CSRレポート > 2016年アーカイブ > ゲームの新たな可能性の追求

CSRレポート

New Potential of Video Games

お客様とともに生み出す新しい可能性

お客様の笑顔創造のため、任天堂ではゲームの新たな可能性を追求しています。
『スーパーマリオメーカー』は自分でコースをつくり、
それを世界中の人が楽しめる、新しい遊び方のゲームです。

任天堂株式会社 企画制作部(左)

山下 善一

『スーパーマリオ64DS』や『Wii Sports』などの開発に携わる。『スーパーマリオメーカー』ではシニアディレクターを務める。

任天堂株式会社 企画制作部(右)

押野 洋介

『Wiiであそぶ ピクミン』シリーズや『nintendogs + cats』『New スーパーマリオブラザーズ Wii』などの開発に携わる。『スーパーマリオメーカー』ではディレクターを務める。

コースをつくる楽しさを、たくさんの人に届けたい。

なりたい職業ランキングでも上位にあがる「ゲーム開発者」という仕事の醍醐味は、自分たちの創造で笑顔や新しい経験を生み出すということ。
この楽しさを、誰でも簡単に体験することができるのがWii U用『スーパーマリオメーカー』です。
ここでは『スーパーマリオメーカー』の開発に携わった2人が、開発の経緯や楽しみ方、開発にかけた想い、これからのゲームの可能性について語ります。

『スーパーマリオメーカー』とは?

1985年に発売した横スクロール型のアクションゲーム『スーパーマリオブラザーズ』は、全世界で約4,000万本を売り上げ、家庭用ビデオゲームが世界中に広がりました。 それから30年という節目の年にあたる2015年に発売された『スーパーマリオメーカー』は、横スクロールのコースを遊んで楽しむだけでなく、自分で簡単に落書きするような感覚で「ゲームづくり」も楽しめるWii U用ソフトウェアです。

『スーパーマリオメーカー』が開発された経緯を教えてください。

押野

 社内にはゲーム開発を効率的に行うための開発ツールを作成する専任のチームがあります。そのチームが『スーパーマリオ』というゲームのコースを、もっと簡単に開発できないか模索する中で生み出されたのがこのソフトの原型でした。

山下

 そのチームでは、これまでパソコン上で行っていた『スーパーマリオ』のコースづくりを、Wii U上で簡単に実現できないか実験していたそうです。パソコン上で入力した指示、たとえば「このキャラクターをコース上のここに置いて動かす」という指示は、パソコンのデータを変換してゲーム機側に送り、ゲーム機側でそれを読み込んでやっと動きます。どんなに早くても1分程かかっていました。でも、Wii U上で動かせる新しい開発ツールでは、つくってから遊ぶまでほとんどタイムラグがなく、指示した時点で思いどおりに動いていたんです。それを見ていたゲーム開発者がこれは商品化できるのではと考え、私たちが商品化を引き継ぎました。

押野

 私自身、初めてこの実験用の開発ツールに触ったときに、手ごたえがすごく良いと感じました。これまで我々のようなソフトウェア開発者しかできなかったコースづくりがゲーム機で簡単にできるのを見て、面白い商品にすることができそうだなと感じました。
 また、実際にいろんな人に触ってもらうと、作成者が思い思いのコースをつくりあげることで、今までに見たことがない『スーパーマリオ』のコースがたくさんできたんです。そのコースを見たときに、面白く感じましたし、周りで見ていた人にもその面白さは一目で伝わったと思います。

山下

 簡単にコースをつくれて、すぐに誰かに試してもらえる。そういった、このソフトの核となる部分が既にしっかりできていたので、その核を大切にしながら、商品化に向けてそれぞれの要素を磨いていきました。

開発用のツールに商品としての魅力を備えていくために気をつけたポイントは何ですか。

押野

 コースをつくる人たちの自由な発想を実現できるように、配置できる敵や障害物の数を当初よりもずいぶん増やしていきました。一方で「小学生でも説明書を見ないで簡単にコースがつくれるように」ということを基準にしていましたので、要素を増やすことで複雑になりすぎないようにバランスをとっていきました。

山下

 自分たちが『スーパーマリオ』シリーズを遊んできた側でしたので、商品で実現できていることはできる限り全部やれるようにしたいと思っていました。しかし、すべてを実現しようとするとどうしても複雑になってしまいます。たとえば『スーパーマリオ』シリーズでは画面を縦にもスクロールできるのですが、縦へのスクロールも可能にしてしまうと、コースづくりが複雑なものになってしまうため、どの程度が適切なのかを実際につくりながら決めていきました。

押野

 ほかには、『スーパーマリオ』シリーズでは土管に入ることによりコース内の別のエリア(サブエリア)へ移動できるのですが、普段はパソコン上で処理している複雑なエリアの切り替えをどうすればわかりやすく見せることができるのか悩みました。最終的に、マリオを土管の中に入れるとサブエリアに移動するようにすることで、これは違うところに来たんだなとお客様に思ってもらえるようにしました。今まで『スーパーマリオ』シリーズを遊んでくださったお客様も満足できる範囲で、かつ、小学校低学年くらいの子が説明書を読まなくても遊べるものを模索しました。

