なぜこういうゲームを作ろうと思ったんですか。
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西 数年前に『L.O.L.』(※)という作品を作ったんですが、環境問題などに突っこみすぎてしまって、「ゲームなんか作るのは世の中のためにならないのではないか」という気持ちになってしまったんです。電気も使いますし、ゴミも出ますし。それで、いまひとつ本気でゲームを作る態勢になれなくて、次のタイトルも全然決まらなかったんです。
そんな時、セガ系のクリエイターの水口哲也さんと、ネバダの砂漠に行ったんですよ。ネイティブアメリカンがオトナになるための儀式で「ビジョンクエスト」というのがあるんですが、それは飲まず食わずで4日間砂漠をさまよう儀式なんです。砂漠で1人でいると、狼の遠吠えも聞こえますし、殺されるかもしれないし、本当に怖いんですね。その4日間にあったことを長老に全部報告すると、「よし、お前は天翔ける鷹だ」とか、名前をもらってオトナとして認められるんです。そういう伝承が好きで、よく水口さんとも話をしていたので、砂漠に行って1日だけ断食をしてみたんですね。そうすると、幻覚が見えたりして、本当に怖い。そんなこともあって、「オトナとはなんだ?」というゲームを1本作ってみたいと思ったんです。それで、その企画で『シーマン』を作った斎藤由多加さんとコラボレーションすることになったんですよ。
ある程度進んだときに、任天堂さんに連絡をしたら、ちょうど宮本茂さんが東京に来て見てくれることになったんです。その時は僕の原案とはかなり違うゲームになっていたんですが、宮本さんが「ところで西くん、これはどういういきさつで作ることになったの?」と聞くんです。それで、さっきのようなことを全部話したら、コラボレーションする前の原案を見せてくれと言うんです。それを見せたら、「僕は君の作風を見てみたいから、君1人で作りなさい」と。それで、最初の原案に戻して作ったのが『ギフトピア』だったんです。
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※「L.O.L.」=2000年にドリームキャストで発売されたゲーム。人間と別の生命体との「共生」がテーマ。音楽家の坂本龍一氏とのコラボレーション作品。
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任天堂に企画を持ちこんだのには理由があったんですか。
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西 僕もファミコンで育ってきた人間なので、わけのわからないエンターテインメントをやっているつもりはなくて、ゲームを作っている自覚はあるんですね。キューブを発表した時に、岩田社長が「これはゲームマシンだ」と断言していましたよね。それで、作るならゲームキューブでやりたいと思いました。それから、ゲームキューブの開発ツールに「sysdolphin(シスドルフィン)」というものがあって、ライブラリも揃っていたんですよ。
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吉田 僕はプログラマーとしてはサポート的な立場だったんですが、メインプログラマはsysdolphinのおかげで負担がすごく軽くなったと言っていました。自分でも今ちょっとずつ勉強しているんですが、やはり色々揃っていて開発はしやすいですね。
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グラフィックはいかがですか。
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ひかりん 3Dのグラフィックを実機であまり差がなく表示できるので、かなりラクでした。絵はパソコン上でソフトイマージというソフトで作っているんですが、そのフォーマットがsysdolphinにそのままサポートされているんですよ。
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西 最初に宮本さんが来て「やってみれば?」と言った1週間後には、開発機材がひと揃い送られて来たんですね。そういう対応も早かったんです。2日後には絵が出ていましたね。
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ゲームの企画としては西さんのおっしゃっていたネイティブアメリカンの儀式がもとになっていたんですか。
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西 いや、そこにインスパイアはされていたんですが、舞台も違いますし、また違う世界です。そこを元に最初は5人のメンバーでいろいろ考えていって、3ヶ月間でサンプルを作ったんですね。この作品は、任天堂のベンチャービジネス支援の第一弾ソフトだったんです。サンプルを見せて、通れば本契約という形だったので、社長の岩田さんや専務の宮本さんなど、そうそうたるメンバーの前でプレゼンをやりました。
それで、プレゼンが終わったら、みんなお互いに顔色をうかがっている感じだったんです。これはダメかなあと思ったんですが、わりとすんなり「このままでいいでしょう」と言われたんです。京都のかたってあんまりハッキリものを言われないので、本当にいいのかな?と思ったんですね。それで、最後に「いいんでしょうか、悪いんでしょうか。ハッキリ言ってください」と聞いたんですね。そうしたら、岩田さんが、「西くん。任天堂のこのメンバーを揃えた所で、反対意見が出ないというのは素晴らしいことなんだよ」とおっしゃるんですよ。「それは決まったっていうことですか」って言ったら、「そう受け取ってもらって問題ないでしょう」と。
それで、会社で待っていたスタッフに電話をして、本契約が決まったことを話したんです。そうしたら、涙ぐむヤツとかもいて。
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ひかりん 決まるかどうかというのは、半々だなと思っていましたから。
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西 会社としては初めての任天堂タイトルですし、任天堂ユーザーはお子さんも多いじゃないですか。もちろん、そこを意識して作ってはいたんですが、今まで僕らが作ってきたものはオトナ向けのソフトだったので、不安はありましたよね。
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オルタナティブRPGというジャンルになっていますが、これはどういう意味ですか。
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西 ロックでオルタナ系とよく言われますが、「代わりの」とか「取って代わる」という意味なんですよね。RPGって、スタンダードはマザーやドラクエですよね。だけど、そのスタンダードではない、取って代わるものを作っていこうと。僕らのような小さな企業がスタンダードで勝負してもかないませんし、逆にこういったソフトは僕らでなければ作れないと思うんです。
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では、通常のRPGっぽいシステムはあまり入っていないんですね。
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西 そうですね。主人公に役割があって、成長するという意味ではRPGですが、バトルもなければ武器もないゲームですから。
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ゲームの目的としては、オトナになるということですよね。西さんの中では、オトナの定義はあるのですか。
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西 人のために生きられるか、ということでしょうか。でも、ゲームの中ではお金を貯めるだけでも、オトナにはなれるんですね。現実の社会でも、歳をとれば成人式があって表向きはオトナになれるじゃないですか? ただ、最終的に僕が思ったのは、オトナになるというのは、国が決めてくれるわけでもなく、誰かが決めてくれるわけでもなく、自覚の問題だと。
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そのへんはゲームをプレイしていて、ひしひし感じるようになっているんですか。
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西 いえ、終わったあとに感じる、くらいなんです。ゲーム自体はライトなんですよ。『ギフトピア』というタイトルも、贈り物+ユートピアという意味なんですが、贈り物というタイトルでありながら、贈り物が出てこないゲームを作りたくて。そうすると終わった時に「あれ、何が贈り物だったの?」という疑問が残りますよね。振り返ってみると、自然の環境で食べ物もあって、自分と仲良くしてくれる人たちがいる。そこに生きていけるだけで、それが贈り物じゃないかと。そういうことをセリフで言わせているわけじゃないんですが、なんとなく感じてほしいなと思っています。
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