社長が訊く
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社長が訊く『Wii U』

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社長が訊く『Wii U』

Wii U GamePad篇

目次

4. 「コントローラーをつくる!」

岩田

ガッツといえば、
伊吹さんにお訊きしたいんですけど、
Wii U GamePadのデザインって、
3回も4回もちゃぶ台が返りましたよね?

伊吹

はい・・・(笑)。

岩田

スライドパッドは押し込み式のスティックに変わるわ、
もっと平らだったのにグリップが付いたりするわ・・・。
操作性向上のための大幅なデザイン変更を
短期間で行わなければならず、
ものすごく大変だったと思うんですが、
思い出深い話をしてもらってもいいでしょうか?

伊吹

はい(笑)。
去年のE3で発表したものが最初のWii U GamePadですけど、
あのとき、デザイングループの意識としては、
「パッドをつくっていきましょう」という意識でした。
リビングルームに置いてあるものとしてふさわしいデザインを、
メインコンセプトとしてやっていたんです。

岩田

あのころは、裏面もすっきりしていましたよね。

伊吹

はい。でも去年のE3後に、
「使いにくい」と言われてしまって・・・。
ただ、僕らもWii U GamePadで
ファミコンの『マリオブラザーズ』を
改めて遊んでみたら、
たしかにうまくできなかったんです。

岩田

たしか当時のデザインでは、
「疲れる」とか「プレイしにくい」とかいう声が、
けっこう出てしまったんですよね。

伊吹

ええ。それだとコントローラーとしてまずいので、
「なんとかしたい」と思っていたときに、ちょうど
「操作性において仕様の改善をしてほしい」
という話が社内から浮上してきました。
僕らもそれに乗ろうと思いました。

岩田

つくった側として、放っておけなかったんですね。

伊吹

はい。このまま出すと後悔してしまうので。
Wii U GamePadは、
世の中にあるようなフラットなパッドデザインがいいのか、
従来のコントローラーのような
操作性を重視したグリップがあるデザインがいいのか、
改めて一から検討をしました。
当時はかなりチーム内でWii U GamePadについてどうあるべきか、
さまざまな意見を出しあいましたね。

岩田

宮本(茂)さんもわたしも、推進者でしたが、
「普通、いまからはやりませんよ?」と、
竹田さんに言われながらの決断でしたね。
たしかに、前のWii U GamePadは長時間持っていると、
指に疲れを感じたりしていましたけど、
そこがすごく変わりました。

伊吹

はい。ここからが長かったんですが、
「使いやすいコントローラーをつくるんだ!」
という意識がある一方で、
「リビングに置けるパッドタイプのデザインがいい」
という意見も残っていたので、
バランスを取るのが大変でした。

岩田

コントローラーとしての使いやすさと、
リビングに置いておくデザイン性とのバランスに
時間がかかったんですね。

伊吹

ええ。改良版で付け加えたグリップも、
じつは最後の最後まで決まりませんでした。
最初はもっとフラットな四角いパッドから
段階をおってグリップを付けたものまで幅広く検討を行いました。
その中で、どれが使いやすいか社内アンケートをとりました。
でも票がわかれてしまって、優劣がつけられなかったんです。

岩田

どうやって最終のグリップ形状を決定したのですか?

Wii U GamePad 背面

伊吹

さまざまな条件を想定して
「長時間プレイしても疲れない」とか、
「小さな手から大きな手まで持ちやすいデザインとは何か」を
追及していきました。
それはもうデザイングループ一丸となって、
みんなが「使いやすい!」と言ってくれるまで
こだわった結果が最終のグリップ形状になります。

岩田

たくさん試して、いまの形に行きついたんですね。

伊吹

はい。四角いパッドの裏に
ちょこんと付けるグリップというのは、
どうやったら持ちやすくなるのか、
正直わからなかったんです。
とりあえずいろいろつくって、手で削って、
粘土で調整して、毎日毎日ずーーーっとくり返して、
それで関係者に見てもらいに持っていったら、
「持ちにくい」って言われるんです・・・。

一同

(笑)

岩田

それはいくら根性があっても、
心が折れそうになりますね・・・。

伊吹

「けっこうこれ、いいんじゃないか!?」と思っても、
「よくない」ってサクッと言われて戻る、
そういうことのくり返しでした。
「あのときが多分、いちばん大変だった時期かなぁ」と思います。

岩田

ちなみにグリップ以外にエネルギーをかけたのはどこですか?

伊吹

軽量化についても大きかったです。
軽量化は設計グループ主体で行いました。
Wii U GamePadは、軽量化のためにさまざまな工夫をしています。
液晶保護のために「シャーシ」と呼ばれる部品があるのですが、
開発当初は、アルミやマグネシウムなどの材質で検討していました。
ですが最終的にはアルミやマグネシウムではなく
さらに軽量化をはかるために「樹脂シャーシ」を使っています。
そうやって1g、2gを削っていきました。

岩田

強度上、問題が出ない範囲で、
ギリギリまで軽量化したんですね。
「コントローラーとして500gは重い」と
感じておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、
まさに「塵も積もれば」で減らしていった結果、
当初よりもずいぶん、軽くなりました。

伊吹

はい。デザインの変更を提案するときは、必ず
「何g増えるか」を添えて提案しないとダメだったんです。
「こういうデザインしたいんですけど」
「何g増えるんだ?」
「5g増えます」
「ダメ!!」って言われます。

一同

(笑)

伊吹

5gって100円玉くらいの重さなんですけど(笑)。
Wii U GamePadの目標の重量が500gぐらいだったので、
500何gまで切迫していたときは、
重くなる提案は何をしてもダメでした。

岩田

コントローラーや携帯ゲーム機をつくるときって、
いつもすごい量の試行錯誤をしているんですが、
今回は、その中でも記録的な感じがしています。

伊吹

あー、そうかもしれません(笑)。
Wii Uのプロジェクトから入ってきている社員さんには、
「いつもはこんなに大変じゃないんだよ!」
って、先輩たちがみんな、フォローしていましたから。
多分、どこのチームもそうだったと思います(笑)。

岩田

先輩たちが若い者をなぐさめながら、
2年間、なんとか乗りきったんですね。
みなさん、後輩たちに声はかけていました?

一同

はい、(口々に)かけていました(笑)。