株主・投資家向け情報

2014年5月8日(木) 決算説明会
質疑応答
Q 6

 先ほど岩田社長から「再来期の2017年3月期から任天堂らしい利益水準を回復したい」という話があった。2017年3月期というのは、健康をテーマにした新規事業の業績寄与の時期とちょうど同じだが、3年後の収益構造というのは、通常のゲーム事業にIPキャラクターの活用、新規事業を加えた3つの柱を想定しているのか。別の言い方をすると、従来から取り組んできたゲームビジネスの収益性というのは、やはり以前に比べると厳しいという認識なのか。

A 6

岩田:

 ゲームビジネスの収益性について申し上げますと、ゲームビジネスには基礎需要は存在せず、どんな環境変化があるかによって大きく変わります。WiiやニンテンドーDSの時の業績を、その発売前には私たち自身も予想できなかったのと同じように、上振れが大きくなることもあり得ますし、Wii Uのようにご期待に応えられないということも起こります。これは、娯楽ビジネスの宿命だと思います。任天堂には(携帯ゲーム機とホームコンソールゲーム機の)2つプラットフォームがあって、それら2つのプラットフォームの両方がすごく良ければものすごく良い状態ですし、片方しか良くなければほどほどの結果しか出せなくなりますし、両方がつまずいてしまうと非常に大きなマイナスが出てしまいます。ですから、「ゲームビジネスの未来に悲観しているから他の柱を立てよう」というよりは、「他の柱を立てておかないと、万が一ゲームビジネスが上手くいかなかった時に、業績が大きく落ち込み、結果、市場から厳しい評価をお受けする」ということがありますので、任天堂の強みが活かせる、他に立てられる柱はしっかり立てるべきだと考えます。この30年の間、「任天堂はビデオゲームの会社だ」と、私たち自身も含めて思い込んでいますけれども、(先ほどもお話ししたように)「娯楽とは本来、もっと幅の広いもののはずだ」と思います。娯楽に従事する会社として、任天堂は「次のステップで自分たちがやっていいことはここまで」と広く考えたら、「こういう新しい柱が立てられるのではないか」という観点で申し上げています。よって、「ゲームビジネスに悲観しているから」、あるいは「ゲームビジネスはもう収益性が上がらない」と決めつけているというよりは、「それがどのような振れ幅になっても、一定以上の結果を出し続ける会社、より強い会社になっていきたい」という意図の表れだとお考えください。

Q 7

 新興国市場への展開について聞きたい。中国でマーケットが他国企業に解放され、他社さんが動きはじめたという話がちらほら出ているが、中国を含めた新興国のマーケットについて、今どう考えていて、今後のポテンシャルがどれくらいあり、御社内でどのような動きがあるのかということと、今後、例えば2017年3月期に、もう1本の柱として、この新興国市場へのビジネスというものが入ってくるのかどうかといった辺りを、くわしく教えてほしい。

A 7

岩田:

 過去の任天堂の新興国市場に対するアプローチというのは、「日本、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアで結果が出たプラットフォームを、ある程度生産がこなれたところで新興国市場にも展開する」というものでした。いわば同じものを売っていたわけです。ハードの値段でいうと150ドルから300ドルぐらいのレンジ、ソフトの値段でいうと30ドルから60ドルぐらいのレンジです。もちろん、この価格帯を受け入れてくださるお客様は新興国にも一定以上はおられまして、その中には熱烈な任天堂ファンの方もいらっしゃいますので、大変ありがたいことだと思っております。一方で、新興国のマスマーケットの中で大きな存在感があるものとして展開していこうと考えますと、特に昨今、ハードの製造原価は売り値に対して非常に高くなっており、また、ソフトで30ドルから60ドル支払っていただくということは、先進国以上に新興国ではなかなか難しい状況です。そのような背景がありますので、同じ商品をそのまま持っていって、ローカライズしただけでは、世の中に広く受け入れていただける、本当の意味でのマスマーケット向け商品にならないのではないかと思います。さらに言いますと、新興国でビジネスをするのであれば、新興国市場でのニーズに対して、それは機能もそうですし、価格帯もそうですし、提案の仕方や流通のあり方もそうですが、そういったニーズにお応えする必要があり、ゲーム専用機の文化が30年確立されている市場と同じアプローチで、同じ製品をローカライズして販売するだけでは、大きなマーケットにならないと思います。したがって、新興国には新興国向けの製品が必要ではないかと考え、「アプローチの仕方を変えます」と1月の経営方針説明会で申し上げました。ハードを含めて包括的に新しい提案をしなければいけないと思っていますので、今年すぐに具体的な提案をお示しするということにはなりにくいと思います。

