社長が訊く
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社長が訊く『New スーパールイージ U』

社長が訊く『New スーパールイージ U』

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目次

1. 『New マリオ 2』に先を越されて

岩田

きょうは
『New スーパールイージ U』についてお訊きします。
ディレクターの竹本さんは、3年かけて開発した
『New スーパーマリオブラザーズ U』(※1)
昨年の12月に発売しましたが、それから休む間もなく
つくり続けることになりましたね。

※1
『New スーパーマリオブラザーズ U』=2012年12月に、Wii Uと同時に発売されたアクションゲーム。

竹本

はい。『New マリオ U』を
Wii Uのローンチ(同時発売)に合わせてつくり、
「その追加コンテンツ(※2)を」、ということで
手塚さんたちといっしょに考えはじめたのが
この『New ルイージ U』です。

竹本1
※2
追加コンテンツ=『New スーパーマリオブラザーズ U』を所有している人が追加できるソフトとして、2013年6月19日から配信開始。また、『New スーパーマリオブラザーズ U』を持っていない人でも遊べるパッケージ版もあり、2013年7月13日から年内限定で発売。

岩田

結果的に、「追加コンテンツ」というよりは、
「新しくもう1本つくった」と言ってもいいくらいの
中身になりましたね?

竹本

そうですね。

手塚

僕は、『New マリオ U』よりも先に出た
3DSの『New スーパーマリオブラザーズ 2』(※3)にも
かかわっていましたので、ずっと『マリオ』を
つくり続けていた感じです(笑)。

手塚2
※3
『New スーパーマリオブラザーズ 2』=2012年7月に、ニンテンドー3DS用ソフトとして発売されたアクションゲーム。

岩田

今回、マリオは登場しませんけどね(笑)。

手塚

あ、そうですね(笑)。

岩田

今回はある意味、
『マリオ』にとっての追加コンテンツのありかたを、
ずっと考え続けた開発だった
と言ってもいいんじゃないでしょうか?

手塚

おっしゃるとおりです。
追加コンテンツについて
こんなに深く考えることになるとは、
思ってもみませんでしたから。

岩田

そもそも最初は
どんな感じではじまったんですか?

手塚

最初はこんな大仕事の予定ではなかったんです。
3DSの『New マリオ 2』でもやったような
サブ的な遊びを拡張していくようなことを
はじめは考えていました。
たとえば、「ブーストモード」のコースを
どんどん追加していくのはどうだろうとか。

岩田

『New マリオ 2』では、
「コインラッシュモード」の専用コースが
追加パック(※4)として遊べますけど、
『New マリオ U』でも同じようなことを
考えたわけですね。

※4
追加パック=「コインラッシュモード」専用のコースをまとめた有料のパックのこと。追加パックは第1~4弾まであり、全10パックが配信されている。くわしくは、『New スーパーマリオブラザーズ 2』ダウンロードできる追加パックについてを参照。

手塚

そうです。
それは申し合わせていたわけではなくって、
偶然だったんですけども・・・。
でも僕の記憶だと、ふたつのタイトルで
「追加でコースを配信する」ということは決めていましたが、
どのような仕様にするかは双方それぞれで考えてもらっていて、
ほんの少しですが、先にアイデアが出たのは、
『New マリオ 2』よりもこっちのほうが早かったんです。

岩田

『New マリオ U』のほうが先だったんですか?

手塚

そうです。あとから
『New マリオ 2』のチームからも
「コインラッシュモードの追加パック」という提案があって、
とりあえず先に発売される『New マリオ 2』のほうの
追加コース企画は進めてもらっていました。
しかし、制作していくうちに、
アイデアのかぶりが気になってきて
『New マリオ U』では別の企画にしようと
考えるようになりました。

岩田

竹本さん、せっかく先に
いいアイデアを考えたのに、
あとから考えた人に先を越されてしまうのは
何か納得がいかない、みたいな(笑)、
そんな気持ちにはならなかったんですか?

