株主・投資家向け情報

経営方針説明会・2008年3月期 中間決算説明会
質疑応答
Q 6  Wiiはリモコンに触ってもらうということが非常に大事なんだということだが、ゲーム売り場の試遊台では、ムービーが流れてるだけで、実際にリモコンに触ってもらえないケースが多い。何か改善策など取り組みはあるのか。
A 6

岩田:

 今までのビデオゲームのイメージというのは、ビデオゲームを遊ばれている人に近づくといけないということはなかったわけなんですが、Wiiはいろいろお知らせしてきましたように、「周りに人や物がないか確かめて遊んでくださいね」ということを継続的にお知らせしてきております。Wiiのソフトで一番体験していただきたいソフトが『Wii Sports』であるという状況の間、一般的な店舗での試遊環境は、(常時、遊び方をガイドする)人が付くわけでもなく、十分に広い場所を確保していただくことも事実上不可能である、という状況の中では試遊をすることによって得られるメリットよりも、万が一にもどなたかが怪我をされたり不愉快な思いをされたりするということが起こることのダメージの方がずっと重たいであろうということで、これまでは試遊展開を一切してきておりません。ですが、Wiiのソフトというのは、いろんな遊ばれ方をされるわけで、当然これから出て行くソフトの中にはもっと今までのビデオゲームに近いもの、あるいはそういうリスクの少ないもの、店頭試遊に向いたものというのが出てくると思っています。ですから、これからの展開の中で適切なソフトを見つけた時にそのような展開をするように、今お店にWiiステーションという名前の、今はビデオ表示装置のようになってますが、そういう機械が置いてあるんですが、あれは将来、試遊ができるような設計をしておりますので、それはむしろ試遊をしていただくことによるリスクはなく、メリットは十分あるということがはっきりしたソフトをプッシュする時に一気に展開をしたいというふうに考えております。

Q 7  ハードの累計出荷台数が増えれば、タイレシオ、ソフトの装着率が下がるというのが、今までのゲーム業界の常識だったと思うが、これを覆すシナリオはあるのか。もし仮にこの常識が覆るとした場合、例えば逆に上がっていくと考えた場合に、DS、Wii、それからオンライン、その他販路の拡大だとかアジアでの取り組みだとか、いろんなチャレンジがあると思うが、そのリソース配分をどう変えていくのか。
A 7

岩田:

 ゲーム業界の常識では、累計台数が増えるとタイレシオが下がると言われています。これは最初の内にゲームを買われるのはゲームに熱心なお客様で、一人の方がたくさん遊ぶ、たくさんゲームを買ってくださるという状況であって、それが段々普及台数が進展すると、いわゆるカジュアルユーザーであるとかライトゲーマーとか呼ばれる方に普及が進んで、その方たちはそんなにはゲームは買わないんですよというのが、過去の常識だったと思うんです。それは、もしゲームというのが50ドルであるとか、6,800円であるとか、そういう固定的な値づけで、そしてパッケージソフトであるがゆえに、それなりの値段であるならば、それなりのボリュームがないとお客さんは馬鹿馬鹿しくて買おうと思わないということであるとすれば、ゲーム熟練者の方たちのようにゲームに時間をたくさん使えないゲーム初心者の方々は、そんなにゲームを買えないわけです。DSは、「一日の中にある隙間の時間を少し僕らに分けてください。そうすれば、その時間が楽しかったり、ちょっとお役に立ったり、人と人を繋いだりすることにお役に立てるかもしれません。」というような提案をしたことが、受け入れていただけた大きな理由のように思いますし、おそらく「一年にこんなにゲーム買ったのは初めてだよ」と言っていただいているお客様もいらっしゃると思います。ですから、その意味で今までの常識におけるこういうふうに普及が進んだらお客様の層がこう変わって、タイレシオはこう下がるという公式が単純には当てはまらない状況にDSで既に多少は変わったと思うんですが、これからやりたいことはやはり、「値段とボリュームのダイナミックレンジをどうやったら広げられるか」ということです。お客様がそれぞれお持ちの時間や遊びに使っていただけるエネルギーは、人によって違いますから、お忙しい方は休みの日にはちょっとは時間があっても、平日には1時間ずつくれっていわれてもそんなにゲームに時間は使えない、そういう人にも付き合っていただける提案ができた時に、今のタイレシオの問題というのが変わっていくのかなというふうに私自身は思っています。それからリソース配分については、私も言いますが、ソフトのことですので宮本にもこの後話してもらおうと思いますけれども、私自身は任天堂のリソースというのは当然限られているわけで、また、任天堂が社内の開発者を急に増やした所でその増やした人は任天堂の文化にすぐには染まりませんから、開発の強化をしていくのは当然として、そのペースにはやはり限界があると思っていますし、無理をすればむしろ良さが失われてしまうのではないかというふうに考えています。ですから、任天堂は任天堂だからできること、任天堂が特に他の人たちに比べて大きな価値を生み出せる分野はどこか、ということに集中すべきだと思っていまして、逆にそれ以外のことについては積極的に他社さんと共同でやっていくべきだと思っていますし、任天堂のプラットフォームが栄えることが最終的にソフトメーカーさんのビジネスが栄えることに繋がっていかないと、プラットフォームとして持続はしないと思っていますので、そういう流れを作るべきかなと思っています。


