株主・投資家向け情報

2013年4月25日(木)決算説明会
質疑応答
Q 4

 今期のご計画で、前期比で約1400億円近い営業増益(前期実績:364億円の損失→今期予想:1000億円の利益)を目指すということだが、その要因分析について、可能な範囲で補足説明をいただきたい。例えばソフトの総販売本数は前期比でほぼフラットで、コスト構造もおそらく変わらないということで、例えば自社ソフト比率が前期比でものすごく上がるとか、いろいろ前提があるかと思う。そのほか、例えばWii Uの逆ざやがどうなっていくのかとか、為替のインパクトも大きいかと思うが、なるべく細かい要因分析ができる補足説明をいただきたい。

A 4

岩田:

 ハードは同じものをたくさんつくると徐々にコストの低減も進みますし、また、半導体は年々ある一定のカーブでコストが下がっていきます。「ソフトの総販売本数が増えていないのに利益がこれほど上がる理由は何か」については、ご指摘がありましたとおり、今期は前期に比べて自社ソフト比率を高く見ています。自社ソフト比率を高く見ている背景は、「自社ソフトで何が出せるのか」についての目途が私たちの中で立っているので、そのようにいたしました。また、為替の前提も、前期の1ドル=80円前後、1ユーロ=100〜105円前後というような状況に対し、1ドル=90円、1ユーロ=120円を前提にしますと、海外事業の収益性というのは劇的に変わります。確かに、円安ドル高というのは単にプラスだけではなく、前期のように、特にアメリカでの売上高が少ない状況になりますと、ドル仕入高がドル売上高より多いという状況になり、必ずしも円安ドル高のメリットが出てきませんが、今期はアメリカの販売規模が大きく改善する見込みですので、その面でもメリットが出てくると思います。

Q 5

 役員人事について。岩田社長が海外直轄となるが、ここまでのWii Uの不振の要因として、タイトル不足ということがあったが、もともと岩田社長の守備範囲が広すぎたのではないかと思う。さらに直轄範囲を増やすより、むしろ国内の開発のほうに集中したほうがいいのではないかと思っている。開発したソフトの投入以外に、例えば海外のソフトメーカーや小売店との連携強化で販売台数を上げられるという考えの下で直轄にしたのか。また、今回退任になる代表権を持った取締役がもともと管理畑の二人ということで、より開発色が強くなるマネージメント体制になると思うが、この辺りの意図も説明してほしい。

A 5

岩田:

 Wii Uに関しては、現状で勢いが失われているのは事実ですし、また、「発売後切れ目なくソフトを出したい」と考えていたにもかかわらず、そうならなかったわけですが、これは、「品質を十分にして出すのか」、それとも、「間隔を空けないことを優先するか」ということを熟慮した結果、やはり「中長期で見れば、一つひとつのタイトルでお客様に満足していただくことのほうがより重要である」と考えた結果です。開発というものには常に不確定な要素がいろいろありますので、必ずしも開発部隊の管理・監督が不十分であったからこのようなことが起きたとは考えていませんし、また、新しい体制においても、そのような点で管理・監督不足になるということは起きないようにしたいと思っています。もともと私は会社の中で比較的広い範囲を見ており、(2004年以降今日まで、)二つあるソフトの開発本部のうちの一つである企画開発本部を、今回の取締役人事があるまでは、私自身が直轄で見てきています。今回、企画開発本部の本部長に新たに高橋伸也を選ぶことによって、デイリーにその本部を見るという仕事は私から離れますので、海外の事業を直接見る時間は十分につくれると考えており、このような決定をいたしました。

 代表権を持つ取締役の構成に関してですが、今の代表5人の中で年齢構成上、「開発系の3人の代表が若くて、管理系あるいは営業系の代表の年齢が高かった」ということがより強く影響しており、「開発主導にしたいからそうした」というわけではありません。人はいつかは必ず歳をとり、歳をとれば過去のパフォーマンスをいつまでも発揮できなくなりますので、「世代交代の時期をいつにすべきか」ということは、過去何年にもわたって経営陣の中で話し合いが持たれてきました。ですから、その意味では、皆様からすれば「唐突に出てきた話」のように見えるかもしれませんが、私たちの中では過去数年にわたって「世代交代はどうあるべきか」という相談をしてきました。経験に基づく安定感とか、現時点での能力発揮の総合力ということだけを見ますと、「今年は、変わらずそのままやったほうが安心ではないか」という見方もあるかもしれませんが、一方で、「今後も、任天堂がどんどん変わる環境に適応し、いろいろな新しいチャレンジをしていかなければいけない」と考えたときに、「(平均年齢が)若くなる新しいマネージメントチームで早く仕事を始めたほうが、結果的に未来のためには良いのではないか」という議論があり、このように判断いたしました。

