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株主・投資家向け情報

2012年6月28日(木) 第72期 定時株主総会
質疑応答
Q 16 パッケージのソフトにはメーカーによって初回特典等でCDやブックレットといった物が付くこともあるが、現在他社さんがやっているダウンロード販売の場合、そういった物は付かなくなってしまうことが多く、ダウンロード版を買いたいけれども、特典が欲しくて結局パッケージ版を購入するという場合も多いと思うが、今度始まる小売店で購入するダウンロード版やeShopでは、このような問題を解決できるか。
A 16

岩田:

 まず、スタート時点での当社のダウンロード販売で、いわゆる物理的な特典物と一緒に販売するということは、現時点では用意はしていません。と言いますのは、ダウンロード販売の一つの大きなメリットに、お店の在庫のリスクがなくなる、あるいは、単純になくなるというよりは、POSA(ポイント・オブ・セールス・アクティベーション)という仕組みを使うと、事実上在庫を持たずに販売ができるという点があります。事実上というのはどういうことかと言いますと、POSAというのは、実際に商品がPOSレジを通り、お客様がお店でお金を払うときまで、その商品の価値は無価値であり、そして、レジでピッと通すと、その瞬間に仕入れが発生し、お客様からお金を受け取り、仕入れの債務が発生するというような構造をコンピューターシステムで実現しているものです。具体的には、コンビニさんに行きますと、ニンテンドープリペイドカードなどが棚にぶら下がって置いてありますけれども、ああいうもので使われているのがこの仕組みで、今回当社が行うダウンロード販売でそういった仕組みをうまく使うと、「売れるかどうか、どの程度売れるかよく分からないけれども、とりあえず棚に並べておこう」ということが今までの商品に比べてやりやすくなると考えていることが一つのポイントです。

 実は今の日本のゲーム流通における一つの大きな課題として、商品の在庫リスクが以前にも増して難しい問題になっています。在庫リスクは、基本的に小売店さん側がとられるというのがゲームビジネスの商習慣ですから、そうすると、もしうまく売れても在庫が残れば、その在庫の損で売れた分の利益というのは吹き飛んでしまう、あるいは、ゲームによっては非常に短寿命な売れ方をする商品がありますので、そういうものは見込みに対して売れ行きがよくないときは、これは値段を下げた方がいいということになります。以前はその「値段を下げる」という行為は、他の小売店さんへの伝播がそれほど起こらなかったのですが、最近はインターネットを通じて、あるお店が値段を下げると、たちどころにそれが他の小売店さんに伝播して、結果的に市場価格がものすごい勢いで一気に下がっていくという現象が起こりやすくなりました。その猛烈に値段が下がっていきつつある商品を見て、お客様は「これはきっと評判が悪いんだろう」とお考えになるわけです。実際は、評判が悪いのではなくて、出荷量に対して初週の販売数字があまり思わしくなかっただけで、本当は商品価値はあるのかもしれないのに、結果的にその商品のポテンシャルが死んでしまうということが何度も起こりました。一方で真逆のことも起きていて、そういうことが怖いので、今度は在庫を必要最小限にしておこうと考える小売店さんが増えていくわけです。その結果、みなさんがお店に買いにいくと、「あ、それは売れ切れました」と言われて、「次に入るのは3週間後です」というようなことになると、せっかく盛り上がった気持ちが冷めてしまって、せっかくの需要が実際のビジネスにつながらないということが起きています。ですから、もし在庫リスクをうまく軽減する方法が見つかれば、ゲームビジネスにとってすごく大きなメリットがあるというのが、ダウンロード販売をこのような形で始める理由です。当然、物がつく初回特典型のようなスタイルを強く求めるお客様もおられますので、おそらく、当社だけではなくソフトメーカーさんも含めて、これからいろいろな工夫がなされると思います。まずは、そもそも私たちが「デジタル販売をします」ということに対して、お客様がどのように行動されるかということを見極めてから動きたいと考えておられる関係者の方が多いので、私たちとしては、まず『New スーパーマリオブラザーズ 2』や、先ほどの『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング』といったソフトをデジタル販売したら、全体の販売量の中のどれぐらいがデジタルで売れましたということを、まず世の中にお示しして、そのことでみなさんがイメージする市場のボリュームというのが分かり、じゃあそれに例えば「ある程度在庫リスクをとってでも、初回特典型のダウンロードの販売というのも考えてみよう」と考えていただけるような流れを作りたいと思います。ただ、今日の時点では「具体的にこういう予定があります」ということは申しあげられないのと、「ダウンロード販売において何を解決しようとしているのか」ということからすると、初回特典型の商品と多少相性の悪い要素もあって、上手なマネジメントが必要になると思います。さらに言えば、もっともっと長い将来を考えると、ダウンロード販売で商品を買って、特典物は後から自宅に届いてもよいわけで、そういうような構造のビジネスもあり得るかもしれません。これらも含めて、今後いろいろと研究していきたいと思います。

