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ゲームの世界では、キャラクターに人工知能を組み込むというような流れもありますが、ポケモンではそういう方法をとられていません。それでも、ポケモンたちがあれほど生き生きと感じられるのは、なぜなんでしょう?
 石原>> コンピュータをやってる人間って、AI(人工知能)が素晴らしいとか、自律的なプログラムが動いていくとか、コンピュータの中に人工生命的な構造を作れるかもしれないというような、そういうサイエンスにあこがれる人は多いと思うんですよ。僕もある時期はそういうことが面白いと思っていたんだけど、結局それは子供の興味とは関係ないんですよね(笑)。子供たちが友達にしたいと思う生き物や、一緒に連れて歩きたいと思う生き物とは関係のないコンピュータ・サイエンスっていう狭い分野の科学の話なんです。
田尻>> 勝手に生きているものっていうのは、どんなによくできていても人と関係ないからね。ゲームの中でポケモンと旅したり、野生のポケモンに襲われたり、トレーナーと対戦したり、あるいは現実の世界で友達とポケモンを交換したりするわけで、そうしたコミュニケーションがあるからこそ、ポケモンに様々な思い出が生まれたり、生命を感じることができるんですよ。
石原>> ポケモンは人工生命とは違って、かなり複雑なデータを秘めてはいるけれど、それが明らかにされている部分と、されていない部分と、将来変わるかもしれない部分と、そういう様々な要素で構成されているんです。だからこそ、レベルを上げたり通信で交換したりしていると、いつの間にか進化して「なんでコイツこんなになっちゃったんだろう?」っていうような偶然性を感じたりするわけ。そんな出会い方が最初から最後までプログラマーに仕組まれていることではなくてね、たまたまそうなったときにドラマを感じるというのがポケモンなのであって、それがコンピュータ・プログラムにおける一番高度な生命の住まい方なんですよ。きっと。
 田尻>> 『ポケットモンスター』では、ポケモン一体一体の情報量がかなり多いんですよ。この先いろんな続編が作られたときに、たとえばピカチュウの色が変わるとか、耳の形が変わるとかでもいいんだけど、そういうことが可能なように、大きなデータの配列のなかに空白の部分も残してあるんです。それって、じつは遺伝子の並び方によく似てるんですね。いまはまったく意味をなさないデータの羅列と意味を持ってるデータの羅列。だけど、将来ポケモンに新しい属性ができたときに、空白になって通信交換してるところがそれを判定する場所として使われたりする。そういう意味で言うと、生命科学の理にかなった成り立ちになっていて、そこはもう少しみんなにわかって欲しいなって思う。というのは、シンガポールなんかだと「生命科学の勉強のために『ポケットモンスター』が役立つ」っていうようなことをニュースで言ってたりするんです。
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