宮本:

 改めてそう言われて考えてみると、ユーザー層拡大ということ自体が、新しく出てきた遊びであり、しかも『Wii Fit』なんて(従来の定義では)遊びと言えるかどうか分からないのですが、「それが欲しいので初めてビデオゲームを買う」という方が買われるんです。でそういう方が次のビデオゲームを買おうと思う時にゲーム雑誌を見るだろうか?、おそらくその人が次に買うものはないだろう、という所から(企画を)スタートします。これまでも『脳トレ』を売った時にも、『脳トレ』に興味を持って買ってもらった人にお勧めできるソフトは何かというのを、いろいろ社内のラインナップから見て、お勧めするような広告の方法を考えてきたりしたわけですが、本来、ユーザー層をどんどん拡大して、Wiiがどこの家庭にもあるユニークなハードになって、どのテレビにも一台ついてるというものを目指せば目指すほど、そういう「(普通のアプローチでは)他のタイトルは買わない」という方に買ってもらえるような物を作らないとだめなんですね、我々が。それじゃどんどんタイレシオが下がっていくじゃないか・・おっしゃる通りだと思います。しかし、もうそれは今までのゲームマーケットの文法の中でのタイレシオという考え方ではなくて、いかにWiiが家庭にあって当たり前の物になっていくかということを私たちは目指しているわけですから、それができた時に今度は過去のゲーム雑誌に載ってたタイトルと比べられないようなものがソフト商品として成り立つ可能性が生まれてくるわけです。それが売れていった時に初めて、簡単なプラグインのような物をソフトと呼んでいいのかと思うんですけれども、そのハードを使っている人にとっては、そのプラグインが日常欠かせない物になると、そうすると毎年それは1個ずつ買わないと生活が不便になるわけです。そうなった時には過去のタイレシオという考え方では語れないようなソフトマーケットができていく可能性はあるし、ゲーム会社さんもサードパーティさんも最近は、「これからもどんどん過去のようなゲームを作り続けて本当にビジネスになるのか」ということを不安に思っておられる時代ですので、そういうところでソフト技術者が作る新しいソフトのスタイルというものが生まれてきて、それが新しいマーケットだとか利益を生んでいくのかという気がしますね。


岩田:

