「メトロイド」に託す思い 坂本賀勇インタビュー
坂本賀勇
任天堂株式会社 第一開発部
坂本賀勇

「メトロイド」シリーズといえばこの人。ファミコンディスクシステムの『メトロイド』、スーパーファミコンの『スーパーメトロイド』を手がけた坂本賀勇さんにお話をうかがいました。

制限から生まれた数々のアイデア
−−なぜニンテンドウ64やゲームボーイカラーで「メトロイド」を出さなかったんですか。
坂本 理由はいくつかあるのですが、ひとつには『スーパーメトロイド』でストーリーとしては一応完結しているからなんですね。それから、もうひとつは開発第一部は携帯ゲーム機の部署ですから、内部で64のソフトを開発するのは難しかったんですよ。ライセンシーさんからのお話もあったんですが、なかなかいい形でまとまらなかったんです。それから、やはりリアリティのあるゲームなので、表現力という点で64では少し厳しかったんですね。ゲームボーイカラーのほうは、出すとすればファミコンの絵柄になってしまうし、そうするとスーパーファミコン版より見劣りがしてしまう。そういういくつかの理由があって、結果的には9年間のブランクが空いてしまったんですね。
−−ゲームキューブが発売されて、改めて新作を出そうと思われたんですか。
坂本賀勇 坂本 そこに至るまでは様々な流れがあったんですが、キューブであればハードとしての能力も高いし、いいものが作れるのではないかと思いました。さらに、情報開発部で制作することで、任天堂として発売できることになったんですよ。
−−アドバンス版はいかがでしょう?
坂本 これはまた、キューブとはまったく別のラインで話が進んでいたんですね。発売時期は重なりましたが、厳密にいうとアドバンスの企画のほうが先に進んでいたんです。
−−話は前後しますが、そもそもファミコンディスク版の『メトロイド』はどういう動機で作られたのですか。
坂本 実は『メトロイド』は僕が思いついたゲームではないんです。当時、開発一部でもディスクシステムの新タイトルを作ることになったんですよ。そこで、新人2人に企画を任せて、僕は違うゲームを作っていたんですね。ところが、いざ現場に戻ってみると、スペーシーな舞台で身体能力の高そうなキャラクターが銃を撃つというイメージだけがあって、ゲームとしては出来上がっていなかったんです。それで、僕を含め周囲のスタッフが総がかりでとりかかることになりました。今だから言えますけど、発売日は決まっていたので、もうその時点では新しい仕様を追加する余裕がなかったんですね。でも、ゲーム性といったら、「飛んで、はねて、撃つ」しかないんです。この中でどうしたらいいだろう?と考えて、ダンジョンを探索してパワーアップしていくというゲームデザインをみんなで作りあげたんです。
−−限られた中でアイデアを出したのが功を奏しましたよね。
坂本 そうですね。世界観のコンセプトだけはあって、あとから遊びのフォーマットを作ったというのが正解かもしれませんね。
−−主人公が女性というのは最初から決まっていたんですか。
坂本 これも、誰かがポロッと出したアイデアを「それは面白い、そうしよう」という軽い気持ちで採用したんです。そういう大らかな時代でした。

「メトロイド」シリーズを続けていきたい
−−坂本さんは『メトロイドプライム』では監修を、『メトロイドフュージョン』ではディレクションを担当していますよね。『プライム』はシリーズ初の主観視点ですが……。
坂本賀勇 坂本 企画を聞いたときは、とまどいもありましたね。サムスはわりとキャラクターとして人気があるので、そのフォルムが出てこないくていいのかと思ったんです。でも、開発途中のソフトを見せてもらうと、モーフボールになるところや、デモなどでサムスのフォルムがいい感じに登場するんですよね。世界観としてもカッコいいし、これはいけると思いました。いい感じに仕上がっていると思いますよ。
−−『プライム』の時代設定はいつ頃なんですか。
坂本 最初のファミコンディスクシステムと、次の『メトロイド2』の間のお話です。外伝として切り離して作るアイデアもあったんですが、外伝って逃げの部分がありますよね? それで、田邊と相談しまして、一番自然に入れるところに入れたんです。現地のスタッフがよくがんばってくれて、シリーズ内の1作品として、うまくできあがったと思いますよ。
−−『メトロイドフュージョン』ではどんな指示をしましたか。
坂本 最初はプロデュースだけやるつもりだったんですが、進めていくうちに、「メトロイド」の経験のある者が現場にいたほうがいいと気づいたんです。若い人が多いですから、やっぱり新しいことをしたがるんですね。新しいことをやりつつ、「メトロイド」を遊びたい人たちに届けなくてはなりませんから、良い部分は残そうという開き直りが必要なんです。そうやって、ブレーキをかける役回りとして参加しました。
−−シナリオは坂本さんが書いたんですか。
坂本 そうですね。僕の場合は、チームの意識統一のために最初にシナリオを書くんです。作りながらシナリオも変えていくんですけどね。今回、一番大きかったのは、サムスに擬態する「SA−X」という敵を作ったことです。自分に擬態した敵というのはとてもイヤな感じがすると思うのですが(笑)。これによって、新しい「メトロイド」の感じが出せたと思います。ほかには操作面がかなりシンプルになっていまして、ミサイルの選択もボタン1つで出来るようにしています。これはスタッフに提案されたんですが、採用してよかったと思いますね。
−−旧作が難しくてクリアできなかった人も、今回はお子さんと遊べますね。
坂本 9年ですから、そんな状況ですよね。でも、『スマッシュブラザーズ』にサムスが入ったおかげで、サムスの認知度がすごく上がったんですよね。それも今回、シリーズを再開するきっかけになりました。桜井さんには感謝しています(笑)。
−−シリーズはこれからも続くのですか。
坂本賀勇 坂本 できれば続けていきたいですね。今後も、サムスという人物を語っていきたいと思います。アダムとサムスの過去にさかのぼるお話も生まれるかもしれませんね。また、講談社の『マガジンZ』でマンガも連載していまして、そこではまた違った「メトロイド」を楽しんでいただけると思います。
−−最後に、待ち望んでいたファンのみなさんにひとことお願いします。
坂本 まずは、9年間お待たせいたしました。今回のメトロイドは難易度を選べたり、ナビゲーションシステムがあったりして、プレイしやすいゲームになっています。難易度の高い前作を好きなかたに批判されるのではないかと危惧していたのですが、それに対してファンのみなさんが好意的に見てくれているのがうれしいんですね。これからも支持してくださる人たちに喜んでもらえるようなものを作っていきたいと思っています。

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