株主・投資家向け情報

2009年3月期 決算説明会
質疑応答
Q 6  隙間を埋める部分というのは、サードパーティさんからソフトが出るのも期待されていたかと思う。国内において、Wiiのサードパーティのソフトが出てこないこととその対策について少し補足してほしい。
A 6

岩田:

 私がお答えするよりも、アナリストの皆様がソフトメーカーさんの方々にお聞きいただいたほうが、正しい答えが得られるのではないかと思いますが、DSのときとシナリオの違いが二つあるのかなと思っています。

 一つは据置型のソフトと携帯型のソフトは、開発に要する時間が違う(据置型のソフトの開発の方が、より長い時間がかかる場合が多い)ということです。もう一つは、各社さんの据置型のチームが、わりと最近まで他のハードのソフトをつくられることに非常にエネルギーを注いでおられたということで、これは外部から見てはっきりわかることです。これ以外の要因はむしろソフトメーカーさんの方にお聞きいただいたほうが正確にわかるのではないかと思いますが、少なくともいまの2点は言えると思います。

 それで、私たちは2年ぐらいすれば状況は変わると考えていましたが、携帯型でそれは通用しても、日本の据置型ではそのとおりにならなかった。ただ一方で、アメリカ、ヨーロッパは全然違うシナリオになっていますから、私たちも今回のことを教訓にして、今後どういう考え方で進めていけばいいのかということを、もう少し考えたいと思います。

Q 7  従来から、新興エリアに対する拡大がテーマの一つとなっているが、実績としては、昨年度は供給能力の問題等もあって、手がつけられなかったと思う。東南アジア、南米あたりは、昨年度までどういった状況になっているのか、現状で何か進展があるか、また今期の予想上、新しいマーケットに関して何かプランを見込まれているのかを教えてほしい。
A 7

岩田:

 ご指摘のとおり、昨年の時点では、供給能力の課題がありましたので、新興国への積極的な展開はしたくてもできない状況だったと思います。一方で、南米は、以前からビジネスはしていて、アメリカ全体の5%強ぐらいのマーケットがすでにありますが、これもまだまだ本来のポテンシャルが活かせている状態ではないと思います。アジアについても、いくつかの国々で代理店さんを経由したビジネスをしていますが、まだ非常に大きいということはありません。

 例外としては、韓国での取り組みがあるかと思います。韓国は2年続けてDSが100万台ずつ売れましたし、Wiiも50万台以上売れました。このように、あるマーケットに照準を決めて、そこでしっかり展開することがうまく機能することもあります。韓国の場合は、たまたま先方からゲーム産業の振興についてお話をいただいて、私たちが現地のソフトメーカーさんとビデオゲームづくりについて交流することがきっかけで、韓国に出ていきました。

 そのときにわれわれは日本でDSが非常によい状況にありましたので、DSの2年分ぐらいのヒット商品を1年間に凝縮して、集中的にローカライズして出すという超豪華ラインナップで市場に一気に受け入れていただくことができたということはありました。このようにいろいろな意味で環境が整ってできるというのは、必ずしも頻繁に起こることではありません。こういうチャンスがあったときには、また取り組むかもしれませんが、すぐにできることではありません。

 一方で、これはこの間私がいろいろ申し上げていることですが、昨年秋以降の経済情勢の急変によって、新興国でのビジネスの展開は一昔前よりちょっと難しくなったと思っています。一つは、為替が非常に不安定になっています。たとえば先ほど韓国の例を挙げましたが、ウォンの対円レートの急変は、ビジネスの構造に大きな影響を与えるところまで来ております。それ以外の国々でもそういうことはたくさんあります。また今回の経済情勢が単に為替レートに影響を与えただけではなく、先進国の市場以上に新しいものを提案して買っていただくことにおいては、難しいタイミングになっているということも同時に感じております。

 ですから、去年のいまごろは「WiiやDSの供給能力の限界から、新興国への展開は来年の課題です」と申し上げていたと記憶していますが、その後の状況の変化によって、勝負時は少し先に延びたかもしれないといまは感じております。その意味では今期の業績の中で、新興国への展開はあまり大きくは盛り込んでおりません。

 一方で、これは将来チャンスがあることは間違いないわけですから、私たちはここが勝負時だと思ったときに、韓国でそうであったように一気に、集中的に行うことで新しいマーケットをつくりだせるという可能性は感じております。

Q 8  御社のオンライン戦略全般についてお聞きしたい。今回GDCの中でiPhoneがサードパーティさんにもかなり取り上げられて、ダウンロード販売の隆盛を予感させるような内容になっていた。岩田社長から見たiPhoneの評価と、現在の任天堂のWiiウェアなりDSiウェアの手応え、今後の展望についてお聞きしたい。
A 8

岩田:

 一時よく任天堂はアップルさんと似ているというようなお話をいただいたり、私自身がアップル製品の愛用者なものですから、アップルの製品をどう思いますかというようなことを聞かれたりします。

