熱心なファンと同じ目線に

お客様と同じ目線に立つために

私が入社後に配属されたのは、外部の開発会社さんと一緒に、任天堂ブランドのゲームを作るという部署でした。そこでは数多くのタイトルを制作してきたのですが、最も長く続いているシリーズが『ファイアーエムブレム』です。1作目がファミコンで登場したのは1990年のことで、さまざまなハードで新作が作られ続けてきたものの、なぜか私はこのタイトルに関わることは一度もありませんでした。ところが、スマートデバイス用のゲームを作る部署に異動し、ディレクターを任されることになったのが、2017年2月から配信がはじまった『ファイアーエムブレム ヒーローズ』だったのです。

プレッシャーはもちろんありました。四半世紀以上も続いてきたシリーズですし、開発で奮闘する先輩や仲間たちの姿をたっぷり見てきました。そのように、多くのスタッフの努力によって次第に高められていった評価を、自分で下げるようなことは絶対にできないと思ったのです。

そこで改めて、シリーズをひととおりプレイすることにしました。『ファイアーエムブレム』は熱烈なファンに支持されてきたタイトルです。実際にゲームをプレイすることで、そのようなお客様と同じ目線を持てるようになることが、とても大切でしたし、それと同時に、どのようなことがスマートデバイス版に求められるかを、自分で考える必要があると思ったのです。

没入することを前提に作らない

『ファイアーエムブレム』の魅力のひとつは、その世界感にどっぷり没入して遊べることです。ひとつのマップをクリアするのに30分から1時間、タイトルによっては、3時間もかかるものもあるのですが、スマートデバイス版では、プレイヤーが強烈に没入するということを前提に作らないほうがいいと考えました。

というのも、そもそもスマートフォンというのは電話機です。ゲームで遊んでいるときに、電話がかかってくることもあれば、メールやメッセージが画面に表示されるなど、ゲーム専用機ではありえないようなことも起こります。そういったことはプレイヤーの妨げになるということで、思い切って1つのマップをコンパクトにすることにしました。5分から10分でクリアできる設計にすることで、ちょっとした空き時間でも気軽に遊べるようなものを目指したのです。

もし一度でも『ファイアーエムブレム』の開発経験があったなら、大きいマップを実現することにこだわっていたかもしれません。でも、そのような立場であったからこそ、お客様の目線に立って開発することができたのだと思います。

社員略歴

松下スマートデバイス事業部/2007年 入社
2007年「理工系/ソフトウェア」入社。ニンテンドー3DS『カセキホリダー ムゲンギア』(2014年)やスマートデバイス向けアプリ『ファイアーエムブレム ヒーローズ』(2017年)では、ディレクターを務める。

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