 任天堂という組織は、「開発部門が未だかつてない商品や魅力的な商品をつくれるかどうか」ということに、競争力の生命線があると思っておりますので、もし、今回の異動で、経営陣が事務系、管理系、営業系ばかりになって、商品や開発のことを知らない人ばかりが代表取締役になれば、「バランスが悪いのではないか」という見方もできるかもしれません。現行の残る3人の代表取締役は、この11年間、任天堂の経営を中心となって支えてきた3人であり、また、任天堂の事業構造から考えてバランスが悪いとは思っていません。ただ、その代表取締役が私を含めて開発出身の3名だけになりますので、これまでも代表取締役だけで物事を決めてきたわけではありませんが、例えば「経営会議には新しく常務になる君島にも参加してもらう」とか、「物事を決定する場に、社内のそれぞれの専門分野の責任者を呼んで一緒に多面的な視点で話をしたうえで決める」とか、そういうことをすることによって、ガバナンス上のご不安は一切持っていただく必要なく運営できるのではないかと思っています。

 「岩田は海外事業を見るよりも国内の開発を見たほうが良いのではないか?」というコメントをいただきましたが、結果的に「こういう体制変更をして良かった」と言っていただけるように結果を出したいと思います。

Q 6

 広告宣伝費について。今期は3DSとWii Uはソフト・ハードともに大きく伸びる計画だが、広告宣伝費はそれほど大きく伸びない計画になっている。これは御社がソフトに対して自信を持っているということなのか、それとも、より効率的な広告宣伝を考えているのか。あるいは上期と下期で広告宣伝費のバランスを考えたときに、今年は単に下期により集中する計画になっているのか。投下する広告宣伝費に対するリターンを分子と分母の視点と、タイミングの視点で解説してほしい。

A 6

岩田:

 広告宣伝費を増やしさえすればプラットフォームが売れ、広告宣伝費を減らすとプラットフォームが売れないかというと、単純にそういうことではないと思います。特に、新ハードをゼロから立ち上げる時には、まず、「商品の名前をみなさんご存知ない」という状況から「商品の名前を聞いたことがある」という状況にするために、非常に大きな投資が必要になりますが、今期はそういうものを予定しておりませんので、そのための費用がいらないということがあります。

 それからもう一つは、当然のことながらこういう厳しい経営環境にあるわけですから、「いかに広告宣伝費を効率的に使うか」ということには、私たちは大変エネルギーを費やしています。先ほども(プレゼンテーションの中で)お話ししましたが、例えば「Nintendo Direct」を『ニンテンドーeショップ』で見ていただくことに関しては、見ていただいた方に対する広告効果は非常に高い一方で、メディアのコストは非常にわずかしかかかりません。非常にわずかといいますのは、インターネットで情報を配信しますと、CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)という、(情報の)流量に応じた費用が発生するため、コストはゼロにはならないからです。ただこれは、テレビやさまざまな紙メディアのような「広告費が発生するメディア」に比べますとはるかに割安です。しかも、ゲームに興味をお持ちの方に、場合によっては15分、30分と集中して映像を観ていただいています。テレビ宣伝のように、「15秒とか30秒しかお伝えする時間がない」「ワンメッセージで説明しなければいけない」という、どちらかというと「認知をとるためのもの」と、Nintendo Directのように「より深く製品を理解していただいて、そのうえで本当に欲しいと思っていただくためのもの」に分けて言いますと、認知には、これからもテレビ広告を活用いたしますが、お客様に商品理解を促し、購入意向を高めていただくためには、違う方法が使えるようになってきたと思います。「Nintendo Direct」は日本で最初に始め、日本のほうが早く手応えを得ることができましたが、アメリカやヨーロッパでも今年に入ってからの「Nintendo Direct」は大変手応えを感じるようになってまいりました。このようになってきますと、「任天堂の広告宣伝のあり方というのも変わっていくのではないか」と思っておりますし、その点でより効率的にしようと考えています。これは「Nintendo Direct」だけではなく、FacebookやTwitterを使った、ソーシャルメディアを通じたマーケティングについても同じように言えると思います。

 また、上期と下期という点で言いますと、Wii Uはどうしても7月までは自社の有力ソフトがありませんので、Wii Uのマーケティングは主に、夏以降、年末までの時期に、ある程度集中的に行うことになると思います。また、ニンテンドー3DSは、個々の良いソフトが出てくるタイミングに合わせて広告宣伝を行うことになります。ただし、任天堂の場合、事業構造上、年末に一番ものが動きますし、年末に購入されるお客様は、それ以外の時期に商品を購入されるお客様と比べますと、「商品について、あまりくわしい情報をお持ちではない」「必ずしも能動的には情報を集められない」という傾向があります。よって、その時期にはある程度大きな広告宣伝をしないとお客様に伝わりませんので、一年中同じようにやるのではなく、メリハリをつけていくことになると思います。


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