Q 17 Wiiの『おいでよ どうぶつの森』で、家族が海外の方とかと交流して楽しんでいたとき、改造データが入り込み、その後遊ぶのをやめてしまった。今後ネットワークサービスを拡充していく中で、新しく『とびだせ どうぶつの森』も出るが、その辺りの対応・対策等を考えているのか。
A 17

岩田:

 当社の製品で遊んでいただきながら、大変不愉快な思いをされたということに対して、大変遺憾に思い、また、それを防げなかったわれわれの能力不足の面があると思いますので、お詫びいたします。今のお話は、おそらく、Wiiの『どうぶつの森』で、その改造データをいたずらのように流通させたお客様がいて、そのことで現れるものに対して、別の方がそれをご覧になって大変不快な思いをされたということだと思います。なぜこういうことが起こってしまうのかと申しますと、ゲームプラットフォームというのは、不正な改造、あるいは、海賊行為によってゲームソフトを不当に遊ぶということを防止するためのさまざまなセキュリティー機構が備わっており、DSにつきましても、Wiiにつきましても、当初はそれが有効に機能しておりましたが、世界中の人たちの中で、ネットワークを通じて情報交換しながらセキュリティー破りを、趣味のようにされる方がおられ、その成果をインターネットを通じて発表し、それを利用される方がどんどん増えていくという悪循環が起きています。結果的にセキュリティーが一度破られてしまい、その破られてしまったセキュリティーの穴をふさごうと努力をするものの、ふさいでもまたすぐに穴が開けられてしまうというイタチごっこ状態になってしまい、そういう改造データの流通が完全には防止できないという状況になってしまいました。Wii Uや3DSを開発するに当たって、ビジネスをする上でも、お客様に安心して楽しんでいただく上でも非常に必要だと思っているのがこのセキュリティーで、ニンテンドー3DSに関しては、ニンテンドーDSの互換モードは、そのニンテンドーDSのソフトが動かなければいけないので、部分的に海賊行為ができているものがありますが、ニンテンドー3DSそのものに対しては、セキュリティーは発売からこれだけ経ちましたが、まだ堅ろうでございます。さまざまな試みがされていますが、当然セキュリティーというのは何重かの防火扉のようなものですから、一番外側がちょっと開きかけていても、まだ何重か手前にあれば、そんなに短いサイクルでそれが突破されることがないのではと思っております。もちろん、人間がつくるセキュリティーですから完璧はございませんので、同時に、今度は万が一セキュリティーが突破された場合に、どう本体を更新するかということがございます。今の本体機能というのはネットワークを使って「更新」といいまして、システムの中身をネットワークからダウンロードしてきて入れ替えることができるようになっていて、それによってセキュリティーの向上を図れるのですが、実は3DSより前の機械は、一つ大変大きな問題がございまして、お客様が能動的に本体更新という行為をしていただけないと、そもそも更新がされない構造でした。結果的に、お客様は更新した方がいいことは分かっていても気づかないので、更新されないままになりやすいという問題がございました。これについては、最近、スマートフォンやタブレット、パソコン、OSでもそういう仕組みが一般的ですが、自動更新といいまして、インターネットにつながっているときに自動的に更新データをダウンロードしておいて、更新できる準備を整えて、「更新データがきていますから更新しますよ、いいですね?」というメッセージが出て更新するようになりました。したがって、3DSのセキュリティーは現時点で堅ろうですが、万が一、セキュリティーが破られた場合にも、すぐに被害を最小にできるように対応する準備はしております。これはある意味、3DSやWii Uをつくる上でDSやWiiの大変大変苦くて痛い教訓から学んだ結果、それが反映されているとお考えください。

