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経営方針説明会・2008年3月期 中間決算説明会
質疑応答
Q 11  「『テレビ番組表チャンネル』は、任天堂が作ったらこうなるかっていうのを見せたい」ということだが、その任天堂らしさっていうのをどう考えているのか。
A 11

岩田:

 一つは、誰にでも使える、誰にでもいろんな機能のことがいつの間にか分かるということです。多くの実用品というのは「説明書を読んでもらうと使い方が分かる」というようにできているんですね。また、そういうものを作っている方々はお客様が説明書を読まずに分からないともおっしゃっているとしたら、「説明書を読まないお客様に問題がある」というふうに考えると思うんです。もし、ちゃんと説明書に書いてあったらですけれどね。ところがゲームというのは、こう言うと任天堂の中で説明書を作っている人たちにちょっと申し訳なくさえ思うんですが、基本的には「お客様の大多数は説明書を読んでくださらない」という前提で作っています。「説明書を読んでもらってないから分からないんですよ」って言うのは開発者にとっては負けなんですよ。「読まなくても自然と分かってしまった」っていうように作らないとだめだっていうふうに私たちは考えています。ここが一つ実用品との大きな違いです。もう一つは、「任天堂が作ったらこうなるか」って言ってほしいもう一つの部分は何かと言いますと、社外の方々に「ああ、やられた」って思ってもらいたいということです。この「やられた」っていうギャップ、予想もしなかった嬉しいこと、予想もしなかった便利なことがあって、初めてそのことに人の心が動くというのが娯楽の本質です。ギャップを感じるってことですね、想像よりぐっと良い。そういう状況が生まれませんと人は他の人に、「あれ良かったよ」って言わないんです。悪かったギャップってすごく人に言いやすいんですよね。ひどい目に遭ったっていう話は同情して聞いてくれるし、面白い話なので、すごく伝播力があります。でも良かったっていう話はよっぽどの感動がないと人に言おうとも思わないし、人の心も動きませんので、それをしないとゲームの良い評判って伝わっていかないんです。私たちはそのことに日頃から向き合っているので、テレビ番組表という一見実用な物であってもそういう面を実現したいということです。これを一応私の定義とさせてもらいます。

宮本:

 今の岩田の話しは、「社長と開発がぶれていない」ということがものすごく良く分かって、ほとんどその通りなんですけれども、一つ付け加えると、僕はビデオゲームを作品と呼ばないようにしているんですね。やっぱり個人が個人的な趣味なり、自分の思いで物を作ってそれをお客さんに届けるという意味では作品であることは間違いないんですが、あえて作品と呼ばないようにしています。作品というのは、作り手は作り手の思いを込めて作る。受けてはそれを自由に感じればいいというものだと思うんですけれども、我々が商品と呼んでいるのは作り手の意図通りに使ってほしいという思いがあるんです。特にさっきの『テレビ番組表チャンネル』とかになってくると、実用品ですからできるだけ作り手の思い通りに使ってほしいと。だから自分の子供を誰かに預けるような思いです。だからこの子のことをできるだけ分かってやってほしいと思うと、できたら付いて行きたくなるのですが、やっぱり100万人の方の所に行って一人ずつ説明することはできません。ゲームディレクターってよくモニターをとる時に横についていて一生懸命説明するんです。僕はそれ、やらせません。というのは、実際お客さんに対してはそれができないわけなので、だから自分がいて説明して分かってもらえることを全部一人で遊んでいる人が感じられるように作ろうというのが我々の考え方です。そういうところが任天堂らしい物作りかなと思っております。

Q 12  既に現預金は9000億円を超えており、自己株の価値も相当上がっている。さらにDSとWiiが軌道に乗ったことで、今後数年間は通常の事業で使い切れないであろうキャッシュフローが生まれてくる。このままどんどん積み上げていくのか、何らかの形で使うのか、もしくは還元されるのか、今後の資本政策に対する考え方を教えてほしい。
A 12

岩田:

