石原さんの奥さんも夢中になっているという
『乱戦！ポケモンスクランブル』ですが、
どうして、その続編を3DSでつくろうと思ったんですか？

やっぱり『乱戦！ポケモンスクランブル』 には
それなりの手ごたえがあって、
「次をどうするか？」ということをずっと考えていたんです。
で、僕としてはニンテンドー3DSという
新しいハンドヘルドで『ポケモンスクランブル』を遊べるようにしたいと。

ポケモン初の3DSのパッケージソフトとして出そうと思ったんですね。

そうです。
なぜか知らないんですけど、
アンブレラには、「初の」というのが
けっこう回ってくることが多いんですよね（笑）。

（笑）

ニンテンドーDSのときの
『ポケモンダッシュ』^（※4）もそうでしたし。

ハードがまだ完成していなくて、
まだいわば“生煮え”のうちに「触ってみませんか？」と言うと、
すごく楽しそうに触るような人たちだから・・・ですよね（笑）。

はい。もう喜んで（笑）。

だから任天堂側も、アンブレラさんには
“生煮え”のうちに新しいハードの提案をすることが多いんです。
ただ、そこで『乱戦！ポケモンスクランブル』という
土台があったとはいえ、
3DSでつくることになったわけですけど、
最初はどんなことを考えましたか？

じつは、『乱戦！ポケモンスクランブル』の続編として、
Wii用のプロトタイプ（試作）をつくってはいたんです。
ただ、3DSで同じようなことをしようとすると、
最初は思い通りに動いてくれなかったんです。

やっぱり新しい機械ですからね。

はい。そこでけっこうな試行錯誤がありました。
ただ、3DSでいきなり新規タイトルをつくりはじめたら、
おそらく、ここまで無理はせずに、
「これくらいの表現ができるから、それに合わせてつくろう」
と、安易な判断をしていたかもしれません。

それはつまり、いきなり3DSで新作をつくろうとしたら、
低いハードルでも満足したかもしれないけど、
先行してWiiでつくったプロトタイプがあったので、
めざす目標が高くなった、ということなんですね。

そうです。
ですから、最初の頃はプログラマーもデザイナーも、
「これなら『ポケモンスクランブル』だ」
と言えるような画面が出せるようになるまで、
ものすごくがんばっていました。

ちなみに、Wiiで遊べていたゲームを
外でも遊べる携帯機で出すということに関しては、
どんなことを考えてつくりはじめたんですか？

やっぱりハンドヘルドですので
「さっとはじめられて、パッと休息して」みたいな
遊び方ができるようにしようと考えました。

もともと『乱戦！ポケモンスクランブル』も
そういったゲームでしたが、
今回はその部分をより意識してつくろうと考えたんですね。

そうです。
「１５分くらいをひとつの単位に遊んで、ちょっと休憩して」
ということを、何度も繰り返したくなるように調整しようと。
その結果、２段目、３段目と新しいステージに入っても、
「違う次元の遊びがはじまった」という新鮮な気持ちになって
繰り返し遊びたくなるんです。
そこは『乱戦！ポケモンスクランブル』から
大きく進化した部分だと思います。

それに、ハンドヘルドになるからといって、
コンパクトなゲームにするのではなく、
「ボリューム感のあるもの」にしたかったんです。
やっぱりパッケージソフトとして
お店で売る商品なわけですから。

はい。

そこで、Wiiウェアのときは
「バトルロイヤル」という、ひとつのモードだけだったのを
２つ増やして、３つのモードで遊べるようにしました。
 
たくさんのポケモンが一斉にバトルをして
最後の１匹になるまで戦う「バトルロイヤル」は、
前作から引き続き遊べますが、さらに新しいモードとして、
３匹１組になって戦う「 チームバトル」を追加しました。
このモードでは、自分が操作する１匹のポケモン以外は、
自動的に戦ってくれるんです。

なので「いかにいいポケモンを仲間にするか」が大事なんですね。

そうです。
で、追加したもうひとつが「 とつげきバトル」で、
数十匹もの敵のポケモンたちと
次々にぶつかって戦うモードです。

そもそもゲームというものは、
続編をつくっていくと次第に複雑になるじゃないですか。

まあ、複雑にもなるし、
それが難しさにつながっていくんですよね。

ですから「最初は楽に遊べたけど、
だんだん難しくなっていくような、
そんなゲームにだけはしないでほしい」
と言い続けることも、僕の今回の仕事でした。

はい（笑）。

でも、「チームバトル」を入れたことで
楽に遊べるようになりましたし、
「とつげきバトル」に至っては、もっと楽になり、
この２つのモードで、わかりやすい遊びを
提供することができたと思います。

それは、最初に石原さんが言った、
「万人が遊べるアクションゲーム」という
目標があるからなんですね。

そうです。
誰にでも遊べるところが
『ポケモンスクランブル』のいいところだと
僕は思っているので、そのいいところが
パッケージソフトになった結果、
複雑になったり、難しくならないようにする、
ということをずっと見ていました。

ちなみに「誰でも遊べる」と言うのはかんたんだし、
「難易度を下げる」というのも
ヌルくすれば易しくなるんですけど、
ただヌルくしたゲームはつまらないわけですよね。

そうですね。

そのへんのバランスはどのようにとったんですか？

先ほども言いましたように、
遊んでいるうちに、たくさんのポケモンの技が
次第に見極められるようになっていくんです。
ポケモンカード^（※5）で、「通り名」というのがあって、
たとえば「わるいリザードン」とかいましたよね。

はいはい。

その「通り名」は
『乱戦！ポケモンスクランブル』のときにも使っていたんですが、
なかには速く動いたり、仲間を強くするような「通り名」があって、
自分が求めている「通り名」が付いたポケモンを
どれだけ集められるか、ということも大事になってくるんです。

つまり、松村さんが言うところの“どつきあい”をしながら、
いい「通り名」の付いたポケモンを探し出し、集めていくわけですね。

はい（笑）。

その「通り名」のポケモンは何種類くらいいるんですか？

今回は『ポケットモンスターブラック・ホワイト』^（※6）の
新しいポケモンも、もちろん追加されていますので、
ポケモンだけで６００匹以上出るのですが、
「通り名」の組み合わせで言いますと、
３００億通りくらいになります。

３００億通り！？

だからポケモンとの出会いは
“一期一会”のようなものなんです。

なので、とてもいいポケモンを引き当てたときは、
すごく大事にしてほしいんです。

たとえば「こいつが仲間になったから、
こういうチームをつくろう」とか、
自分好みの戦術が組み立てられるようになります。

まるでポケモンカードで
デッキを組むような感じに似ていますね。

そうなんです。
たとえば「チームバトル」だと、
３匹のポケモンを連れていきますので、
どういうチームをつくるかが重要になるんです。

すると、いろんな遊び方ができるんですね。

そうです。
たとえば、敵のなかに突っこんでいきたくない人にとっては、
攻撃的なポケモンを仲間に選んで
自分は援護に回ったりとか・・・。

自分以外の仲間は、自動で賢く動いてくれるので、
他力本願にして、自分は後ろのほうで、とか・・・。

ときどき仲間のダメージの回復をしながら、
自分だけは安全な場所で
ケガしないようにも遊べるんですね（笑）。

ええ（笑）、そういう遊び方も自由にできます。