社長が訊く
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社長が訊く『新・光神話 パルテナの鏡』

社長が訊く『新・光神話 パルテナの鏡』

目次

8. 「ぜひ1度でも、対戦を」

岩田

では、最後にお客さんへのメッセージを。

桜井

あ・・・そうか、その質問ですよね(笑)。
当然、訊かれるはずのことなのに、
なんでわたしは考えていなかったんでしょう。

岩田

(笑)。とはいえ、もともと桜井さんは、
「ここだけを見てください」というアピールの仕方を
しないタイプでしょうけど。

桜井

あー、しないですねー(笑)。

岩田

それでも、『パルテナ』のお客さんに対して、
伝えておきたいメッセージがあるとしたら?

桜井

やっぱりそれぞれのお客さんが、
それぞれの楽しみ方ができるということが、
何よりだと思っています。

岩田

ああ、それは、ちょうど20年前の
『星のカービィ』(※17)からはじまった
桜井さんのゲームづくりに共通したテーマですよね。

※18
『星のカービィ』=1992年4月に、ゲームボーイ用ソフトとして発売された『カービィ』シリーズ第1作目。

桜井

そうですね。
ただ今回は、決められたシナリオや
決まったところを進んでいく
レールシューターみたいなものもありますけれど。

岩田

空中戦といっても、
空を自由に飛べるわけではないんですよね。

桜井

はい。けれども、
人によって遊び心地や感じ方が
大きく違ってくるんじゃないかな、
という気がしています。
それと同時に、お客さんのほうも、
このソフトを遊ぶために
戦法をいろいろ工夫してくれるんじゃないかと、
わたしは信じています。

岩田

人それぞれ自由に戦法が選べるので、
戦略に個性が出てくるんですね。

桜井

ですから、1人用ばかり
遊ばれるお客さんもいると思うんですけど・・・。

岩田

1人用だけでも濃いわけですからね。

桜井

でも、そんな人も、
ぜひ1度でも、対戦を遊んでほしいと思います。

岩田

そうすると、違いがわかるということですね。

桜井

ええ。勝っても負けてもいいですから、
対戦をたくさん経験すればするほど、
いろいろなものが見えてくるんじゃないかなと思います。

岩田

対戦をすると、自分が発見していなかった
このゲームのなかにある、いろんな作戦や
戦法といったものの断面が見えてきて、
それでさらに面白くなるということですよね。

桜井

そこに気づいていただければ
つくり手としては、すごくうれしいです。

岩田

はい。・・・それにしても長い開発でした。

桜井

最初はニンテンドー3DSの開発機材がなくて
PCでつくっていたくらいですから。
あ、Wiiでつくっていたときもありました(笑)。

岩田

それくらいニンテンドー3DSのタイトルのなかでも、
早い時期に開発がスタートしたんですよね。

桜井

真っ先に企画書やシナリオを書いて、
プロジェクトソラが立ち上がっていないときに
小規模メンバーで空中戦と地上戦の試作映像をつくったり。

岩田

その映像は、新しい開発スタッフが
あとからどんどん増えてくることに備えて、
「こういうものをつくるんだ!」と
みんなで意識を共有するためのものだったんですよね。

桜井

そうです。できあがったものは
見てのとおり、完成版と大きくイメージを変えていません。
企画当初から方針にブレはなかったということですが、
ニンテンドー3DSに落とし込むため、
パフォーマンスを最大限に引き出すために
さまざまな労力をかけています。

岩田

開発が先行していた分、
それをニンテンドー3DSでしっかり動かすのに
逆にずいぶんと時間がかかってしまいましたね。
でも、それをやりきった手応えがあります。
本当に長い間、お疲れさまでした。
今日はいろいろな話が訊けてよかったです。

桜井

はい、こちらこそ、ありがとうございました。