花といきもの立体図鑑

2012年 11月号

木枯らしに木々の葉も散り急ぎ、あたりが冬景色へと移り変わっていきます。けれども、こんな時期こそ自然観察のチャンスです。生い茂った葉に隠れて気づかなかったいきものや、植物の姿が発見できるかもしれません。

今月のおいしい話題

レンコン(ハス)

※ニンテンドー3DSでご覧の方は、上記写真をタッチペンで長押すると、立体写真をご覧いただけます。

レンコンはハスの地下茎です。ハスは夏のあいだ水上で美しい花を咲かせながら、泥の中では地下茎を伸ばし、秋になるとその地下茎を肥大させて冬越しにそなえます。ですからレンコンは秋の終わりごろに収穫されるのです。

レンコン料理といえば、辛子蓮根(からしれんこん)です。レンコンの穴に辛子味噌を詰め、衣をつけて揚げた熊本の名物料理で、病弱だった肥後(ひご)藩主細川忠利公のため、玄宅(げんたく)というお坊さんが工夫したのが始まりといわれています。輪切りにすると切り口が細川家の九曜紋(くようもん)によく似ていたため、家中で大切に受け継がれてきたといいます。

泥の中で清らかに花開くことから、仏教ではハスを神聖な花としています。このハスの花とスイレンはとてもよく似ていますね。その違いがわかりますか?英語ではどちらもロータス(lotus)と呼ばれますが、ハスは水の上に葉や茎を伸ばすのに対して、スイレンの葉は水面に浮かんでいます。ハスの葉は切れ込みがなく、表面は水をよくはじくなど、よく見ると違いはいろいろとあります。でも、なにより明確なのがレンコンです。スイレンにはレンコンのような太くて穴のあいた地下茎はないのです。

このレンコンを食い荒らすのが、外来種の貝スクミリンゴガイです。ぜひこの有害な貝について調べてみてください。「バラエティ検索」の「名前から検索」でわかりますよ。図鑑ページに載っている別名で、「あっ、あれか!」とその正体が判明するはずです。

さがしてみよう(花編)

ハンノキ

11月ごろから冬にかけて地味な花をつける樹木にハンノキがあります。湿地や川岸に好んで生える植物です。「バラエティ検索」の「環境から検索」を選んで、秋の「野原・河川敷」や「川・池」を見ればハンノキの花が見つかるかもしれません。コラム「沼地や湿地の植物」には「沼地や湿地に生える植物のほとんどは夏に花をつける」とありますが、ハンノキは例外です。

緑色の小さな花のかげに妖精が隠れているといって、ヨーロッパでは「妖精の木」として大事にされています。だから切り倒されることなく大きく育っています。ハンノキは栄養分の少ない湿地にありながら大木に生長するので、やせた土地を肥沃(ひよく)にする肥料木として利用されます。その秘密は根に共生する菌類です。詳しくはコラム「根粒菌との共生」をのぞいてみてください。

さがしてみよう(いきもの編)

ノシメトンボ

ノシメトンボは街中でも晩秋まで姿が見られる赤トンボの1種です。羽の先だけに黒い模様があるのが目印です。公園の池やだれも泳いでいない学校のプールの上などで群れを作り、飛びながら卵を産みます。春になればこの卵が孵化(ふか)してヤゴに成長し、初夏には成虫となって空に飛びたちます。このようにトンボの多くは卵やヤゴの状態で越冬しますが、ホソミオツネントンボなどは成虫の姿のままで冬を越します。ほかの昆虫たちはどうしているでしょう?コラム「昆虫の冬越し」でチェックしてみてください。

季節のことば

酉(とり)の市

古代中国では、日付に干支(えと)をあてはめた暦(こよみ)を用いていました。土用の丑(うし)の日や戌(いぬ)の日の安産祈願などのならわしもその名残りですね。11月の酉の日には、全国の鷲(おおとり)(大鳥)神社を中心に「酉の市」が行われます。日本武尊(やまとたけるのみこと)が戦勝祈願(きがん)をした日とか、鷲(わし)に乗った菩薩(ぼさつ)さまが現れた日などと説明されますが、今日では開運や商売繁盛の祈願をする祭りとしてにぎわっています。

今年は8日が一の酉、20日が二の酉の日です。縁起物の熊手(くまで)は、福をわしづかみにする鷲(わし)の足形になぞらえたもの。御利益がありそうですね。

今月の情報はいかがでしたか?来月は、和のアロマいっぱいの果実が登場します。どうぞお楽しみに!

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