 一方でよく最近報道され始めているところの「iPhoneはDSのライバルだ」論については、私はあまりそう思っていません。それは受け入れられるお客様の層が少し違うのではないかと感じているからです。任天堂が最も強みを持っているところには、きっとアップルさんは簡単には入れないし、逆にアップルさんが一番強みを持っておられるお客さんの層で、任天堂が一番ご評価いただけるのも難しいという関係にあるのではないかなと思っています。

 オンライン販売については、未来の極端な話として、たとえば「ゲームソフトはほとんどお店に行ってパッケージを買うということが20年後も続いているか」と聞かれたら、「うーん、たぶん変わるでしょうね」と私は申し上げますが、一方で「2〜3年後にはもうお店にはゲームソフトは売っていませんよ」と言われると、「いや、それは間違いではないでしょうか。そんなに急には人の行動は変わらないんじゃないでしょうか」とも同時に思っています。

 当然オンラインですでにその便利さを知り、その仕組みを受け入れておられる人がたくさんいらっしゃいますので、そういう方たちに任天堂も新しい仕組みを提供できるようにしていかないといけません。しかし私は当面、パッケージの優位性が壊れることもないと思っています。

 またiPhoneがDSのライバルとして、一気にDSのマーケットを侵食するというシナリオもイメージはしていません。ただ、iPhoneを触った私自身の感覚で申し上げると、「とても魅力があるけれども、任天堂(の製品)ほど幅広い万人受けを意図してつくられたものではないのではないか」というのが、私の素直な感想です。

Q 9  オンライン販売のWiiウェア等の現況と御社の考えていたとおりに進んでいるのか、思った以上に難しいという手応えなのか。もしだめだとするならばその改善策について説明してほしい。
A 9

岩田:

 これについては一度体験していただくことが重要だと思っています。私たちは「DSiを買って、DSiショップにつないでいただいたら1,000ポイント差し上げます」というキャンペーンをしています。お客様がWi-Fiに接続したら、これは別に自宅にWi-Fiアクセスポイントがなくても、お店にDSステーションのある場所に行けば、DSiショップにつながるわけですから、もう少し高い割合でつないでいただけるのではないかと思っていたのですが、日本では必ずしも期待どおりになっていません。逆にアメリカは、最初から比較的接続率が高いですね。

 (期待と実績の)この差は、結局そのことによって得られる便益の理解がどういう速度で、どういうふうに広がっていくのかという問題だと思っています。とにかく一度体験していただくことを粘り強くやるべきだ。そうすればパッケージソフトだけではフォローアップできないプラスアルファの魅力が、そしてDSiを自分専用にしていただくというマイDSというコンセプトが、より前進するわけですから、これはもっと前進させたいですね。ですから手を変え品を変え、今後ともお客様にその魅力を理解していただけるように、時間をかけて取り組もうと思っています。

 私自身は「新しもの好き」で、新しいものが出ると真っ先に自分で調べて試すタイプの人間ですが、世の中の人が全員そういうタイプだったら、きっと新しいものを提案する会社は、商売が少しやさしくなると思うんです。でも現実にはそういうお客様の割合は多くありませんので、幅広いお客様に伝わる方法を工夫して考えていかなければいけないと思っています。これはDSだけではなくてWiiも同じです。

 ただ、最初にハードを買われる方が一番新しもの好きな人たちの割合が高いので、何もしなければ、最初はネット接続率が高くてどんどん下がっていくというのが普通のシナリオだと思うんです。しかし任天堂のプラットフォームは、(いろいろな取り組みを行っている成果として)時間が経つにつれてちょっとずつネット接続率が上がっていくというパターンで推移しております。これがどこかでティッピングポイント(臨界点)を超えて一気に増えるタイミングが来ないかなと思っていま頑張っていますが、いまはまだじわじわ上昇中というような感じです。

Q 10  5月1日から「Wiiの間」が始まって、連休中は毎日のように番組を拝見した。ホームページに掲載されている岩田さんの映像も見たが、まさにプロの映像のつくり手さんが、視聴率の呪縛から解放されて、クリエイティビティを発揮する場になるのかなという期待がある。
  数年前に岩田さんに買収とか提携についての質問をした際、「ひさしを貸して母屋を取られるようなことはしたくない。」という表現で回答いただいた。今回の「Wiiの間」は、たとえがエキセントリックかもしれないが、「ソーラーパネルを組み込んだひさしを一緒につくって、母屋を明るくする」みたいなイメージがある。反面、こういった新しい取り組みが、先ほど岩田さんがおっしゃっていた、今年前半の新しい提案ができなかった遠因になっているのではないかとの仮説も立てられる。
  これからのチャレンジ、たとえばタッチジェネレーションの海外発のもの、エマージングマーケットへの取り組みとか、いろいろあると思うが、口コミのインパクトが大きくなるということは、逆に言うと、ソフトとかサービスの発火装置みたいなものを、どれだけ、どんなタイミングでビルトインするかが、より重要になってくるということも意味している。
  そういう中で限られた経営資源をどういうふうにこれから配分していくのか。いろいろな軸、たとえば製品、地域、ユーザー層、新サービスがあると思うが、もっと簡単に言うと、いま一番岩田さんが何にワクワクしていらっしゃるのかを教えてほしい。
A 10

