株主・投資家向け情報

2014年1月30日(木) 経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会
質疑応答
Q 6

 今後の戦略について、人、お金をどの程度投入するか、そのビジネスを成功させるための業務提携やM&Aもあり得るかを確認したい。一つはキャラクターIPの積極的な利用というところで、具体的にはサンリオさんのようなビジネスを目指しているのか。一歩踏み込んで、テーマパーク的な事業もあり得るのか。マリオのデジタルでの有効活用で、スマートフォン用の壁紙といったビジネスを許可する可能性もあるか。もう一つは、健康人口拡大ということで、大変素晴らしい方向性だと思うが、ここでも具体的には、例えば「禁煙がうまくいくゲームソフト」のような方向性を目指しているのか、フィットネスクラブみたいなところとうまく組んでのビジネスモデルの展開などを考えているのか。

A 6

岩田:

 まず、キャラクターIPの利用ですが、サンリオさんがされていることと共通点もあるでしょうし、全く違うことも出てくると思います。冒頭で申し上げたとおり、任天堂は「よそと違うことをやる」ということにすごくこだわる会社ですので、「他社さんに理想的なモデルがあるからそのとおりになろう」とは考えませんが、他社さんがされていることで「これはうちの強みが生きるな」と思ったらどんどん取り入れようと思います。一方で、すべてそのまましてしまいますと、任天堂らしくないと思いますので、ケースバイケースだと思います。ちなみに今、例に挙げられたことも含めて、いろいろなことを今後のお話次第で考えようと思いますが、今日はお話しする準備はしてきておりません。マリオをデジタル分野へライセンスをするということは、例えばスマートフォンに、壁紙やスタンプを出すのか、といった話があり得ると思うのですが、そういうことも否定はしません。なぜかといいますと、私たちのビジネスに対して直接競合し、私たちのハード・ソフト一体型のプラットフォームビジネスを破壊するとは考えていないからです。ですので、柔軟に、今までなかったことも考えていこうと思います。それはケースバイケースでお話次第、相手次第、そしてその条件次第ということになります。それから、そういうことを進めていく上で、M&A等の可能性も一切否定はしません。昨日ちょうど、自己株式の取得について発表しました。今回は「枠取りをし、期日をここの範囲でします」ということを申し上げただけなので、正式に「いつ、どのような形で株を取得します」ということは、また適時開示事項として後日お話しさせていただくことになると思うのですが、ある程度以上の規模で取得を考えているわけですから、そうすると(発行済み株式数に占める)自社株式の比率が随分と高くなります。その意味では、自己株式が非常に大きくなると、「消却しないのか」というご質問もいただくことになるかと思うのですが、現在私たちもビデオゲーム専用機プラットフォームのビジネスがいろいろな意味で転換点に来ていると思っていますので、ここしばらくの間は当社が保有する自己株式については、M&Aに活用する可能性を選択肢として持たせていただきたいと思っています。ただ、これはずっと長期にそうしたいのではなくて、転換期が終われば消却も考え得る選択肢になってくると思います。ただし、今日現在、このようなM&A案件が進行しているということについて、お話しできる材料があるわけではありません。



 それからQOL(Quality of Life)向上プラットフォームについてですが、任天堂がこういうことを考えた背景をご説明するスライドをつくってみました。当たり前のものが、アプリケーションの力で化けるという例です。1980年に『ゲーム&ウオッチ』という商品を出しており、もともとは電卓を触っている人を見て発案したと聞いていますが、実際、時計にアプリケーションを加えて『ゲーム&ウオッチ』ができ、それが携帯ゲーム機という今日の大きな流れの源流になりました。1998年、『ポケットピカチュウ』という商品がありましたが、これは、歩数計にアプリケーションが加わったら、携帯型超小型のゲーム機ができた、というものです。それから、これは記憶に新しいところですが、体重計にアプリケーションが加わったら『Wii Fit』ができました。健康というと、「何かを測定し、その結果をお見せする」というものが多いと思うのですが、「もしそこにアプリケーションが加わったら、楽しく継続できる力があり得るのではないか」ということで、そういうところに任天堂の強みが見いだせると考えています。先ほども「人々のQOLを楽しく向上させる」ということを娯楽の定義にしたいと申し上げましたが、「楽しく」の部分はアプリケーションの力であって、これは業界にいろいろなプレーヤーがいますけれども、任天堂は、ハードをつくれて、ソフトをつくれて、世界中のお客様にものを提案して届けて、楽しんでいただいて、継続していただいて、ということを経験している非常に数少ないプレーヤーだと私たちは思っていますので、いろいろ可能性があると思います。今日は具体的なテーマについてはお話ししないことにしているのですが、一つだけヒントを申し上げますと、「ノンウェアラブルというのはリビングルームで使うものとは限らない」ということです。なんだか謎めいていて申し訳ありませんが、今日のところはここまでにさせていただきたいと思います。また、改めてお話しいたします。