 確かに『脳トレ』が売れた直後に、社内でも実はいろいろな議論がありました。『脳トレ』が売れることはすばらしいことだし、今までに触ってくださらなかったお客様が触ってくださるのは、とてもすごいことなんだけれども、『脳トレ』のお客様は次のソフトを買ってくださるのだろうか。ある時期その人たちにとってはDSは『脳トレ』を遊ぶための機械であって、ゲーム機ではなかった可能性があるんですね。一方で、『もっと脳トレ』には「細菌撲滅」というゲームが含まれていました。これはご存知の方も多いと思いますが『ドクターマリオ』というゲームのアレンジバージョンです。そして、『脳トレ』の普及とともに、「細菌撲滅」をやらないと眠れないというふうにおっしゃるようなお客様も現れました。するとその時にその人たちは実はビデオゲームを遊ぶためのハードルをもう超えちゃっていたわけです。ですから後はその人たちにどうビデオゲームというものが自分と関係のあるものなのかっていうのを理解していただければ良いということになります。現実に『脳トレ』でDSを買ったお客さんが後で『Newスーパーマリオ』を遊ばれたり、『どうぶつの森』を遊ばれたりというようなことが起こっていることは、クラブニンテンドーのデータを追っかけていくと、いろいろ分かったりするわけです。すなわち、『脳トレ』のお客様は必ずしも『脳トレ』以外をしないわけではないということです。もちろん全員が変わるわけではないですけどね。ただそういう形で変わる部分があると思います。それからもう一つは、毎日触り続けていただけるかどうか、ということがあります。例えば『Wii Fit』を買ってくださったお客様が「毎日『Wii Fit』しかしない」ということがある期間続いたとしても、もし触り続けていただいていたら、次に何かフックのある提案を私たちができた時に、「ああ、あれで遊ぶのか」、「こうするのか」と分かっていただいて、手を伸ばしてくださる可能性があります。僕らは、「(DSやWiiが)しまわれないようにするというのが一番大事じゃないか」というふうに思っていて、「しまわれないように作っておけば、その分チャンスが広がる」と確信していますし、そして「その人たちが興味を持てることってなんだろう」ということを一生懸命探しています。その中から例えば後から料理のテーマが出てきたり英語のテーマが出てきたり眼力のテーマが出てきたり、『脳トレ』ほどは売れていないかもしれませんがでもそれなりの数字で売れていっているというのは、そういう人たちにもちゃんと届いているからだと思いますので、決して従来の常識から考えたらこれは不可能だということだけでチャレンジを止めてしまう必要はないなと思っています。

Q 8  今、外出時にみんな携帯電話を持って出てると思うが、将来的は2台、3台の携帯デバイスを持ち出す時代が来ると考えているのか。1台目にも2台目にもなれなかったらコンテンツプロバイダーの原点に戻って、そういう人たちのところにコンテンツをプロバイドする役に回るか、それとも例えばDS phoneなど、電話を作り始めることによってプラットフォームをキープするという考えはあるのか。
A 8

岩田:

 私自身はまず人は1台しか機械を持ち歩かないとはあまり思っていません。1台で何でもできる機械については、私自身はエンジニアですし、また面白いものは好きですから、他社さんがいろんな面白い物を出されたら、真っ先に飛びついて喜んで買う典型的なユーザーです。ですが、常日頃思うのが、多機能のデバイスは本当に使うのが難しいということがあります。多機能になればなるほどお客さんが実は振るい落とされていくんです。本当にたくさんのお客様がいるサービスで、複雑で多機能なものってあまりありません。むしろ「どうやって贅肉を削ぎ落とすか」っていうところのセンスが優れたものが受け入れられていると思います。ですからその意味で私は1台の万能機が全てを解決するっていう未来をあまりイメージしておりません。ですから電話とDSを絶対に未来に統合しなきゃいけないんだというビジョンも持っておりません。もちろん携帯電話のテクノロジーやビジネス構造が将来どう変わるか分かりませんので、ひょっとしたら任天堂の将来のどっかの中に電話のビジネスとの接点が無いとはもちろん申しあげられないんですが、でも今の電話ビジネスの構造に対してはそれほど興味を持っていないです。それからもしそういう機械になれなかったら任天堂はソフトプロバイダーになるのかというご質問に関しては、まあそうなったら竹田や永井は失業するわけなんですけれども、私はそういうふうな未来はイメージしてませんし、また任天堂はハードを作るチームとソフトを作るチームが同じ建物にいて同じ哲学を持ってどうやったらお客さんは驚いてくれるだろう、どうやったらこれが「新しく、ユニークな物だ、珍しい」と感じていろんな人たちが笑顔になってくれるだろうっていうことを考えるのが商売なわけですが、ソフトだけで勝負をするよりもハードとソフトを組み合わせることは任天堂にとって明らかに分が良いと感じています。その明らかに分が良いための武器を捨てる理由が私に見えないです。その意味では私自身はコンテンツプロバイダーとしての任天堂の未来っていうのはあまりイメージしておりません。

