宮本さんが「ぜんぜん違うものをつくらなあかん」と、
感じたのは、たとえばどんなところなんですか？

猫を飼いはじめて、
「ああ、そうなのか」という発見がいろいろありまして、
そもそも犬と猫の基本の動きはぜんぜん違うんです。

はい。

たとえば、離れたところに
好きなものが置いてあったとき、
犬の場合はまっすぐそこに向かって行くんですね。
ところが猫の場合は、しばらく止まって観察するんです。
で、ちらっちらっと見ながらも、気にしていないふりをして、
ちょっとずつ近寄って行ってから、
最後にダッと飛びつくんです。

そうか、獲物への接し方なんですね。
そうなると、基本の動きがぜんぜん違いますよね。

そうなんです。だから今回のゲームでも、
たとえばビーチボールなんかのアイテムを投げると、
犬はすぐにダーッと駆け寄るんですけど、
猫はジーッと見ていて、それからダダッと駆け寄るみたいな。

猫はもともとハンターなんでしょうね。
それに、すり寄るというのも猫独特の動きなんです。

たしかに、猫は好きなものがあると
身体をしなやかに曲げながら、すり寄ってきますよね。

それってマーキングらしいんです。
犬の場合は、「ここはオレの領地だ」と宣言するために、
おしっこでマーキングしますよね。
ところが猫の場合は、すり寄って、自分の臭いを付けて、
「ワタシのもの」と言っているらしいんです。

ほう。

これは聞きかじりなんですけど、
お気に入りのものには、自分の臭いをこすりつけて、
親愛の表現をしているそうなんです。

だから、仲のよいもの同士がすり寄ったりするんですね。

はい。そういう関係を、
ゲームのなかでも見せられないだろうかと・・・。

ですから、犬と猫のアニメーションなども、
どれくらい共通でいけるんだろう、
ということを考えながらつくっていたんですけど、
最終的にはすべてが違うものになってしまったくらい、
犬と猫の動きが違うんです。

まあ、とは言っても、似てるところもあるんですけどね。
しっぽの関節の入り方とか。
けど、背骨の曲がり方とかはぜんぜん違うんです。
だから、猫にお座りのポーズをさせても、
「これ、どうみても犬でしょう」と（笑）。

（笑）

あと、猫のしっぽの動きも・・・
（手でうねるような仕草をしながら）
こんなふうにゆっくりと動きますよね。

犬は元気よくしっぽを振りますからね。

それに、寝すがたとかも違いますしね。
（身体をくにゃっとさせながら両手を挙げて）
こーんな寝すがたを、猫はするんです。

（笑）

だから、ゲームもそこまで表現しないと、
猫好きの人たちから猫らしいと思ってもらえないと。

おそらく猫を飼っている人が見たら、
犬と共通のポーズは
一発で見破ってしまうわけですね。

ええ。だから、猫らしく見せることに
ものすごく手がかかるんです。
あと、実際に猫を飼いはじめていちばん困ったのは家具なんです。
家具を引っかかれるというのは猫を飼うときの大きな課題で、
犬はしつけられるんですけど、猫はある程度のしつけはできても、
わりと奔放なんです。

犬は人に対して従順ですけど、
猫はマイペースなところがありますよね。

しかも、猫は人目を盗んでやるんです。
まあ、それは習性なのでしょうがないんですけど、
猫は高いところにどんどん上がるんですね。
犬の場合は、大事なものをちょっと高いところにあげておけば、
それで大丈夫なんですけど、猫はそうはいかないので、
部屋の造りに対する考え方も変わってしまうと。

犬だけだったらつくらなくていいものでも、
猫がちょっと高いところに、ひょいっと跳び乗れるようにするために、
大量につくらないといけないんですね。

そうなんです。だから大量につくりました。
猫がピョンと登れるようなキャットタワーとか。

高さを表現するようになると、
カメラとかの処理も変わりますよね。

そうなんです。

だから、最初に考えたよりもだいぶ大変になったんですね。

スタッフからも「猫を入れたのが大変でした」と
さんざん言われました（笑）。

それに猫だけじゃなく、犬自体のモーションの種類も
今回はものすごく増えているんです。

しかも、社内では
「ふさふさのもふもふ」とか言われているように、
毛並みがすごくよくなりましたよね。

ええ。ゲームキューブで試作していたときも
毛の生えた犬がいたんですけど・・・。

ああ、そもそも宮本さんが
『nintendogs』のようなゲームをつくろうとしていたときは、
最初にゲームキューブで実験をされていたんですよね。
ちなみに、それがなくなって、
DS向けになったのはどうしてだったんですか？

もともとはテレビのなかで
ペットを飼えたらうれしいだろうと思って
はじめた企画なんですけど、
圧倒的にDSのハードのほうが向いていると思ったんです。

たしかに、DSだと
タッチペンでなでなですることもできますしね。

ただ、DSのときは毛並みまで
表現することはできなかったんですけど、
今度はマシンパワーが上がったので、
「ふさふさのもふもふ」に戻すことができました（笑）。
しかも、３Ｄなので、奥に回り込むように
なでなですることもできるんです。

紺野さん、そのように
「ふさふさのもふもふ」になった犬ですが、
今回はそれぞれの個性まで表現しているそうですね。

はい。たとえば大きさだったり、足の長さだったり、
太っていたり、やせていたりと、
体型をちょっと変化させるようにしまして、
色が同じゴールデン・レトリーバーでも、
大きさが若干違っていたり、
「足はうちの子のほうが長い」みたいなことが、
ちゃんとわかるようになっています。

すると、同じゴールデン・レトリーバーや、
同じ柴犬だったりが、１匹１匹ちょっとずつ違って、
「うちの子はこれなんだ」ということが、
前作以上に感じられるようになったんですね。

そのとおりです。

あと、性格もね。

そうですね。性格も変えて個性を出したいと。
たとえばちょっと内気な子がいれば元気な子もいて、
警戒心が強い犬もいれば人なつっこい犬もいて、
何々は好きだけど何々は嫌いみたいに、
性格の違いをちゃんと出したいと思いました。

でも、「性格」って、一口でさらっと言いますけど、
実現するのはけっこう大変ですよね。

そうなんです。
なので、その部分の調整に関しては、
開発が終了する最後の最後まで行っていました。

あと犬種の図鑑のように種類が多いです。

犬種の図鑑、ですか？

いや、すみません、正確に言うと図鑑ではないんですけど、
同じ犬種でも模様と色の違いで、種類が分かれていまして、
それを１匹ずつ選んで見られるようになっているので、
遊んでいただくと犬種についてはかなり詳しくなると思います。

一口にシェパードと言っても
いろんな犬種があるそうですね。

そうなんです。標準のシェパードのなかでも、
ウルフタイプがいたりとか、
犬によっては４種類くらいいたりします。
人気のトイ・プードルのカラーの違いとかも
これでよくわかるようになります。

だから、見ているだけで犬種に詳しくなると思います。

シェルティ（シェットランド・シープドッグ）も３種類くらいいて。
うちで飼っているシェルティは
トライカラーという犬種なんですけど、
それに近いのがいるので、僕は今回、それを飼うつもりです（笑）。