今回はアパートが舞台なので、部屋に住人の個性はかなりでていますね。
ベティの部屋は特徴的ですね。その時代に合った部屋の模様にしたり、レトロモダン調の雰囲気にしたり。女の子の部屋らしくするために暖色系のものを多く入れたりしました。
部屋を見たら、誰の部屋かすぐにわかるんですよ。
シャルルの部屋は最初やりすぎてましたね。宮殿みたいになってた(笑)。
今はなくなりましたけど、トイレにバラの花束が置いてあったり。
カイルの部屋を描くのって難しくなかったんですか?
カイルは、なんとなくイメージができあがっているんでやりやすかったです。ジャズのレコードが好きとか、お酒が置いてあるとか、冷蔵庫には何も入ってないとか(笑)。
カイルの部屋はあまり修正もなく、そのまま決まりました。
逆に「変わったものもちょっとは入れてみたいね」とは話したりしてたんですけど、入らなかったですね。
あ、でも、『ラストウィンドウ』では、何日間かにまたがってお話が展開するので、ホンットに気づかない程度の細かいところですけど、カイルの部屋には変化があります。
…気がつかなかったかも。
たとえば、女性が訪ねてくる前にキレイにしたりとか(笑)。探してみてください。
でも、自分が経験していない時代の雰囲気を作るのって難しいですよね。やっぱり、「80年代の部屋」っていうことは意識されてました?
意識はしましたけれど、いかんせん私たちがほとんど1980年には生まれていないので…… そのあたりは金崎や鈴木に教えてもらいながら。
ポスターや写真なんかは、遠目からでも時代を感じられるものになってますよね。
でも、さっきでてきたベティの部屋は、今見ても可愛いですよね。
はやりが一周回ってきてるというのもあるかな。
女性のファッションも今着ても可愛いですよ。
でも逆に、ジェネレーションギャップが元で困ったこともいっぱいありましたね。1980年代に普通に使われていたものの存在すら知らなかったり、どうやって使うのかまったくわからないものもあったんじゃないかなと。
カイルの部屋にレコードプレーヤーがあるんですけど、プログラマーがレコードを見たことがなかったんです。それをいったら、金崎にすごく驚かれました。
「金崎ディレクターから一言」レコードが左回りに回転していたんで「おい! 反対に回ってるよ!」とツッコんだところ、 そのプログラマーに「レコードを見たことが無いので、知りませんでした……」と言われました。 回転の方向を知らなかったばかりか、レコードプレーヤー自体を見たことがないことに 自分の世代(30代後半)と20代との大きな溝を感じました。
これは遊んでいただく方にとっても同じなので、何回かにわたってモニターをとりましたね。
謎解きにも関係する部分があるので、知らないものがあると、どうやってヒントを出すか考えないといけないんですよね。
たとえば、カセットテープはほとんどの人が見たことはあるんですけど、留守番電話にカセットテープが使われていた時代はみなさん知らないんですよ。 そのほかにもパスポートとか自動販売機とか、「80年代ってこんな感じで良かったっけ?」って、ひとつひとつチェックしていきました。アメリカの話ですので、アメリカの方にも確認をとりましたよね。
謎解きのアイデアを出しても、その時代にないものだと全然使えなかったりもしますし。
そうそう。だから、上の年代の方には懐かしい感じを味わってほしいですね。若い方には新鮮な気持ちで遊んでもらえるかもしれません。
80年代とは関係ないですけど、前作で使ったペンシルアニメーションの手法は『ラストウィンドウ』でも変えていません。カイルのイメージもあえて変わっていません。これも、あえてこだわった部分のひとつです。
見た目的にはそんなに変わっていないですけど、ホテル・ダスクの出来事から1年経ったカイル・ハイドということで、ストーリーを進めていくと成長が見えるという形にまとまりましたね。
最初のデザインラフは何パターンかありましたし、見た目も結構違いましたよね。
無精ひげを生やしたものもあったんですが、「清潔感がない」とか「うさんくさい」とか「10年くらい歳をとっちゃってる」とか、女子から不評でして(笑)。ここでも女子の意見が生かされてます。