岩田:

 非常に深いご質問です。まず任天堂が既存のハードに向けて、パッケージソフトをつくることだけに集中すれば、経営資源が同じであれば、もっとたくさんパッケージソフトが出るはずで、そうすれば新しい提案の隙間が空かなかったのではないのかということについては、結果、隙間が空いてしまったわけですから、結果責任としては、ご指摘は当たっているかもしれません。

 このことは「Wiiの間」単独のことではなく、たとえばWiiのほかのチャンネルサービスや、WiiウェアやDSiウェアをつくるという仕事も含めて、社外のソフト開発者の方々のお力をお借りしているとはいえ、最終的に任天堂の製品として世に問う以上、必ず任天堂の人間は関与しております。特に先ほどご指摘のあったようなテストフェーズ等は、必ず最後に出口のところでチェックをするわけですから、その意味でリソースの取り合いはあります。

 一方で、では従来と同じ構造で、提案の質だけが違う、あるいはいままでの大ヒットソフトの次回作を次々順番に生み出すだけで、本当にゲームマーケットの未来は明るくなるのかと聞かれたら、そうではないと思います。

 今日私は、皆さんに一番お話ししたかったことを一番最後に言いました。それは、「任天堂はなぜ世帯あたりユーザー数にこだわるのか」、「それが高いとどういいのか」ということです。それはわれわれが過去約5年間、ゲーム人口拡大に取り組んできて、「ゲーム人口の拡大は、異なる世代、異なる性の間に口コミが飛び火しないと絶対に起こらない」、「自らゲームに関する情報を能動的に調べてくださる方、自ら集めに来てくださる方だけを対象にしている限り、どんどん市場の未来は狭まってしまう」と確信しているからです。

 新しい人を呼び込むことができないとゲーム全体の未来が明るくならないということを考えて、いろいろなトライをした結果、家庭内、世帯内あたりのお客様の数が非常に重要な指標になることに、そうですね、3年ぐらい前に気づいて、それからそのことにずっとこだわってきました。

 ですから、いま私が何に一番ワクワクするのかとご質問をいただきましたが、それはこの世帯内でのお客さんの数が増える、すなわち家の中で話題にしてもらえること、誘い誘われること、人に言いたくてしょうがなくなることの種を見つけたときにワクワクします。

 ただ、その種は、うまく商品になるとは限りません。たとえば「脳トレ」という商品は、ある意味日本のゲームマーケット、いや世界のゲームマーケットを大きく変えたかもしれませんが、この「脳トレ」というものの概念は、私たちが「脳トレ」ソフトを提案するずいぶん前から世の中に存在していたわけです。たぶん何人もの方が、それとゲーム機の相性の可能性も考えられたかもしれません。たまたま、われわれがそれを世の中でマスマーケットに提案し、多くの方に受け入れていただける最初のプレイヤーになれました。

 そういうものを見つけたときにワクワクするんですが、ワクワクしただけではものはできません。たとえば私もいまいくつかワクワク中のテーマを持っていますが、それは未完成です。もう完成して明日売れる状態なら、今日「こんなのができました」と申し上げられますし、そうすると、任天堂の未来に明るい展望を持っていただきやすくなるのでよいのですが、いくつか(開発中のテーマは)持ってはいますが、今日「いつ発売できます」、「もうこんなにできています」と申し上げられるところまでは来ていませんし、それが確実にものになるかどうかもわかりません。

 ただ私は商品開発者出身ですので、そういうものを見つけたときにワクワクして、開発チームの人たちに「自分がなぜワクワクしたのか」、「どこに可能性を感じるか」という話をきちんと伝え、さらに途中で彼らがつくったものを触らせてもらって、自分がお客さんとしてどう見るか、自分の家族がこれをどう見るだろうかと想像したことをまた話をしています。そうしてものをつくっていく過程にかかわっていくこと自体が、私が一番ワクワクしていることです。

 それは単純に、「これからはオンライン」でもないし、「これからは動画配信サービス」でもありません。そういう単純な区分けではなく、「家庭内で話題にしてもらえるチャンスが増えそうだな」、「これをやったらまた一段と任天堂は(ゲーム人口構成における「ノンユーザー」を表す)ピンク色の人を(ゲーム人口構成における「アクティブユーザー」を表す)青色に変えられるかもしれないな」というものを見つけたときに、私はワクワクします。

 たぶん過去のゲームマーケットは、「ピンク色の人はお客さんじゃない。以上」と考えてきたと思うんです。だから青い人だけを対象にすべての活動を行ってきたと思うんです。でも、ピンク色の人や(ゲーム人口構成における「スリープユーザー」を表す)黄色い人もゲームを受け入れてくださるかもしれない、難しいけれども方法によってはできるかもしれないと私たちは考えてきました。そして、それができたことがアメリカやヨーロッパのゲームマーケットをこれだけ変えた要因ですし、またそのことでまだまだピンク色や黄色のお客様が残っていますので、そのお客様に青色になっていただくまで、私たちの挑戦は変わらないと思っています。


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