インタビュー

桜井政博さんが訊く 『ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣』

4.友だちといっしょに

桜井
今回は、ワイヤレス通信やWi-Fi通信を使って
自分で育てたユニット同士を戦わせることができるんですね。
成広
「レンタルユニット」と言って、
強力なユニットを友だちから貸してもらうこともできます。
僕はこのレンタルユニットに、すごく期待しています。
愛の交換というか、自分の育てた子どもを友達に預けるみたいな、
ほのぼのとしたキャッチボールができるんじゃないかなって。
桜井
ほのぼのとしたキャッチボール・・・!?
通信と聞いて、剣と剣をぶつけ合うイメージがあったんですけど。
成広
いえ、友だちと2人で、
剣と剣をぶつけ合う通信対戦ももちろんできます。
一方、レンタルユニットは、お助け要素のひとつなんです。
桜井
どんな仕組みになってるんですか?
成広
しばらくプレイすると、エクストラのメニューに
モードが追加されるようになっています。
自軍に同名のユニットがいるときに、
借りることができるんですが、
どうしてもマップでの戦闘で勝てないときには
大きな効果を発揮すると思います。
つまり成長したユニットを友だちからもらって、
難局を突破していくイメージですね。
桜井
あーなるほど。
友だちにレンタルしたユニットは消えちゃうんですか?
成広
レンタルしてもユニットは残るので心配いりません。
桜井
だったら、自分で育てた自慢のユニットを
友だちにどんどん配ると喜ばれるでしょうね。
成広
そうです。
僕はこのゲーム、友だちの存在が大事だなあと思ってるんです。
かなり個人的な話になりますけど、
今年に入って、すごく画期的な出来事がありまして・・・。
桜井
画期的な出来事って?
成広
うちの娘が『エムブレム』をプレイしはじめたんです。
桜井
それはすごい画期的だ!
成広
(笑)。息子のほうは『エムブレム』をやっていたんですけど、
高校生になる娘のほうは、まったく興味を示さなかったんです。
ところが同級生のなかに、『エムブレム』をすごく好きな友だちがいて、
その子に遊び方を教えてもらったようなんです。
それで『聖魔の光石』(※9)をはじめたんですね。

※9 『聖魔の光石』=ゲームボーイアドバンス用ソフトとして、 2004年10月に発売された『ファイアーエムブレム 聖魔の光石』。シリーズ8作目。

桜井
話を聞いている限りでは、
成広さん親子ってかなり仲良しですよね?
成広
もちろん!
桜井
プロデューサーのお父さんに
教えてもらったほうが早いのに・・・。
成広
やっぱり照れくさいんでしょうね。
でも、これは自分にとっても発見でした。
家の棚には、これまでのシリーズをずらっと並べているのに
まったく興味を示さなかったうちの娘が、
友だちをキッカケに『エムブレム』をはじめたわけですから。
桜井
なるほど。
成広
やっぱり、友だちって本当に大事ですよね。
ファミコン版の『エムブレム』を発売したとき、
最初の2ヵ月くらいはほとんど売れなかったんです。
当時はあの画面を見て、興味を持つような人は少なかったですし、
ところが口コミでじわじわ広がっていって、
発売から数ヵ月後に売れるようになったんです。
やっぱり、そんな風に人に勧めてもらうことが、
このゲームにとっては大きいのかなあと思うんです。
桜井
そうですね。そのためには機会が必要で、
たとえばそういう友だちがそばにいたか、いないかがすごく大きいわけですね。
自分にとっても、目の前でプログラマーがやってくれたことが
『エムブレム』をはじめる大きなキッカケになったわけですし。
やったら面白いゲームであることは間違いないから、
そういうフックは大切にしたいですね。
成広
友だち以外にも、キッカケづくりは必要ですよね。
僕に、桜井さんくらいのパワーがあれば、
「スマブラ拳!!」(※10)のようなこともやっちゃうんですけど(笑)。
桜井
あははは(笑)。「エムブレム拳!!」やりますか?
でも、あれはあれでとてもしんどいですよ。
成広
あんなこと、なかなかできないですよね。

※10 「スマブラ拳!!」=『スマブラ』開発者の桜井政博氏が運営する公式ホームページのこと。

桜井
しんどい上に、まわりの人にもお手間をかけちゃったりしますので、
ほどほどにしたほうがいいかも?
でも、『エムブレム』もホームページ(※11)の活動が活発なほうですよね。
成広
任天堂さんがサポートしてくれてますので、
ホームページを通じて、どんどん情報を発信していきたいですね。
機会があれば、イベントとかもやれたらなあとも思っていますし。

※11 シリーズ公式サイト「ファイアーエムブレムワールド」HP →詳しくはこちら

桜井
じゃあ「エムブレムイベント」をやりますか!
成広
そういう言い方をされると怪しい響きに聞こえちゃうなあ(笑)。
桜井
対戦をやるとか、どうですか?
成広
そうそう、今回はWi-Fiで通信対戦ができますからね。
桜井
今後にも期待しています。
それでは最後に、みなさんへのメッセージをお願いします。
成広
僕的には『エムブレム』シリーズは
「スローゲーム」だと思ってるんです。
桜井
スローゲームって・・・?
成広
「スローフード」とか「スローライフ」ではないんですけど、
ゆっくりと自分のペースで楽しんでもらえるゲームかなあと思ってるんです。
桜井
え、『エムブレム』って、スローなイメージかなぁ・・・。
でも、そう感じるのも自分のプレイスタイルを
反映しているからなのでしょうね。
成広
そうそう(笑)。
アクションゲームが苦手な人も楽しめますし、
時間や得点を競うゲームでもありませんので、
自分のペースでゆっくり楽しんでほしいと思ってるんです。
お話もすごくわかりやすいですし。
だから、ゲームを触ったことのないような人が、
間違って買ったとしても・・・。
桜井
間違って『エムブレム』を買うわけないじゃないですか(笑)。
成広
言葉のアヤですって(笑)。
でも、たまたまやってみたら、
ハマってもらえるかなあと思ってるんです。
それに、さきほどお話した「セーブポイント」や
「兵種変更」といった新しい仕組みのほかにも、
ゲームの遊び方をていねいに説明している
チュートリアルカードもゲーム中に読めるようにしています。
ですから、初めての方にもぜひ遊んでいただきたいと思っています。
桜井
つまり、「『エムブレム』って何よ?」というような人にこそ
遊んでほしいということですね。
成広
もちろん『エムブレム』をよく知ってる人にも
DSで新しく生まれ変わった本作を楽しんでほしいですね。
シミュレーションゲームというと、
大量のパラメータを扱って、巨大なシステムを動かすようなゲームもありますが、
『エムブレム』では、なるべく少ないパラメータで遊べるようなものを目指しています。
ちょっと頭の中で考えればそれで理解できる範囲内で
数字の遊びをしてほしいと思ってるんです。
桜井
お疲れ様でした!
 
※番外編もあります