Q 9  12月の発売の『Wii Fit』はどれくらい売れると見込んでいるか。
A 9

岩田:

 おそらく日本だけではなくて世界でということになるんですが、私たちはDSにおいて脳トレソフトが果たした役割をWiiにおいて『Wii Fit』が果たしてほしいというふうに考えています。一方で、今具体的に販売目標は何台ですっていうことを申しあげるような状況かといいますと、例えば私たちは『脳トレ』を出す時にそれなりの野望とそれなりの可能性を感じて当然チャレンジをしたわけですが、発売前に脳トレシリーズが「2年後には1000万本以上売れているんだよ」というようなことを、まあ仮に私がこういう席で言ったとしてもただのほら吹きですよね。そんなことは誰も信じられないと思います。ですから本来私たちがその「願わくばこういうことを実現したい」と思っている台数は非常に大きいんですが、それは対外的に公約として口にするような性質のものではなくて、実際に結果で示していくものだと思っています。ただ私たちの期待は、宮本にプレッシャーを与えるために言っているわけじゃないんですが、私たちの野望としての目標は相当に大きいということだけは申しあげておきたいと思います。

Q 10  決算資料で見ると、ヨーロッパのWiiのファーストクォーターからセカンドクォーターに掛けての伸び方が非常に大きいが、その理由と、Wiiのヨーロッパでのユーザー層について教えてほしい。
A 10

岩田:

 ファーストクォーターとセカンドクォーターのヨーロッパの違いですが、一つはセカンドクォーターぐらいから少しずつ増産ができるようになりまして、ヨーロッパに持っていける台数そのものが増えたということがございます。それに加えまして、この頃からセカンドクォーターに入ってからだと私は感じているのですが、イギリスでのWiiの販売に加速感が出てきました。これは、何かの臨界点を越えたということです。社会の中で認知される方が増えて、知名度が上がって、対象となる方がぐっと増えたということ、それから「どうもWiiが主流になるみたいよ」っていうムードがゲームをされる方の間にもできたし、それからゲームをされてこなかった方々にとっては、「あれ、なんか面白い機械みたいよ」ということが多くの人たちに広まったということだと思います。聞くところによると、イギリスっていうのはパブ文化で、仕事が終わるとパブに行ってみんなでお酒を飲んで話をしてっていうところがあるらしいんですが、そこで「Wiiの日」っていう企画でみんなでWiiをして遊ぶというのが、全く任天堂と無関係に起こりまして、そしてそのことでWiiを体験した人が翌日Wiiを買いに行くなんていうそんな現象が起こっていて、それが新聞に載ったりしてるんだというようなことを現地の人間に聞いたことがあります。ですからそういうことが起こったことで、特にイギリスはヨーロッパ全体の中でのマーケットシェアが大きい国ですし、また一番話題が周辺に波及しますので、ヨーロッパでそういう状況ができたことが任天堂にとって非常に幸運で、ヨーロッパのWii市場の拡大に大きく寄与したと思っています。それから、日本ではWiiというのはいわゆるゲーム熟練者の方々のお客様が少ないといふうに言われているのですが、実は、アメリカ・ヨーロッパとも必ずしもそうではございません。『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』の売れ方を見るだけではっきり分かるんですが、宮本は渾身の力で作ったんですが、日本での結果だけがどうも期待に届いていないんです。その一方で、海外ではイメージどおり売れていて、Wiiの販売台数の中で『ゼルダ』の売れていく割合っていうのはかなりの高さになるわけです。そういうところに象徴されますように、必ずしも海外でのWiiの市場拡大というのはカジュアルゲーマーだけ、ゲーム初心者の方だけではないということは申しあげられると思います。


このページの一番上へ