開発スタッフが語る『みんなで投票チャンネル』の話。

みんなで投票チャンネルの開発スタッフに制作にまつわる話を語ってもらいました。

※インタビュー内容は掲載日(2007年3月2日)時点のものです。

はじめに

 

企画開発部の高橋です。「みんなで投票チャンネル」では全体の取りまとめ役を担当しました。

 
 

企画開発部の正岡です。操作画面などのプログラムを担当しました。

 
 

企画開発部の中川です。Miiの動きのプログラムなどを担当しました。

 
 

研究開発部の藤川です。投票結果などをWii本体とやりとりするサーバの設定を担当しました。

 
 

システム室の大植です。サーバの各種設定と、新しいアンケートをWiiに配信するプログラムを担当しました。

 
 

企画開発部の関です。デザインを担当しました。

 

「みんなで投票チャンネル」とは

 

「みんなで投票チャンネル」は、二択のアンケートに投票して、投票結果を見たり、どちらに票が多く集まるかを予想したりして楽しむチャンネルです。自分があたりまえだと思っていることが実はそうではなかったり、都道府県や世界の国によって異なる結果が見られたら、きっと面白いのではないかと思ったんです。そもそも「みんなで投票チャンネル」は、「毎日アンケートやクイズを配信してみたらどうか」という企画からはじまりました。

 
 

開発当初は「アンケートチャンネル」というそのままのタイトルでした。ただ、開発当時、既にインターネットなどで、似たようなアンケートサイトはたくさんありましたから、そういったものとは違って、気軽に遊べて、ストレスが溜まらないものにしたいと考えていました。

 
 

まず、リビングのテレビで見るものですから、子供からおばあちゃんまで家族みんなで楽しめるものにしたいと考えていました。たとえば「マリオとリンクどっちが好き?」という質問は、おばあちゃんには分からないかもしれないですよね。そういうことはしないでおこうと思いました。

 
 

家族みんなで楽しめるように、自分以外の家族がどっちに投票したかを見られるようにしたんです。これは、あえて他の人の投票内容を見せてしまうことによって、家族間でのコミュニケーションのきっかけになると思ったんです。うどん派かそば派か問うアンケートであれば、「え、お母さんうどん派だったの!?」とか、今まで知らなかった一面が見られたりして。そんな風に、みんなでああだこうだと言いながら盛り上がって欲しいと思ったので、投票も予想も、みんなでできるようになっています。

 

2/14(水)サービス開始

 

「みんなで投票チャンネル」は2月14日(水)にスタートしました。何の予告もなく始めたので、お客さんにとってはものすごく唐突な印象を持たれたのではないかと思います。にもかかわらず、多くの方に投票いただきました。世界共通アンケートと国内限定アンケートの2種類のアンケートがあるのですが、最初の世界共通アンケートが2日で約50万票。日本の国内限定アンケートでも約10万票もの投票が集まって、この数には私たちも圧倒されました。

 
 

開発中の動作チェックの時は、せいぜい60票程度でチェックしていましたからね。それがいきなり50万票ですから、びっくりしますよね(笑)。一人で何票も投票できない仕組みになっていますから、なおさらこの数字には価値があるように思います。通常のネット投票と違って、1人の人がものすごくたくさんの投票をすることはできませんから、結果が歪んでしまうこともありませんし。

 
 

日本の最初のアンケートは「うどんとそば、どっちが好き?」だったんですが、結果発表の時に、しっかり全国の都道府県から投票されていて、日本地図がうどん派とそば派できれいに二分されたのを見たときは、感動というか。背筋がゾワァ~っと来ました。

 
 

10万人の日本人がうどんとそばでまじめに語り合ったり悩んだりしてくださったみたいで、作り手としてはすごくうれしかったです。

 
 

各県でうどん派とそば派の比率によって色が塗られるんですが、やっぱり香川県の色が濃かったですね。圧倒的にうどん(笑)。

 
 

それと、沖縄はそば派でしたね。ソーキそばでしょうね(笑)。

 
 

白い都道府県は投票がないと勘違いされた方もおられたようですが、白く表示されているのは、両方の答えが拮抗している都道府県なんです。

 
 

投票数は毎回増加していますので、うれしい反面、サーバを担当している身からすると、正直ドキドキしちゃいますね(笑)。

 
 

もちろん投票数が増えた時の綿密なシミュレーションはしています。実際にサーバが無事稼働して、不安がないとはいえないです・・・(苦笑)。もちろん、投票数が増えるのが楽しみではあるんですが。

 
 

投票数に加えて、もうひとつ驚いたのは、お客さんから寄せていただいた「アンケートの提案」です。初日には1万件近くの提案が寄せられ、世界全体で4万件近くにもなりました。

 
 

このチャンネルの一番の趣旨は投票することですから、アンケートの提案は「おまけ」でつけたところがあったんですよね。だからアンケートを提案していただけるのは、10人に1人ぐらいかな、という想像はあったんですが、実際にこれだけ反響が来るとうれしいですね。

 
 

