7. 開発スタッフの気合いに応えるために

岩田

さきほど、とても苦労して
Wiiリモコンとヌンチャクに対応されたとお訊きしましたが、
開発の途中で、任天堂からちょっと変わった話がきましたよね。

辻本

はい(笑)。
→クラシックコントローラ PROですね。

岩田

苦労してWiiリモコンに対応したのに、
気をそいでしまったでしょうか?

藤岡

いえいえ(笑)。

岩田

しかも「『3(トライ)』の発売に合わせて出したい」と
提案させてもらいましたよね。
そんな提案をすること自体、前代未聞なんですけど。

藤岡

はい、それはすごく感じました。
ちょっと失礼な言い方になるかもしれませんけど、
任天堂は本気だぞと。

岩田

(笑)

藤岡

だから僕たちも本気にならないと失礼だと。

岩田

もともと本気だったんでしょう? 最初の段階から。

辻本・藤岡

(笑)

岩田

そういった本気さがすごく感じられたんです。
気合いを入れて『3(トライ)』がつくられていることが
わたしたちにひしひしと伝わってきましたので、
是が非でもうまくいってほしいと思ったんです。
ですから、もしうまくいかない理由があるとすれば、
それを少しでも何とかしたいとも思ったんですね。
やっぱり、コントローラがなじめないという理由だけで、
『3(トライ)』に入れないお客さんがいらっしゃるとすれば
それはすごく不幸なことじゃないですか。
で、この際だから言っちゃいますけど(笑)、
「アナログスティックの場所はどこがいいでしょうか?」
みたいなことまで、相談したりしましたよね。

藤岡

はい(笑)。

岩田

任天堂のコントローラ開発史を振り返っても、
他社さんにこの深さで相談したというのは
過去に例がないと思います。

藤岡

僕らにとっても前代未聞で(笑)。

岩田

もちろん社内では、
「え? 社外の開発者の方に聞きに行くんですか!?」
という反応もあったんです。
でも、いままで『モンスターハンター』を遊んできたお客さんに、
安心して遊んでいただくための新しいコントローラをつくるわけだから、
まず、作り手の人が納得できるものがいいと思ったんです。

藤岡

正直、聞かれたときは
「僕たちが決めちゃっていいの?」と思いつつ、
アナログスティックの位置はここがいいと伝えたら
その通りになりまして・・・驚きました。

辻本

ただ、Wiiリモコンとヌンチャクで操作できるとはいっても、
もともとは従来のクラシックコントローラにも
対応できるようにはつくっていたんです。

藤岡

そうなんです。
だから、PROになったとしても・・・。

岩田

自然に入れるんですね。

藤岡

ただ、クラシックコントローラで操作する場合、
「現状ではここを不便に感じてます」ということを
素直に言わせていただいて、
それを最終的に反映してくださったのは
すごくありがたかったですね。

岩田

わたしたちにとっても新しい体験でした。

藤岡

僕らにとっても楽しくやりとりさせていただきました。
コントローラをつくるというのは、
ミリ単位、いやもっと細かいところまで考えるんだとか・・・。

岩田

すごく変なところまでこだわってたでしょう?

藤岡

いえ、そういったこだわりに対して
すごく共感できたんですね。
ほんのわずかな部分を変えただけで、
触感が大きく変わるような世界を垣間見れましたので。
僕たちがゲームをつくるときに
素材の位置をちょっと動かして、
気持ちよく遊べるようにしていることと
すごく通じるものを感じました。

岩田

あれもまた、伝統工芸の世界だと思うんですね。

藤岡

だからすごく面白かったです。
それにPRO自体、すごく評判がいいですね。
実際に触った方々の声を実際に聞いたりすると。

岩田

そうですか。担当者が聞いたらきっと喜びます(笑)。

藤岡

しかもPROを同時期につくっていただいて、
『モンスターハンター』的にも
すごくよかったかなあと思ってます。

岩田

まずは『モンスターハンター』と同時発売になった
クラシックコントローラPROですが
今後はいろんなメーカーさんが
それぞれのソフトで使っていただけるようになると、
任天堂としてもありがたいですね。
それともうひとつ、Wiiハードの色展開も
『モンスターハンター3(トライ)』と同時展開することにしましたよね。

