5. 家庭内の経済に関する話題を増やしたい

坂村

わたしたちがそうやってマラソンを走るみたいに
一生懸命に文字の部分でがんばっている一方で、
任天堂さんがつくるオマケの部分が
ものすごく進化していったんです。

児玉

しかも、いつの間にか(笑)。

坂村

長尾が発見して、わたしも見てビックリしたのが、
「坂村さん、株価が変化してますよ」と。

岩田

(笑)。
問題に答えると株券がもらえて
それを売ることができるんですね。

坂村

それまでのサンプルソフトでは、
株価が固定されてたんです。
ところがある日突然、株価が変動するようになりまして。
だから高値で株券を売ることもできて。
まぁ、それってベタな仕掛けだとは思うんですけど(笑)。

岩田

ベタベタの仕掛けですね、はい(笑)。

坂村

それに、お金で買えるものが、
ものすごく増えていきましたね。

岩田

ショップで売ってる商品が増えたんです。
妙なものも売ってますから。
エレベータのカゴだとか(笑)。

児玉

エレベータのカゴが盗まれたとき
最初はバグだと思いました。

一同

(笑)

長尾

でも、わたしは単純に楽しかったです。
これくらい楽しさを演出する部分がないと、
問題を解くコンテンツだけでは
ツライところもありましたし。
実際、原稿チェックの仕事だけをずっとやり続けてると、
ものすごいストレスがたまるんです。
だから、新しいサンプルソフトが届くたびにモードを切り換えて、
ショップにどんなものが増えてるかを確認してみたり。

岩田

新しいものが入ってないかなと。

長尾

で、いろいろ試したんですけど
個人的にはスクラッチおみくじがお気に入りで。
DSのタッチペンを使えば、
こんなこともできるんだと、すごく感心しました。
で、それでしばらく気分転換をして、
また問題チェックの仕事に戻ると。

岩田

やっぱり気分転換は
このようなソフトにはとても大事なんですよね。
そういうものがなければ、
問題を解くだけのキビシイものになってしまうので。

長尾

だから、ずいぶん楽しませていただきました。

岩田

本当にお疲れ様でした。
それでは最後にお客様へのメッセージをいただけないでしょうか。
このソフトの作り手として。

児玉

では、わたしから。
このソフトを使っていただければ、
毎日の生活がきっと楽しくなると思います。
いろんなことのつながりが見えてきて、
テレビのニュースも面白くなりますし。
先ほど、「経済をわかりやすく伝えたいけど
その方法論が見つからない」という話をしましたけど、
ようやく今回、このソフトで実現できたという
手ごたえも感じています。

岩田

手ごたえを感じるいちばんのポイントは何ですか?

児玉

もちろん、DSでつくったことも大きいんですけど、
やっぱり中身のムダな部分をどんどんそぎ落として、
かなりシンプルなものにしたことがよかったと思います。
ですから、「ちょっと経済は」と身構えるのではなく
ぜひ気楽に楽しんでいただきたいですね。

岩田

それでは、長尾さん。

長尾

わたしは、単純にプレイして
それで楽しんでいただければと思っています。
問題を解くだけじゃなく、ショップのアイテムとか、
あるいは昇進する過程や肩書きも含めて、
ソフトを丸ごと、単純に楽しんでいただければ、
つくった者としては満足です。
ただ、このソフトをやりきっても
経済のことをすべて理解できるまでにはいかないと思うので、
まず単純にゲームとして楽しんでいただいて、
それをキッカケに、日々のテレビの経済ニュースだったり、
新聞であったり、欲を言えば日経新聞ですけど、
それを見る習慣をつけていただく、
そのキッカケづくりにこのソフトがなれば
うれしいなと思います。

岩田

最初の話の「経済を知らなくても困らない」
というような人たちのキッカケにも。

長尾

ええ。ある種、経済というのは、
言葉のようなものだと思うんです。
経済も言葉も知れば知るほど視野が広がったり、
生活が豊かになったりするという性質がありますから。
だから、とくに食わず嫌いの若い人に、
これをキッカケに日々経済と接するような
習慣を身につけてもらえると
我々のビジネスにとってもプラスですし、
買ってくださった人にとっても生活を豊かにし、
視野を広げるという意味で、
決してマイナスにならないと思います。

岩田

いま、長尾さんがおっしゃった
「生活を豊かにする」というキーワードは、
はからずも任天堂が使っている言葉なんです。
このソフトをずっと担当されてきて、
いちばん前面で苦労した方から、
この言葉が自然に出てきたのは、
わたしたちの考えていることが、
商品づくりを通じて伝わったのかなとうれしいです。
本当にありがとうございます。

長尾

いえいえ。

岩田

では、坂村さん。

坂村

わたしは、今回のソフトが
お母さんやお父さんや息子さんや娘さんたちが、
あるいはおじいちゃん、おばあちゃんが、
経済をテーマにコミュニケーションする
キッカケになったらいいなと思っています。
オフィスもいいんですけど、とくに家庭ですね。
そういうところに持ち込んでいただけたら、
つくった者としては、すごくうれしいです。

岩田

ありがとうございます。
任天堂の開発スタッフが、
坂村さんに最初に申し上げてしまったことですけど、
「経済なんて知らなくても生きていける」
と思っている人たちこそ、
このソフトの経験前と経験後で
その大きな違いを強く感じることができると思うんです。
 
それはひょっとすると
子どもさんかもしれないですし、
高校生かもしれないですし、
これから社会に出ようとする学生さんかもしれない。
あるいは若い社会人の方かもしれないし、
意外に、ベテランの社会人のような方、
もしかすると主婦の方かもしれない。
で、家でお父さんとお母さんがやってみると、
それぞれ得意なことが違うと思うんです。
そんな得意なことが違う様が面白いと思うんです。
 
一方で人が何かを話題にするときに、共通の興味に対して
それぞれの人が持っている情報にバラツキがあると、
話が盛んになる力が働きやすくなりますから、
その意味で言うと、
家庭内で経済に関する話題が増えたら、
そのときこの商品をつくった意味があるかなと思っています。

本日はどうもありがとうございました。

坂村・長尾・児玉

こちらこそありがとうございました。