Nintendo Nintendo GDC Game Developers Conference 岩田聡 GDC講演内容
2011年3月2日(現地時間)サンフランシスコで行われたGDC(ゲーム開発者会議)。
その中で、任天堂社長の岩田聡と米国任天堂社長のReggie Fils-Aimeがゲーム開発者向けに行った講演会の動画とその日本語訳をご紹介します。
※禁無断転載。一部を引用する場合は、引用元のURLを必ず併記してください。
岩田聡:

レジー、ありがとう。

任天堂はニンテンドー3DSを次の「マストハブ」にしたいと思います。

人々がニンテンドー3DSを目にした時、当社の最新の提案をどう思われるのかを当社は知りたくてたまりません。

ニンテンドー3DSの新しいサービスのいくつかについてレジーが話してくれましたが、私から、ニンテンドー3DS用の新作ゲームのことも少しだけお話ししたいと思います。

先ほど、『マリオ』では毎回必ず過去にない新しい要素を取り入れる努力を続けてきたというお話をしました。私たちはニンテンドー3DSでも、同じような姿勢を続けたいと思っています。

一例を申し上げましょう。1996年に『スーパーマリオ64』でマリオが立体になって以来、プレイヤーにとって空中にあるブロックをたたくのは常に困難なことでした。宮本さんは、ニンテンドー3DSの開発中に、「この課題がついに解ける時が来た」と私に言いました。

このことは画面内の世界を奥に動いたり、画面の近くに寄ったりすることにも当てはまることです。ゲーム開発者たちは、いまやどんな地形も開発可能になったのです。

そしてそれは、ニンテンドー3DSの新しい『スーパーマリオ』につながります。

『スーパーマリオギャラクシー』を開発した任天堂のEAD(情報開発本部)東京開発チームは、3D画面の新しい可能性を用いた『スーパーマリオ』を完全新作として開発中です。

このロゴはまだ仮のものですが、しっぽのようなものが下にあるのをご覧いただけるでしょう。これが何を意味するのか気になるでしょうが、答えはE3で明らかにいたします。

さて、『マリオ』の話をするなら『ゼルダ』の話もしてくれ、というファンの方もおられるかもしれませんね。

まずは『時のオカリナ3D』についてです。6月には、皆さんの手元にお届けできる予定です。13年前に、リンクは初めて立体のハイラルの世界を駆け回りました。今度は、完全な3Dの世界です。

昨年はスーパーマリオ25周年でしたが、今年はゼルダ25周年にあたります。宮本さんはこの機会に、ゼルダファンの皆さんが一緒にお祝いできるような計画を検討中です。

またここでWiiの『ゼルダの伝説 Skyward Sword』についても新しい情報です。Wiiモーションプラスを使ったゲームデザインを更に改善しました。プレイヤーキャラクターを自由に操作できる手応えを感じられるものに仕上がりつつあります。

日本の任天堂から戦闘中のリンクの姿のいくつかを収録したものが届いていますので、ご覧ください。

過去25年のことについて長く皆さんとお話ししてきましたが、将来のことについてのお話をして今日のスピーチを終えたいと思います。

そして、我々の業界のバラ色に満ちたイメージではなく、3つの懸念点を話したいと思います。

第1に、「職人魂」です。

過去25年にわたり、我々開発者たちは多くを得ました。しかし何かを失ってもいます。大きなロスの一つが職人魂です。

プロジェクトが大きくなり、複雑さを増すにつれ、ゲームを洗練させるために何度も作り直すこと、最高水準に達成させるという選択肢がしばしば失われてしまっています。これは、ゲームを開発している人々の才能に対する批判でありません。むしろ開発者が働く環境の問題です。

どれだけ多くの予算や人的資源が使えても、どれだけ才能のある人間が関与していても、予期せぬ事態に遭遇した時に必要とされる柔軟性はそこにはないかもしれません。巨大なプロジェクトでも、詳細事項は見失われることがあります。

第2の懸念を考える時、私は再度、HAL研究所で働いていた頃と宮本さんの仕事を見てきた任天堂での初期の頃を思い出します。

お話ししたとおり、当時はスペシャリスト(専門家)が存在せず、皆がジェネラリスト(万能選手)でした。他の人たちが何をやっているのか、全員が良く理解していました。

昔に比べて今は更に優秀なプログラマーやアーティスト、プロデューサーがいるのは確かです。

しかし、専門化が進んだ今の時代は、ひとりの個人がゲームの全体像または個性を感じることをずっと難しくしています。開発者は、自らの特定の役割についてはより良く知っていますが、他者の役割を理解できなくなっています。

他のチームメンバーが何をしているのか正確に理解できなくなる時代であるなら、次のゲーム開発の達人はどこから現れるのでしょう?

最後に、最も重要な私の懸念をお話しします。

2005年のGDCで私は初めて話をさせていただきましたが、当時は参加者の中でモバイルダウンロードまたはソーシャルネットワークのためのゲーム作成に関わった人は少数しかいらっしゃいませんでした。今日、皆さんの大多数が関与されているのではないでしょうか。
我々の業界は確かに拡大しました。

しかしそれによる懸念も私にはあります。業界がゲーム開発を生活の糧としている我々全員の継続的雇用を脅かす方向に分かれつつあると私は心配しているのです。

今後も開発者の仕事は常に長時間勤務であり続けるでしょうし、ストレスの高い仕事が続くでしょう。それでもこれまでは、生計を立てるだけの力がありました。

これから先もそうあり続けるのでしょうか?

ここにいくつかの数字があります。

今日のアメリカではPS3のゲームタイトル数が500以上、Xbox360用が700以上、そしてWiiとニンテンドーDSそれぞれに1000以上あります。

これだけ多くの選択肢がある中で、抜きん出たヒットになるために相応の注目を集めることは、大変難しくなりました。

いくつかのゲームはメガヒットになりますが、簡単なことではありません。これだけの競争の中では、いまや目立つことすら非常に困難なのです。

巨大な投資があっても、保証にはなりません。

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任天堂ホームページ ※このページの内容は海外での講演内容のため、一部英語での表現が含まれています。