Q 18 (連結業績の発表を開始した)1981年以降、初めての赤字ということで新聞その他に報道されており、大変な状況になっているということは会社側も、われわれ株主も、一般の人も皆分かっていると思う。このような状態の中であって、役員賞与を11名で3億円にしたと報告されており、社員にも賞与が出るようだが、このような世の中の社会情勢を考えて、この額が妥当なものか、その辺についての意見を聞きたい。
A 18

岩田:

取締役報酬総額
取締役報酬の算出法
固定報酬の算出法
業績連動報酬の算出法

 まず取締役報酬について、部分的に誤解もございますのでご説明をさせていただきたいと思います。ここにございますのが、取締役の報酬の総額です。72期がこの直近の決算期でございます。71期が1年前、70期がそのまた1年前ということで、70期のときには大変業績も良かったので、当然そのときに変動報酬が大きくございましたので、取締役報酬総額は大きくなっておりました。第72期の取締役の報酬総額は、3億200万円で、71期の7億4100万円から4億3900万円減額をいたしました。減額の主な理由ですが、通期の営業利益が赤字でしたので、業績連動分の変動報酬、これがいわゆる定義するところの役員賞与ですので、われわれはこの6月末には役員賞与を一切いただきません。先ほど賞与を3億も取るのかというご指摘でしたので、それは誤解であるということは申しあげておきます。もちろん、賞与をとっていないからこの業績でも良いのだと申しあげるつもりではございません。われわれはこの状況でしっかり会社をあるべき方向に導いて、来年業績をご報告するときに、「このように回復いたしました」と言えるように努力をしてまいります。また、固定報酬分というのがございまして、これは昨年の7月末の第1四半期決算発表のときに任天堂3DSの大幅な値下げを発表いたしましたときに、業績予想の大幅な下方修正になりましたので、「固定報酬分についても社長は50%、他の代表取締役は30%、その他の取締役は20%、報酬をカットします」と申しあげました。取締役報酬の任天堂の考え方ですが、67期の定時株主総会において、取締役の報酬は年間5億円以内の固定報酬枠と、当該事業年度の連結営業利益の0.2%以内の業績変動型の変動報酬枠とすることをこの総会の場で決議いただき、この変動報酬は営業利益に連動いたしますので、先ほど申しあげました通り、前期は算出上ゼロでございます。固定報酬につきましては、総会で決議いただいた5億円の枠内で基本的には職位、すなわち責任の重さに前年までの貢献度を考慮して取締役会で決定しております。前期は、取締役の固定報酬も削減をいたしましたので、1年前と比較すると9,900万円減額の3億200万円でございました。ちなみに、4月から3月までの年度のうち、固定報酬の削減は8月から行いました。ですから、12か月のうち8か月が対象になりました。現状の経営環境を鑑みまして、今期も報酬カットは継続することにいたしましたので、この4月からの年度では通年が削減対象となりますので、固定報酬はさらに削減となる見通しであることもあわせてご説明いたします。また、去年は1億円以上の役員報酬の者はいるかというご質問をいただいておりましたので、念のため一緒に申しあげておきますが、今1億円以上の報酬を受け取っている役員はおりません。昨年唯一の対象者であった私岩田は、今期(2012年3月期)の報酬総額は4500万円となっておりました。また、当社では65期の定時株主総会終結時に退職慰労金はすでに廃止しておりますし、ストックオプションなどの現金以外の役員報酬もございませんのでこれがすべてでございます。