「金崎ディレクターから一言」最初はいい意味(?)でうらぶれたカッコいい感じをカイルに持たせたくて、 鼻の下にうっすらとひげを描いたんですが、非常に怪しいセールスマンになってしまった上に 女性スタッフからも非難ごうごうでして……とても不評だったため結局すべて消しました(泣)。
あと、今回はなんといっても小説 (※) 抜きには語れないですよね。こだわった分、大変苦労しました……
※小説『ラストウィンドウ』では、ソフトの進行に合わせて、主人公の足取りをもう一度本格的な小説の形式で読めるようになっている。
映画などのノベライズと同じで、小説が1本丸ごと入っていますもんね。結構すごい量ですよねぇ。オリジナルのちょっとしたエピソードなんかも追加していますし。
1章でも読み終わるまでに1時間くらいかかりますね。
ボリュームでいえば、テキスト量は中編の小説くらいですね。これが、ニンテンドーDSの画面上だと、ものすごいページ数になる。
でも、こだわったのはボリュームではなくて……
そうです!小説は、基本的にはゲームを作り終わってから起こしているんだけれども、ゲームの中でどうしても追加でヒントが必要になる部分が出てくる。つまり、ノーヒントだと、難易度のバランスが高いところがわかってくるんですよね。 で、「じゃあ、そのヒントを小説の中でヒントとして盛り込もう!」ということになって……
見せ方やネタなんかも、ずいぶん試行錯誤していましたよね。
ええ。ヒントをずばりそのまま出したくなかったんですね。あまりに親切すぎてもプレイする方の達成感がなくなってしまうので。合言葉のようにいってますけど、「親切に突き放す」のがシングさんの良さですから。その良さを生かすために、見せ方やネタが決まってから、さらにその落としどころを探るという苦労が続きました。
最終的には、ゲーム中のヒントは、小説の各章の最後にある袋とじにまとめました。読まない方が謎解きの楽しみは残しておけますし、実は読まずにクリアするとちょっとしたイイコトがあるので、お客さんの中で、開けるか開けないかのせめぎあいを楽しんでいただければうれしいです(笑)。
その甲斐あって、最終的にはいいバランスに着地できたと思います。ゲームと小説の両方を一緒に読み進めば、より『ラストウィンドウ』の世界を深く楽しんでいただける内容になっているんで、一度で二度おいしいところを味わっていただきたいですね。
実は『ウィッシュルーム』の発売時にはユーザーだったんですね。開発の立場になって、自分がプレイヤーとして好きだった雰囲気や世界観を大切にしつつもそれを超えたいという気持ちを込めて作り上げました。『ラストウィンドウ』の世界に生きる主人公カイルと、彼を取り巻く個性豊かな人々の表情変化と会話劇を楽しんでいただければうれしいです。
キャラクターは一癖二癖とあるキャラばかりなので、ちょっとした表情や動きは必見です! また、『ラストウィンドウ』を初めてプレイされる方でも、他のゲームには無い新鮮な感覚でプレイできると思います。一度といわず二度、三度と楽しんでいただければ(笑)。
本作はカイルの過去とか人となりがわかるようになっていますので、本作が初めての方は、そうした背景を知った上で『ウィッシュルーム』をプレイすると、また違った楽しみ方ができると思います。また、ちょっとしたネタもたくさん隠れていますので、いろんなところを探したり、謎解きにも別のアプローチ方法を見つけていただければと思います。
カイル・ハイドとアパートの住人たちの生き様は、ドラマそのものです。一見ごく普通のありふれた人生を送っているように見えますが、実はその心の奥には、過去の傷や秘密などの重荷を負って生きているんですね。とても人間らしい面だと思います。そんな彼らのそれぞれのストーリーに共感しつつ、『ラストウィンドウ』というゲームを味わっていただきたいです。 あ、あと謎解きに詰まっても、絶対に最後まで諦めないでください! 小説のヒントの活用はあなた次第です(笑)。そして『ウィッシュルーム』もぜひ遊んでくださいね!
「金崎ディレクターから一言」この『ラストウィンドウ』は女性スタッフが多かったということもあり、 男性はもちろんのこと、女性の方々にもやりやすく楽しんでいただける作品です。 是非気軽に手にとっていただければと思います。
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