藤岡

その話を聞いたときも、すごくビックリしました。

辻本

もともと藤岡とも話していたのですが、
僕たちはハードといっしょに買っていただけるような
タイトルにしたいと思って、
『3(トライ)』をつくってきたんです。

藤岡

ハードもいっしょに買おうと思わせるくらいのものを
絶対につくろう、という気持ちでやってきたんです。

辻本

そんな話をしていたところに、
任天堂さんから本当に→Wii(クロ)を出すという話をお聞きして、
はじめはホントかな?と(笑)。

岩田

にわかに信じられませんでしたか?(笑)

辻本

はい。
で、実際に見せていただくと、
色が変わるだけで、すごく印象が変わるというか。

藤岡

ここに置いてみたい、とか思うようになるんですよね。
それに、スロットイルミネーションの
青との相性もよくって、すごくかっこよく感じました。

岩田

ただ、今回のようなきれいな黒色を実現するとなると
任天堂の評価基準を満たす材料は世の中に無かったので、
新しく作ることになりました。
わたしも担当者から話を聞いて仰天したんですが、
材料開発を2年半以上も延々とやっていたそうです。
それが、今回、ちょうど間に合ったんですね。

藤岡

それがいいタイミングで出していただくことになって、
そういう意味でも、『3(トライ)』は
すごく恵まれてるタイトルになったと思います。

岩田

お客さんが興味があるけど、どこかで迷っていて、
それで足が止まる条件があるならば
それをひとつでも減らすのが
わたしたちのやるべきことかと思ったんです。
その回答が、クラシックコントローラ PROであり、
Wii(クロ)でした。
それでは最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

藤岡

こうやって、みなさんにようやく・・・。

岩田

開発がはじまってから何年?

藤岡

プロジェクトがはじまってから3年です。
で、実際つくりはじめて2年ですね。

岩田

だから「ようやく」という言葉になるんですね。

藤岡

はい(笑)。
ようやく遊んでいただけることになりました。
今回の『モンスターハンター3(トライ)』は
その名のとおり、“トライ”、つまり“挑戦”です。
これからますます広がっていってほしいという思いを込めて
挑戦する気持ちでつくりましたので、
ぜひ隅々まで体験してほしいですし、
躊躇せずに(笑)、楽しんでください。

岩田

躊躇せず、思い切って
オンラインの世界に飛び込んでくださいということですね(笑)。
じゃあ、辻本さん。

辻本

『モンスターハンター3(トライ)』は、
僕らのなかでも特別なタイトルになっていまして、
1度更地にしてつくりましたし、
「“トライ”してよかったね」と言ってもらえるよう、
いままでのシリーズをプレイしてくださった方々にも
満足していただけるような内容に絶対になっています。
また、初めて触る人にとっては、
とても新鮮な気持ちで遊んでいただけると思いますので
ぜひ1度、触ってみてください。
よろしくお願いいたします。

岩田

わたしからも、最後にひとこと。
わたしは、かつてモノをつくってきた人間として思うんですが
こういった密度が濃くて、
気合いが入ったものには
なかなか頻繁にお目にかかることができないんですね。
その意味で、今回は『3(トライ)』のようなソフトに出会うことができ
その魅力をひとりでも多くの人に伝えられないかと思って、
今回はこのようなカタチで紹介させていただきました。
これまでシリーズを遊んできた人はもちろん、
いままでちょっと気になってはいたけれど、
なんとなく手が伸びなかったなという人に、
「やっぱりこれ、遊んでおかないともったいないですよ」と
とくにWiiを持っている方にはお伝えしたいです。
おそらく外からなんとなく見えている第一印象よりも
ずっと遊び方の幅の広いゲームだと思いますから、
そのことを理解していただけるといいなと思います。

辻本さん、藤岡さん、
本日はどうもありがとうございました。

辻本・藤岡

こちらこそありがとうございました。