1. アドバンス版『リズム天国』

岩田

さて、まずは、前作の話から始めましょうか。
2006年の夏にリリースされた
ゲームボーイアドバンス版の『リズム天国』は、
正直、発売前の段階では
あまり注目されていなかったにも関わらず、
たいへん多くの方に受け入れられました。
このシリーズの中心的存在である大澤さんは、
発売当時、どのように感じましたか?

大澤

(企画、ディレクション、プログラム担当)
みんなに楽しんでもらえるのかな・・・・・・と。
そこが、すごく不安だったんです。
譜面的なガイドが画面に出てこない、
新しいタイプのリズムゲームでしたから、
わかる人にしかわからないんじゃないかなと。
もちろん、そうならないように
気をつけてつくったつもりだったんですが、
世に出てみるまではわからなくて・・・・・・。
ドキドキしていましたね・・・・・・。

岩田

出てから反響を知って、どうでした?

大澤

一応、ネットの評判とかも
恐る恐る見てたんですけど・・・・・・
おおむね、いい感触だったので、
ものすごく、ほっとしました・・・・・・。

岩田

どちらかというと、
強い自信と確信のもとに
胸を張って出したというよりは、
不安とともに出してみたら、
とってもいい反応だった、という感じなんですね。

大澤

・・・・・・はい。

岩田

そういえば、前作の発売当時は、
すでにニンテンドーDSが
世間一般から大きな注目を集めているときで、
ゲームボーイアドバンス用の
ソフトだった『リズム天国』には
「え、いまアドバンスなんですか?」
というような反応もありましたよね。

大澤

・・・・・・はい。

岩田

世間では新しいハードに注目が集まるなか、
大澤さんが「ボタンで遊ぶおもしろさ」に
ある種、ストイックなほど、
こだわっていたのを私は憶えているんです。

大澤

ゲームボーイアドバンスの小さな画面で、
外で、手軽に遊んでほしいなという・・・・・・
そういう気持ちが開発当初からあったので、
ああいうかたちになったんですが・・・・・・。

岩田

大澤さんと同じく、
企画の立ち上げ当初からかかわっている
竹内さんは、前作のヒットをどう感じました?

竹内

(グラフィック担当)
そうですね、やっぱり、『リズム天国』は、
企画者である、大澤さんの気持ちが
すごく強く込められているんですよ。
だから、なんとか形にして
世に出してあげたかったという(笑)。

岩田

なるほど(笑)。
チームの雰囲気が伝わるコメントですね。

竹内

岩田さんはご存じだと思いますが、
大澤さんは、こだわりというか、
思っている気持ちがすごく強いんです。
でも、それをあまり表現しないタイプなので、
なかなか理解されないことも多くて、
だから、こう、感じ取ってあげるという(笑)。

大澤

・・・・・・。

岩田

なんていうか、大澤さんは、
求道者のように抱え込むんですよね。

竹内

そうなんですよ!

大澤

・・・・・・・・・。

岩田

道を極めるタイプというか、
「オレの背中から出ているオーラで
行く道を察してくれ!」
という魂の叫びが聞こえるような。

竹内

そうなんですよー。

大澤

・・・・・・・・・。

岩田

チーム内では、そんな大澤さんを
そばでフォローするのが
竹内さんの大きな役割のひとつで。

竹内

そうですね。
やっぱり、大澤さんから出てくるものを信頼してるので
こう、がんばってついていくんですけど、
落ち込んでいるときなんかは、
「ついてくると、いっしょに沈んじゃうよ?」
みたいなことを本人から言われたりして。

一同

(笑)

大澤

・・・・・・・・・。

岩田

いや、前作の『リズム天国』は、
そういう突き詰めたギリギリのところで
ようやく形になったという感じが
すごくしていたんですよ。

竹内

はい。いい意味で、いろんな気持ちや
感動が形になったと思います。

岩田

そういえば、開発のみんなで、
リズムに対する共通認識を得るために
ダンスレッスンを受けたりもしたんですよね。

竹内

はい。ゲームを監修するつんく♂さんと
リズムについてやり取りするうちに、
「一回、踊ってもらったほうが早い」
ということで、みんなで東京へ行って。

岩田

まさか任天堂に入って、
仕事でダンスレッスンを受けさせられるとは
思わなかったでしょうね。
大澤さん、ダンスしてどうでした?

大澤

・・・・・・・・・楽しかったです。

岩田

(笑)

(サウンド担当)
すごく楽しそうでしたよ。
あのときは、すごく忙しくて、
体調的にはよくなかったと思うんですけど、
大澤さん、すごくいい笑顔でした。

竹内

だって、レッスンの前に、
栄養ドリンク飲んでましたからね!
「おお!」と思いましたよ。
これは並々ならぬ決意だなと。

大澤

・・・・・・・・・楽しかったです。

岩田

ははははははは。
しかし、簡単じゃなかったでしょう?

大澤

・・・・・・そうですね。

岩田

やっぱり、体も動かないでしょうし。

大澤

・・・・・・・・・仕事柄。

岩田

「仕事柄」(笑)。

竹内

でも、しばらくすると、
「なるほど」という感じになるんです。

つんく♂さんの教え方が
すごくわかりやすいんですよ。

岩田

つんく♂さんはこのゲームを通して
「日本人のリズム感をもっとよくしたい」と
強く考えてらっしゃったそうですね。
そういえば、このゲームのおもしろさを表す言葉として
「ノリ感」というのがありますけど、
これは、大澤さんから出した言葉なんですか?

大澤

・・・・・・・・・(考え中)・・・・・・・・・
・・・・・・ちょっとよくわからないです。

岩田

ああ、そうですか(笑)。

大澤

つくっているうちに・・・・・・モヤモヤと。

岩田

「モヤモヤと」。

大澤

・・・・・・誰が出したんだったかな。

岩田

ま、誰が出したんでもいいんですが、
「ノリ感」という、わかりやすい言葉が
出ているのはよかったと思うんですね・・・・・・。

大澤

・・・・・・誰が出したんだったかな。

岩田

ま、誰が出したんでもいいんですが。

大澤

・・・・・・つんく♂さんだったかな。

岩田

あ、つんく♂さんですか。

大澤

・・・・・・というか、みんなで話しているうちに、
たしか・・・・・・モヤモヤと。

岩田

ええと、わかりました。
じゃ、「ノリ感」の話は、さておき。

一同

(笑)