 中国の経済特区の話はいろいろな報道がありますとおり、今までとは違うということは聞いており研究はしていますが、詳細については、私たちからすると少し不透明な部分もあります。これまで中国市場に関する話をした際に、日本語で発言した記事が英語に翻訳され、英語に翻訳された記事がさらに中国語に翻訳されていく過程で、誤解を受けてしまうというようなことを何度も経験いたしました。よって、中国国内で私たちが何らかの活動ができるとなった場合、現地で、現地語で発表させていただこうと思っています。今日は具体的にお話しすることはありませんが、「現在、研究中である」とお考えください。

 また、新興国市場に対する実際のアプローチ、すなわち「このような商品をこのような価格帯でこのような時期にこのようにアプローチします」といったことは、今日は具体的にはお話しできませんが、機会を改めて順次お話しさせていただくことになると思います。

Q 8

 Wii Uとニンテンドー3DSのビジネスについて考え方を確認したい。今期の計画でいくと、ニンテンドー3DSは昨年よりも若干販売台数が落ちる。Wii Uに関しては『マリオカート8』などで最低限売っていきたい数字を計画に入れているということだが、3年目で年間360万台ということだと、来期、再来期に500万台、1000万台と、(来期以降販売台数が)増えていくイメージをしにくいが、次のビジネスや次のハードにバトンタッチするまでは、目標を低くしてコスト削減、原価低減で頑張っていくということなのか。これから出てくるタイトル次第では、来期、再来期に1000万台を改めて目指せるような展開になっていくのか。

A 8

岩田:

 今期の業績予想を立てる上で、前期に「営業利益1000億円を掲げて、任天堂らしい利益水準を出すためにこれだけ販売したい」というターゲットを決めて、それに向けて努力したものの結果につながらなかったという事実や、実際に任天堂が発表した業績予想を達成できないということが過去何度か続いてしまいましたので、今回はある意味、堅めの目標の設定をしようと考えたために、予想販売台数としてやや保守的な見方をしているということがあるかもしれません。今期のニンテンドー3DSは前期以上には絶対売れないと考えているかというと、そういうわけではなく、「これだけの数量であればほぼ間違いなく売れるだろう」という台数の掲げ方をして今回は計画を立てましたので、ぜひともニンテンドー3DSに関しても最大限努力を尽くして目標を上回りたいと思います。もうピークアウトして、あとは小さくなっていくだけというようにならないように、昨年度の販売数量を上回るようにしていきたいと思います。

 Wii Uに関しては、前期に900万台という年間の目標を掲げましたが、みなさんご存じのような結果になり、一度マーケットの中で温度が非常に冷えてしまっていますから、これに再び勢いをつけて年間500万台、1000万台という台数を売っていくには、一定のハードルを越える必要があります。一定のハードルがあるのに、まだ『マリオカート8』や『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』を世に問わない段階で、もっと強気の数字を出すというのは、堅めの予想をするということと噛み合いませんので、これも「これだけのソフトが揃うのであれば、これぐらいは売れるはずだ」という考えから設定しました。ゲーム機というのは、たった1本のソフトで流れが大きく変わることがあります。みなさんもおそらく記憶されていると思いますが、『ポケモン』が出る前のゲームボーイは、あまり売れなくなっていて「ゲームボーイは終わった」と言われていた時期がありましたが、『ポケモン』というソフト1本でがらっと状況が変わり、ゲームボーイのライフサイクルの中で最高の売れ方をしたというようなこともありました。これは1月の経営方針説明会でもお話ししたことですが、「今のWii UがこれからWii以上に売れるというシナリオを前提にビジネスの計画は立てられない」というのはそのとおりだと思います。ですから、収支のバランスを考えて、コストをしっかりコントロールしながら事業を展開していくということになります。一方で、「もうWii Uは360万台の今期がピークであとはしぼんでいくだけだ」と決めつけているわけではありませんので、ここで勢いをつけて来期以降、期待できる展開になるように努力したいと思います。ただ、今期については、先ほど申し上げたような背景から、ある程度堅めの数字を出しているとご理解ください。


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