 また、先ほどお話がございました、「こんなときに従業員にボーナスを出すのか」ということでございますが、一方で従業員には従業員の生活もございますし、また、従業員の賞与というのは、かつて非常に業績が良くて、株主のみなさまにたくさん配当をお支払いできたときも、劇的に賞与を上げるということはしておりません。ゲームビジネスというのは、作って世の中に問うて初めて分かる浮き沈みというものがございます。浮き沈みがある以上、その浮き沈みに極端な影響を受けた待遇で安心して働けないとなれば、今度は世の中の常識とはずれるような新しい、のちに認められた後は革新的だったと言われるようなものは、たいてい最初は正気かといったご指摘を受けたりすることが多いですから、そういうものをしっかり作るためには、目先の業績のことに過剰には影響を受けずにした方が良いという判断で、かつて業績好調のときも極端に上げることはしておりませんし、逆に下降局面だからすぐに下げるのだということでもありません。ただ、さすがにこれだけ厳しい、通期赤字ですから、今までと同じことが既得権ということはないだろうと、それなりの削減はいたしました。ですから、身内に甘くお手盛りをしているという意識はございませんので、どうかご理解いただければと思います。

Q 19 根本的なことを聞きたい。任天堂のビジネスモデルが時代遅れになっていないか。それを含めて、具体的にどのような成長戦略を出すつもりか? それをマスコミに発表すれば株価は一気に上がると思うので、成長戦略をはっきりと示してほしい。
A 19

岩田:

 今株主様がおっしゃっておられた成長戦略を明言しただけで株価が直ちに上がるはずだということに関しては、そのような見方もあろうかと思いますし、現状の株価にご不満があるということも、私も5600株の株主ですからとてもよく分かります。

 しかし、われわれのこれまでやってきたことを思い起こしていただきたいのですが、「ニンテンドーDSをこのように売ります、ゲーム人口を拡大します」と言いました。その通りのことをしました。では、言ったときに株価は上がったでしょうか? 上がっていません。DSが売れてから上がりました。「Wiiという機械で今までゲームをしたことがない人にゲームをやってもらいます」と言いました。その通りのことを実現しました。でも、そのとき(ビジョンの発言時)には株価は上がらず、(Wiiが売れた)後で上がりました。結局、結果なんです。ですから、われわれは結果を出すことが求められていると思っています。

 当然、「任天堂のビジネスモデルが時代遅れではないか」というご指摘が、世の中に存在することももちろん存じております。その中には、任天堂自身が対応しなければならないこと、特に任天堂がインターネットをどう活用して、今までのビジネスモデルのどこをそのままにし、どこを変えるのか、ということがあり、その一つの答えが、先日から発表している「パッケージソフトのデジタル配信をやっていくことで、任天堂の強みを活かしながら時代の変化、環境の変化に備えます」ということも申しあげております。これも、デジタルビジネスでどれだけ売れて、そのことが収益向上にどう貢献したということを申しあげるまでは、残念ながら前例がないので、認めていただけないのではないかと思っています。

 もちろん、IRや広報などの機会を通じて任天堂の未来を語るのが私の一つの役割で、今そのことにおいて「説得力がないから株価がこうなんだ」というご批判に対しては、ご意見を真摯に受け止めたいと思います。一方で、われわれはやるべきことをやっていますし、準備もしていますし、後はこれに対してどう結果を出すかだと思っていますので、ぜひこの後、われわれがやっていることがどのような結果となって実を結び、そしてそれがニンテンドー3DSやWii Uの販売の数、あるいは任天堂の収益の数字となってどのように実を結ぶかを見ていただいて、その上でわれわれは責任を果たしていきたいと考えております。


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