社長が訊く
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社長が訊く『わがままファッション GIRLS MODE よくばり宣言!』

社長が訊く『わがままファッション GIRLS MODE よくばり宣言!』

目次

3. “戦闘ゲーム”のように遊ぶ

岩田

服部さんが両手を広げるくらい
長いフローチャートを
どうしてつくる必要があったんですか?

山上

前作のときのコーディネートの判定システムは
比較的シンプルだったものですから、
「こうすれば、お客さんは全部買っていく」みたいに、
コツがわかれば、読めるようなところもあったんです。
今作ではなんとかそこを払拭(ふっしょく)したいと・・・。

服部

システム的に判定しようとすると、どうしても
「統一されたコーディネートが素晴らしい」
ということになってしまうんです。
でも実際にプロの方がつくられるコーディネートは
そうじゃないんです。
たとえば統一されたコーディネートの中に、
ちょっと“遊び”を入れていたり、
1点はずしたものが入っていたりとかして・・・。

岩田

最初に田村さんは、
「ファッションは面白いか、面白くないか」
と言っていたわけですから、
「統一されているものだと面白くない」
ということになるんですね。

服部

ストレートなものだけじゃ、面白くないんですよね。

田村

そうです。

服部

でも“遊び”を入れて、
コーディネートしたものを
まともにシステムにかけてしまうと、
そういうファッションは
「ダメ、統一されていない」と判定されてしまうんです。
ところが、人間の感覚から見ると、
できあがっているコーディネートは素晴らしいわけで、
この「“遊び”の部分をいかに許容するのか?」
という点が肝だと考えて、
システム的な調整で最後まで試行錯誤しました。

田村

微妙なおしゃれ度は
コンピューターにはなかなかわからないですから、
そこは本当に難しかったでしょうね。

服部

はい、本当に。
「現実の女の子たちの感覚に、
 判定ルーチンの挙動をいかに近づけるか」
ということに本当に苦労しました。
たとえば、わたしもついつい使っちゃうんですが・・・
女性がよく使う言葉に、
“カワイイ”というのがあると思うんです。
「これもカワイイ、あれもカワイイ」と言うんですけど、
それぞれの“カワイイ”の意味が
じつはぜんぜん違うんです。

岩田

でも、ほめるにはとても便利な言葉なんですよね。

服部

そうなんです。
だから全部「カワイイ」で片づいちゃうんですけど、
よくよく分析してみると、
このゲームの中でも、たとえば、
「ガーリー(※6)でカワイイ」と言っても、
大人っぽいガーリーから、ポップなガーリー、
それにエスニックな要素の入ったガーリーまで、
本当にいろいろなものがあって、前作のときは
そこまで実現できなかったんですけど、
「そういった複数の要素を組み合わせて考えていかないと
 “人間味”というものは出ないんだな」ということを、
今回、ファッションのプロの方たちと
仕事しながら気づいたんです。

※6
ガーリー=女の子っぽいかわいらしさを表現したファッションのこと。

山上

そこで、そういったあいまいな判断というものを
プログラムに組み込んでいった結果、
微妙に1点はずしたものとか、
わざと少しはずした“遊び”のあるコーデまで
許容できる判定システムを、
今回はつくることができました。

服部

でも、もちろん何でもかんでもOK! としてしまっては
ゲームの面白さが損なわれてしまいますし、
ファッションとしてもおかしなことになってしまいますから、
明らかにおかしなコーディネートにはNGを出さなくてはいけません。
この矛盾する問題を解決するために、
先ほどお話しした長ーいフローチャートが必要だったわけです。

岩田

そうやって“人間味”のある
判定ができるようにしつつ、
今回は新たにメンズが加わりましたよね。

山上

はい。

岩田

メンズの話は開発の途中から出てきたんですか?

山上

いえ、かなり最初のほうです。

佐々木

そうですね。
最初の段階からメンズをつくることは
決まっていましたので、早くから
アイテムづくりには着手していました。

岩田

メンズって、ガールズに対して、
どのくらいのエネルギーをかけられてつくったんですか?

佐々木

正直に言いますと、
女性が主体なので、最初はオマケの扱いで、
添え物のような気持ちでつくっていました。

岩田

オマケと言われると、
気を悪くする男性の方もいらっしゃるかもしれませんけど、
主体である女性を引き立たせる存在として
メンズを考えていたんですね。

佐々木

そうなんです。
ところが、ペアで並べてみたりすると、
「メンズのほうもいけるんじゃないか」と、
開発途中から手ごたえを感じるようになったんです。
そこで、キャラクターのつくりとか、
男性ならではの個性の出しかたとか、
そういうところにかなり力を割くようになりました。

山上

でも、じつは男の服って、
バリエーションが少ないんです。

岩田

女性の服に比べたら、そうですよね。

山上

男用の服は、形も女性に比べると種類が少なくて。
しかも、本作に登場するのは、
女性にとって「いっしょにいたらいいな」という、
おしゃれな男性なので、
そこで除外される服もありまして・・・。

服部

そうなんです。
ここに登場する服は、男性に人気がある
自分が着たい服じゃないんです。

岩田

“女性から見て彼氏に着てほしい服”
なんですね。

服部

そうです。
男性が自分で着たい服と、
女性が彼氏に着てほしい服は
やっぱりちょっと違うところがあって・・・。
なので、結果的にこのソフトに入っているのは、
いわゆる“モテ服”ばかりになりました。

岩田

ちなみに前作にはメンズが入っていなくて、
メインターゲットを女性にしたゲームにもかかわらず、
それでも遊んでくださった男性の方も多かったんです。
男性にとっての『ガールズモード』の楽しみって
どんなところにあるんでしょうか?

山上

わたしなりの楽しみかたを言いますと、
自分はゲームの中でお店にやって来るお客さんは
RPGやシミュレーションゲームの
“敵”だと思っているんです。

岩田

お客さんが“敵”ですか? (笑)

山上

はい。で、お客さんからの
「予算はいくらで、どんなタイプの洋服で」
というリクエストは“攻撃”なんです。
その“攻撃”に対して、店員である自分は、
どのように応えるかという・・・。

岩田

まるで“戦闘ゲーム”ですね(笑)。

山上

そうです。
お客さんの「予算は2万で」という“攻撃”に対して、
「どう応えてやろうか」と、自分の手持ちの“武器”を・・・
つまりファッションアイテムをダーッと見て、
幸いなことに制限時間がないものですから、
長考に入って、それこそいろんなことを考えて、
最後の最後で「撃てーーー!」という感じで
ドンと出すと。

岩田

“売って”るんじゃなくて、
“撃って”るんですね(笑)。

一同

(笑)

山上

そこでお客さんが「買うわ」って言ってくれたら、
(ガッツポーズをしながら)
「よしっ! 倒したー!」みたいに・・・。

岩田

倒すんですか? お客さんを?

山上

するとお金がチーンと入ってスコアゲット!
・・・みたいな感じで遊んでいます。

岩田

服部さん、女性としてどう思いますか?

服部

(がっくり肩を落としながら)・・・・・・。

一同

(笑)