みんな世の中に聞いてみたいことってこんなにたくさんあるんだな、と思いました。ちなみに、アメリカの最初のアンケートは、当初「口笛が吹けるか、吹けないか」という内容になる予定だったんです。でも、前日に突然変わったんです。NOA(米国任天堂)からの依頼で、「バレンタインのギフトはチョコと薔薇どっちがロマンチックか?」にしてくれと。

 
 

前日にアンケートの内容を変えるなんて、本当はありえないんです。冗談はやめてくださいよ、って(笑)。大変な作業なので、だいぶ抵抗したのですが、NOA(米国任天堂)の社長からどうしてもということで・・・。

 
 

あとで聞いたら、NOA(米国任天堂)の社長が、Wiiチャンネルのプロモーションの一環として、サービス開始後に、自分のMiiをデザインしたカードをEメールでアメリカの報道関係者に送ったそうなんです。「バレンタインデーにもらってロマンチックなのはどっち?」と例のアンケートを添えて。そのカードを見て納得できました。対応できてよかったです(笑)。

 
 

そして、第一回の世界共通アンケートのテーマは「犬と猫、どっちが好き?」だったんですが、この質問のおかげで、といったら変ですが、日本での知名度が高くなったり、話題にあがった国とかもありましたよね。

 
 

グアテマラとか。

 
 

正確にはグアテマラ共和国という国で、場所はちょうど中南米のメキシコのお隣なんですが、犬好きの方の割合がすごく多くて、第一回のアンケート結果の国別表示で一番上に表示されたんですよね。

 
 

その国別表示の色のつき方の割合を見ると、どうも2,3人ではなさそうだなぁ、って。最低でも10人ぐらいはいそうじゃないかという話が出たり。

 
 

たしか投票者数は62人だった。Wiiは色々な国で遊ばれているんだな、と感慨深かったですね。

 
 

それに、数字だけでこんな風に話ができることってなかなかありませんよね(笑)。

 
 

「みんなで投票チャンネル」も世界同時リリースでしたから、動作チェックの時には、日本語だけでなく、世界の様々な国の言語でちゃんと表示されるかを繰り返しチェックしたんです。これが結構大変な作業でして・・・。

 
 

ドイツ語が特に大変で、同じアンケートなのに言葉が長いので日本語だと1行なのに2行にしたり。

 
 

とにかく「大変だなあ」なんて思いながらやっていたんです。世界中には他にもWebアンケートがあるし、正直はじめは「みんなで投票チャンネル」の意味ってなんだろう?とか思ってたんですけど、世界中でまとめて集計するなんて、よく考えたら新しいな、って。今思えば、これだけたくさんの世界の方々に楽しんでもらえるようになるわけですから、いろいろ調整した甲斐がありましたね。

 
 

まさに世界とつながる仕事でしたね。

 

ネーミング

 

ネーミングにも気を使いました。最初は「アンケートチャンネル」という名前だったんですが、これだとリサーチ目的に見えてしまう。「国民投票チャンネル」というアイディアもあったのですが、少し堅いかなと。そこで、コンセプトの家族みんなで楽しんでほしいという「みんなで」を頭につけて、「みんなで投票チャンネル」にしました。

 
 

それと、各アンケートに対して自分の予想の的中率から算出される「世の中わかってる度」と、少数派の回答の数によって世の中とのズレを測定する「世の中とのギャップ」という表示があります。「世の中わかってる度」は、もともと「常識理解度」という名前でしたが、こういうアンケートに「常識」というのは不釣り合いだし、もっと気軽な感じを出したかったので、ゆるい感じでひらがなにしてみました(笑)。

 
 

「世の中わかってる度」や「世の中とのギャップ」は、開発過程で追加された機能なんです。これをやるために予想のデータを集める必要がでてきて、サーバの仕様にもろに影響する変更になりましたよね。すみません・・・。

 
 

そろそろ出来上がったかな、という頃に(笑)。でも、やっぱりあったほうが良かったと思います。

 
 

すべてのアンケートは5つの項目にジャンル分けされています。たとえば「海外旅行に行ったことがあるか?」というアンケートは「経験」というジャンルになります。それで世間一般の人が海外旅行に行ったことがある人が多いか、少ないかを予想したときに、予想が当たっていたら世の中がわかっている、ということで「経験」というジャンルの「わかってる度」が増えるんです。一方、「世の中とのギャップ」は、自分は「そば派」だけど、「うどん派」のほうが多数派だったというときに、世の中とギャップがあるとみなして、距離がどんどん延びていくようにしているんです。

 
 

「世の中とのギャップ」も、最初は「世の中わかってる度」と同じように表示させていたのですが、それだと数値が高いほうが良いような気がしてしまう・・・そもそも大きくても小さくてもどちらでもいい数値なので、あれこれ考えていく中で、何かの距離に置き換えてみたらどうだというアイディアが出てきました。漠然と「世の中」という場所を作ってみて、そこからの距離感という表現にしてみたんです。距離が遠くなると、世の中と自分が離れていると不安、なんて思う人もいるかもしれませんが、あまり深刻に考えないでいただければ(笑)。

 

Miiで投票するということ

 