Q 7

 ゲーム人口の拡大について。ハードとソフトのビジネスを続けていく以上、ゲーム人口の拡大というのは御社の戦略の中核であり続けるのではないかと考えているが、今回発表した中長期の展望のうち、ゲーム人口の拡大にたいして寄与するもの、特に、プラットフォームの定義の変更や、スマートデバイスの活用、ハード、ソフトの売り方の変更は、どういった層に響くと考えているか、聞かせてほしい。

A 7

岩田:

 私たちが今回このようなことをお話しした背景として、ゲーム人口を拡大しようということは、「今ゲームにはそんなに強い興味や関心はないけれど、何か面白いものがあれば触ってみたい」と思っている方が非常にたくさんおられるので、そういう人たちに対して「どうやって情報を届けて、どうやってつながりをつくって、そしてどうやってその人たちが参加しやすい環境をつくるか」ということを考えたからです。ですから、今日は、ビデオゲーム専用機のハード、ソフトの売り方を変えると申し上げながらソフトの話しかしておりませんが、(今後は)ハードの売り方も変えていきたいと思っており、「どうやってお客様にハードを買っていただく障壁を下げるのか」ということが非常に重要になってくると思います。特に、例えばあるサイクルのプラットフォームでお客様になっていただいて、あるハードでいくつかソフトを遊んでいただけたとして、その一人ひとりのお客様をアカウント単位、お客様単位で、私たちとのつながりを認識できているとしたら、ソフトを(あるハードの)ライフタイムで1本だけ買ってくださったお客様と、ソフトをライフタイムで10本、20本遊んでくださったお客様は、次のハードを買っていただくときに、今後どれぐらい遊んでいただけるかの見通しも変わってくるわけです。すると、そういう条件において、柔軟な新しいハードのご提案方法というのもいろいろ出てくるのではないか、というようなことも含めて考えています。

 「ものすごくビデオゲームに対して情熱があって、自分で情報を調べてくださり、どんなに値段が高いものでも、真っ先に飛び込んできてくださるという、ビデオゲームの仕事をしている者にとってはこれ以上ありがたいお客様はいないといえるようなお客様に、より満足していただくにはどうするか」ということのほか、「その周りにたくさんいらっしゃる、『それほど興味はないけれども、面白いものがあれば参加してみたい』という方が、どう参加しやすくなるか」、あるいは、「お客様を一対一でとらえていくだけではなくて、おそらく私たちが提供するものの中にはファミリー向けエンターテインメントというものも多いので、ご家族という単位で楽しんでいただくときに、どんなご提案ができるか」ということも含めて、「お客様の、ゲームに参加する障壁になっているものをいかに取り除いていくか」、あるいは、「本当はその人にすごく合っているけれども、知らないまま過ごしている方をいかに減らしていくか」というようなことを考えて、今回の中長期の話をしました。ですので、そういうことで言えば、ゲーム人口拡大を実現するために、「自分たちが今の世の中の環境の中で、(ビジネスを拡大するために)制約になっていることをこうやって取り除いていきます」というお話を今日は差し上げたと理解していただければと思います。

Q 8

 資本という観点から聞きたい。ここ最近、他社資本を入れることによる企業価値増大のオプションについて考えられたことがあるのかという点と、他社資本が入ってくることにより、ビジネスモデルや考え方を変えられてしまうリスクについて、どう考えているか。

A 8

岩田:

 すべてのことが自社だけでできるわけではありませんから、「他社さんと思想を共通化し、向いている向きを揃える」という意味での提携関係というのは、いろいろな形で柔軟に考えたいと思います。一方で、「任天堂が今後も変えないこと」ということで最初にお話ししたように「今までなかった独自のものを生み出していく」、「他と違うことにこだわる」、あるいは、「現状に対して変化が必要ならどんどん変えていく」ということが、任天堂のエッセンスだと思いますので、それを認めていただけないような相手と組んでしまいますと、「これからの未来の選択肢を狭めてしまう」と思いますので、どんなことにおいてもケースバイケースだと思います。また、株価があまりにも下がってしまいますと、当然いろいろなリスクがありますので、そのことについては自分たちなりにいろいろな考えを持っているつもりです。「私たちの独自性をしっかりと維持しながら、でも必要なことは他社さんとどんどん組んでいきたい」というのが現状のスタンスであります。


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