドーDSiが発売される影響が出ていたものと考えられ、事実、4月はDSiとDS Liteを合わせると昨年の2倍以上のペースで売れていると報告を受けています。DSiとDS Liteがどのような比率で売れていくのかは、もう少し見極めが必要ですが、アメリカ、ヨーロッパとも、DS Liteの勢いが継続している段階でDSiを投入できたことで、DSによる市場拡大の勢いを持続することができた手応えを感じています。また後でもお話ししますが、DSというプラットフォームにはまだまだ拡大していく余地があると考えています。



このページの一番上へ