デザインについてですが、最初は簡単なイラストの顔などで手軽さをアピールしよう、という話もあったんです。だけど、何かちょっと物足りなかった。それで、「似顔絵チャンネル」にも関わっているということもあって、自然と「Miiを使ってみたらどうだろう」という話になったんです。最初は顔だけを表示する形だったんですが、やっぱり自分のMiiが動いていると、みんなすごく楽しそうなんですよね。

 
 

それで、体付きで走り回るようにしました。とにかくわかりやすくしようということを一番に考えてつくりましたが、斜めに走っていったり、首をかしげたり、クスッとなる遊びも盛り込んでいます。特にそういった動きの部分は、似顔絵チャンネルで作ったものが活きた部分でした。

 
 

自分のMiiで投票するというのは大きいですよね。意識して作った訳ではないんですが、いざ投票するときにMiiをつかむと、どこか「これは自分の票なんだ、だからしっかり考えないといけない」と思ってしまう不思議な感覚があります。

 
 

これは友達の家族の話なんですが、いちばんはじめに家族で一緒に話をしながら投票したからか、お子さんが一人で結果を見ようとしないそうです。結果を先に見ることもできるのに、一緒に見たいと言ってお父さんが帰るまで待っている。これはMiiで投票するからこそ生まれてくる感覚なのかもしれませんね。

 

アンケートのタイミング

 

続けて楽しんでもらうために、アンケートを配信する間隔も重要でした。

 
 

アンケートは2択で、週に3問という仕様は、わりと早い時期から決まっていました。1日1問という計画もあったのですが、息切れしそうだということで、週3問になったんです。やってみると毎日せかされてやるというわけではなく、間隔があきすぎることもないバランスになったかなと思っています。

 
 

世界共通アンケートは、月1問という設定だったのですが、少なすぎるだろうということで月2問に変更しました。

 
 

スタートを2月14日にしたのは、2/14(木)にダウンロードしてアンケートに答えたら、さっそく翌日の2/15(金)には国内限定アンケート第一回目の結果が見られます。その翌日の2/16(土)には世界共通アンケート第一回の結果が見られて、さらにその翌日の2/17(日)にも国内限定アンケートの第二回の結果が見ることができるからです。15日も、16日も、17日も結果を楽しめるようにしたかったんです。そこで、私たちから14日にダウンロードをスタートしたいと岩田さんに提案したんです。
 
これは宮本(茂)さんの話なんですが、宮本さんの奥さんがインターネットチャンネルがスタートした時は、「Wiiが青く光っていて、何か変だ」と不審がって、宮本さんが家に帰ってくるまで何もせずに待っていたそうなんです。故障してしまったのかと思われたらしくて(笑)。それで、インターネットチャンネルをダウンロードして、「こうやるんだよ」とやってみせたそうです。青く光っていたのは任天堂からお知らせのメッセージが届いているんだよ、と。それが2月14日の「みんなで投票チャンネル」のときは、家に帰ったら奥さんはもう既にダウンロードどころか、投票までしてたという(笑)。

 
 

やっぱり、目の前で今までに経験したことのない新しいことが起こっているという手ごたえがあります。2月14日に突然お客さんの家のWiiの青ランプがフワッと光って、その2日後には、世界中から50万の投票が集まっているということ。これには、単純に感動してしまいました。

 

これからの「みんなで投票チャンネル」

 

実は私がWiiで一番遊びたかったのが「みんなで投票チャンネル」なんです。実際に形になってみて、10万人がうどんとそばについて真剣に予想したり、議論してくれたと思うんです。他愛も無いといえば他愛もないのかもしれないですけれども、地味に壮大なことをしている、というのが自分にとっては嬉しいんです。

 
 

私も中川さんも関さんも、任天堂に入社して初めて担当したのが「似顔絵チャンネル」と、この「みんなで投票チャンネル」なんです。まだ入社して2年も経っていないのに、こんなに世界中の人が触るものを作るってなかなかできない経験をしたなぁ、と。友達には「ゲーム会社に就職したんじゃないの?」「ゲーム作ってるんじゃないの?」って言われたりしますけど(笑)。

 
 

チャンネルって何、みたいな(笑)。

 
 

そうなんです。でも、実際にサービスを開始してみると回りの人たちも楽しんでくれて。これまでじゃあまり考えられなかったような受け入れられ方をするものを作ったんじゃないかと感じました。それだけに、このチャンネルをもっとよくしていきたいですね。たとえば、山のように寄せられるアンケートの提案を、どうにかスムーズにフィードバックする方法を考えたいです。

 
 

その中からどういうものが多いのか、とかを自動的に読み取るシステムがあるとおもしろそうですよね。

 
 

それはサーバ側で対応する話ですね。ちょっといやな予感がしてきました(笑)。

 
 

社内の他のチームから「この投票の仕組みって他のソフトで使えないの?」という話を何度か聞かれているんです。全く考えていなかったんですけど、今後そういう広がりもあるなと思いました。

 
 

ひとまず「みんなで投票チャンネル」という枠ができて、これからどういうアンケートが面白いかが、徐々にわかってくると思うんです。お客さんからも面白い提案がどんどんいただけると思うので、そういったものを積極的に盛り込んでいって、さらに盛り上げていきたいですね。

 

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