つくる

パレットを開いて配置したいパーツを選択。つくったコースはすぐに試し、世界中の人と共有することができる。

あそぶ

インターネットに接続すれば世界中の人がつくったコースを遊ぶことができる。

『スーパーマリオメーカー』を通じてどういったことが起きてほしいですか。

押野

 このソフトを通じて、新しいコミュニケーションが生まれてほしいと思っています。このソフトはネットワークにつなぐことで世界中の人に自分のつくったコースを遊んでもらうことができます。アメリカに住む人がつくったコースを日本に住む人が遊び、コメントをする。言葉はわからないかもしれないけれど、お互いに「いいね」を送り合うことで、コミュニケーションをとることができます。実際に、違う国の人同士がお互いのコースを遊んでいる様子を見ると、遊びには本当に国境がないなと感じます。

山下

 このゲームソフトは、ネットワークにつながなくても遊ぶことができるので、自分の身近な人の反応を楽しんでいただきたいとも思っています。たとえば、家族に自分のつくったコースを遊んでもらうことによって、家族の会話が始まることもあると思うんです。それは、『スーパーマリオ』シリーズが30年経っても変わらずお客様に遊んでいただいており、みんなが知っている共通の遊びとして認知していただけているからだと思います。30年前に『スーパーマリオブラザーズ』で遊んでいたお父さんが、『スーパーマリオメーカー』でお子さんのつくったコースを遊ぶことによってコミュニケーションが始まったらうれしいですね。
 実際、ゲームを始めて間もないお子さんのために、簡単にクリアできるコースをお父さんがつくってあげたという話を聞いたときに、新しいゲームの楽しみ方が生まれたと感じました。

「自分が面白いと思える、好きな遊び方を見つけてもらいたい。」

押野

 ネットワークを使って誰かに「面白いね」と言ってもらえるのも楽しみのひとつですが、「つくる」という行為そのものも楽しんでほしいですね。自分が面白いと思える、好きな遊び方をルールに縛られずに自由に見つけてもらうことができるソフトだと思っています。
 実は、そういった部分を楽しんでもらえるように、密かに小ネタをたくさんしのばせています。たとえばコース上に敵キャラやブロックなどを配置するとき、通常は人の手のカーソルで配置するのですが、その手を犬や猫の手に変更できるようにしました。また、敵キャラクターに「スーパーキノコ」という身体を大きくするアイテムを食べさせることができるのですが、2つ食べさせるとゲームとして成り立たないくらい大きくなってしまうので、それはできませんよと伝えるために、2つ目のキノコは、一度食べてから吐き出すような見せ方をしました。

人の手のカーソルを、犬や猫の手に変更できる。

山下

 ほかにも、直接「つくる」部分ではないのですが、ドアのパーツを叩くと、叩いた回数がノックで返ってくるとか、ネットワークの読み込みが長い場合に途中からゲームには関係のない太鼓の音が聞こえてくるとか、ソフトウェア開発者たちが思い思いの小ネタを勝手に入れました(笑)。最終的に小ネタが100個はできたと思います。我々スタッフが楽しまないと良いものができないと思っていますので、面白いと感じるものはどんどん入れていくようにしました。

『スーパーマリオメーカー』を発売することで実現できたことを教えてください。

押野

 これまでお客様とは、つくっている側から遊びを届けるという、どちらかというと一方通行のコミュニケーションが当たり前でした。しかし、今回のソフトでは双方向のコミュニケーションを実現できたと思います。『スーパーマリオメーカー』という土台を我々がつくっていることは間違いないのですが、今回のゲームソフトはお客様に参加してもらうことにより、ゲームとしての本当の価値が完成するんです。
 今は、1日平均で3万コースくらいの投稿があり、既に合計で600万コースが投稿されています(2016年1月末時点)。この数を任天堂だけでつくろうとすると何年かかるかわかりませんが、多くのお客様に参加してもらえたことで、こんなにすごい数のコースを自由に楽しむことができるようになったんです。

「コースをつくる楽しさを、まず感じてほしい。」

山下

 確かに『スーパーマリオメーカー』では、お客様の力のすごさを改めて感じました。お客様が自ら遊びをつくり、つくることを楽しめば楽しむほど、遊びが充実し面白いものが生まれます。
 我々が想像していなかった遊び方をするお客様も出てきており、お客様同士で新しい笑顔をつくりあっていると感じています。お客様と我々が一緒になって面白いものを世の中に出しているということが自分にとってはとても新鮮な体験で、これから先もこういった試みができればいいなと考えています。お客様にどんどん参加いただいて、一緒に面白いものをつくることによって、このゲームに関わるすべての人が笑顔になればいいと思っています。そういったお客様との新しい関係性を大事に、これからも良い意味でお客様に驚きを与えられる商品をつくっていきたいです。

このページの一番上へ