竹本

まあ、先に出されてしまうと、
どうしようもないなと(笑)。

岩田

おお、すごく潔いですね(笑)。

竹本

いえいえ(笑)。
でも、もともと追加コースについては
「何で最初から、パッケージソフトの中に入っていないのか?」
と思われてしまいそうで、気になっていたこともあり
「あっちでやるなら、こっちはもっと良い企画にしてやろう」
と前向きに考えました。

竹本2

岩田

『New マリオ 2』の追加パックは、本編を完成させたあとで、
お客さんがどのように遊んでいるのかを分析して
開発をはじめましたし、本編のボリュームについても、
「追加コンテンツがあるから少ない」ということは
ないようにしていたつもりですが、
それでも、「何で最初から入っていないのか?」と
感じられた方もいらっしゃいましたからね。

竹本

はい。それに、アイデアとしては出ていたものの
“「ブーストモード」のコースを追加していく”という方法も、
自分のなかではしっくりきていなかったので
「じゃあ、ほかにいい方法はないかな?」
ということで、検討してみることにしました。

手塚

そこでひとつの実験をはじめまして、
『New マリオ U』のコースを極端に短くして、
難易度を高めるようなものを
まずつくってもらったんです。

岩田

それって、今回の『New ルイージ U』に
「直接」つながっていますね。

手塚

そうですね。

岩田

どうしてコースを短くして、
難しくしようと思ったんですか?

手塚

もともと追加コンテンツは、
『New マリオ U』を遊んだ人を前提にしていて、
「さらにもっと遊びたい」という人のために
つくろうと考えていました。なので、
「ある程度は難易度が高くてもいいよ」
と言ってたんです。

岩田

ゲーム上級者を対象に考えていたんですね?

手塚

そうです。
ただ、難易度が高くて、コースが長ければ
遊んでいてもしんどくなりますので・・・。

岩田

くたくたに疲れてしまいますよね。

手塚

そこで、コースは
短めにする必要があると思いました。

岩田

つまり、遊びのハラハラドキドキの密度を高めて、
その一方で、長く遊んでいると緊張感が続かないので、
短くしよう、という感じだったんですね。

手塚

ええ、そうです。

竹本

僕は手塚さんとは
違う考えかただったんです。

岩田

と言いますと?

竹本

『New マリオ』シリーズは
DS、Wii、3DS、Wii Uという流れで
発売されてきましたけど、シリーズを重ねるごとに
コースがだんだん長くなる傾向にあったんです。

岩田

次第にコースが長くなっているんですか?

竹本

ええ。実際に遊んでくださっている方は、
違和感なく遊んでいただけたと思うんですけど、
実際に比べてみるとそうなんです。
徐々にではあるんですが、長くなっているんです。

岩田

へえ~、そうだったんですね。

竹本

で、今回の追加コンテンツをつくるにあたって、
かつての『マリオ』シリーズを
遊び直してみることにしたんです。
それでファミコンの『マリオ3』(※5)で遊んでみたら、
ものすごく短く感じまして・・・。

※5
『マリオ3』=『スーパーマリオブラザーズ3』。1988年10月に、ファミコン用ソフトとして発売されたアクションゲーム。

岩田

コースの長さがですか?

竹本

はい。むかし遊んだ時は
「短い」なんて、少しも感じることなく
クリアしていたんですけど・・・。

岩田

それはわたしも同じです。

竹本

ところが、いまプレイしてみると、
「えっ、これで終わりなの?」という印象なんです。
でも、その遊びの感覚がとても心地良くて。
ですから、「短いコースにすると物足りないかな?」
とも考えたんですけど、ひとつの山を越えれば、
すぐ先にゴールが見える、という長さが、
じつは何回も遊ぶ動機に
つながるんじゃないかなと考えました。

岩田

短いコースだと、たとえ失敗しても、
そのすぐ先にゴールが見えているので、
「もう1回」という再挑戦したくなるような
気持ちになれるんですね。

竹本

そうです。
そこで、今回の追加コンテンツは
「短いコースにしたいな」と思っていたところに、
たまたま手塚さんから「短いコースで実験しよう」
という提案をいただいたので、
渡りに船だと思いました。

手塚

偶然なんですけどね(笑)。

竹本

ええ(笑)。