毎日のフィットネスを声で励ます毎日のフィットネスを声で励ます

プレイヤーに呼びかけるボイスを作る

映像に音をつける仕事に関わりたいと考えて、任天堂に入社した私は、サウンドデザイナーとしていろいろなゲームの効果音などを制作してきたのですが、『リングフィット アドベンチャー』では「リング」というキャラクターのボイス制作を担当することになりました。リングは、プレイヤーといっしょに冒険をするガイド兼相棒役であり、毎日のフィットネスを声で励ます役回りでもあります。全シーンに渡り、台詞自体を書くのはプランナーの担当ですが、運動中にプレイヤーを励ます声掛け部分の台詞は、再生タイミングなども含めてサウンド側から多く提案していました。

リングは、ゲーム中は常に登場しているキャラクターのため、ボイスによって、プレイヤーから敬遠されたり、嫌われてしまう心配がありました。しかも、ゲームに収録できるボイスの数は限られています。プレイヤーの気持ちに寄り添っていないような機械的なメッセージを発したり、プレイヤーのアクションと少しでもずれたタイミングで声をかけられたりすると、プレイヤーのモチベーションが一気に冷めてしまう恐れもありました。

そういった心配を払拭するには、実際にボイスを入れながら開発を進めるのがよいと考えました。そこで、開発チームのなかでオーディションを行って、学生時代に演劇をしていたプログラマーに仮でボイスを担当してもらうことにしました。もちろん最終的にはプロの声優さんのボイスで収録したのですが、セリフが確定するまでにはかなりの時間がかかりますし、それまでは彼にリング役を演じてもらうことで、ボイスの内容や再生されるタイミングを、何度も繰り返しながら検討することができたのです。

生活しているなかにヒントが

ボイスで重視したことのひとつは、再生されるタイミングです。このゲームでは、フィットネスをしながらひとつのコースを駆け抜けるわけですから、例えばスタートしたときは、「よし、がんばろう」というようなボイスがいいのですが、中盤を過ぎて疲れてきたときに「きょうもがんばろう」などと言われると、プレイヤーの気持ちは冷めてしまうと考えました。そこで、ゴールが近くなると「あともう少し、がんばれ」というねぎらいの言葉に変えることで、プレイヤーのモチベーションを維持できるようにしたのです。

また、バトルスタイルのトレーニングをしているときに、それまでより良い姿勢で運動したら、「その感じ!」とか「すばらしい、いいね!」といった、プレイヤーをほめるようなボイスを再生させるようにもしました。じつは私にはジムに通っていた時期があり、そのときの経験がとても役立ちました。運動中にトレーナーの方が声をかけてくれて、それがすごく励みになりましたし、声かけのタイミングやテンポ感が体感として自分のなかにしっかり残っていたんですね。

ボイスに限らず、ゲームの音作りの仕事では、実際に生活しているなかにヒントがたくさんあると思います。何気なく街中を歩いている時に、自分の耳に飛び込んできた音がゲーム作りの参考になることもありますし、生活に密着したこの仕事に、とてもやりがいを感じています。また、プランナーやプログラマーのほか、いろいろな人たちがリングのボイスの開発に関わって、それをひとつのかたちにできたことにも、大きな達成感がありました。

社員略歴

横山企画制作部/2012年入社
2012年「サウンド系」入社。
サウンドデザイナーとして、Nintendo 3DS『Newスーパーマリオブラザーズ2』(2012年)、Wii U『NewスーパーマリオブラザーズU』(2012年)、Wii U『マリオカート8』(2014年)、Nintendo 3DS『どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー』(2015年)、Nintendo Switch『ARMS』(2017年)、Nintendo Switch『リングフィット アドベンチャー』(2019年)の開発に関わる。

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