 まず大前提としまして、DSとWiiはもううまくいったので今後数年間はキャッシュフローは必ず積み上がるという前提に立って私は経営をしておりません。来年何が起こるか分からない、どんなことが起こってもその時に未来を切り開くだけのエネルギーとオプション(選択肢)を持たないといけない、それが会社経営上の責任だと私は思っておりますので、今ちょっと状況が良いから資本政策が変わるということはございません。確かに任天堂は非常に潤沢なキャッシュを持っておりますし、また今時点のキャッシュフローを生み出す力も大きいとご評価いただいていいと思いますし、またそれは配当性向50%というかたちで投資家の皆様にもお返ししているわけですが、それでも貯まっていくじゃないのとおっしゃられれば、その通りです。これまでずっとゲームビジネスのビジネスリスクの大きくなり方のペースが非常に急激でございましたので、そのゲームビジネスのビジネスリスクが急激に大きくなる時は、配当性向50%という方針を掲げつつも一定のやはり将来への備え、将来にいろんなオプションが選べるようにさせてほしいということでやってきています。これは私たち自身が今後のゲームビジネスのビジネスリスクの変化がどうなるのか、あるいは今任天堂がしていること自体が、そもそも我々がやっていることは今、従来のゲームビジネスの枠組みの中にいるのかというと、もうちょっとはみ出しているわけです。すなわち、市場拡大、それからゲームの定義の拡大の両方をしておりますので、5年前の世の中にタイムマシーンで行って「5年後の任天堂のE3の目玉は体重計だ」と言ったら、絶対嘘つきだと思われるわけです。ですけど今はそれが目玉であることについて、世の中がご評価いただけるぐらい変わったわけです。ですからそういう変化をしましたので「単にゲームビジネスの構造でこれまでこうだったから今後こうなるんで、しかるにビジネスリスクの最大はこうだからこれだけキャッシュがあれば十分だ」って一概に言えないところが難しいところなんですけれども、しかしながら、このペースでキャッシュがもし積み上がっていくとしましたら、将来的それほど遠くない将来に資本政策について何か今まで我々が言ってないこと、やってこなかったことを何か踏み出さなければならなくなる可能性はあると思っています。しかし現時点ではまだそれを申しあげるのは早すぎるのではないかと思っています。

Q 13  今回の『Wii Fit』で2つ目の種類となるリモコンが出たが、今後新型リモコンがいろいろ出てくる可能性はあるのか。また、両手両足に付けるなど、一人で2つとか3つのリモコンを使う可能性はないのか。
A 13

岩田:

 今日の時点で今こんなリモコンを作っていますということでお話できるものはないですが、当然のことながら私たちはお客様にいい意味で驚いていただくのが仕事ですので、「どんな可能性があるだろう」、「どんな物を作ったら面白いだろう」っていうことはいつでも研究してますし、常に「こんなテクノロジーを使ったらこんなことができるんじゃないの」っていうことを研究し続けています。一方で、『Wii Fit』で実現したようなことが、おそらく本体に標準で付いていないコントローラの値段・コストとしては、おそらく許容の上限ではないかと思います。まあ『Wii Fit』もあれで8,800円は安いって言ってくださる方と、8,800円なんて高いっておっしゃる方と非常に両極端な反応がございまして、私たちもお客様の見る視点によってすごく違うんだなともちろん思いましけれども、ただコストとしてあれぐらい掛かるものっていうのはなかなかたくさんの方に受け入れていただくのが難しいので、今後次々と同じようなことはできません。そしてたくさん普及しなければ世の中は変えられないわけですから、私たちはたくさんの方に使っていただける物を作りたいと思っています。その意味ではコスト的にはあれほどは掛けられないということになります。すると確かにリモコンが4つあって、それを身につけて全部無線で動いてたらいろんなことができるんですけれども、「それっていくらで売れますか」っていうことが次に目の前に出てきて、何か技術的なブレークスルーが起こらないとリモコンを一人当たり2つ使う、4つ使う、8つ使うっていう遊びはなかなか難しいと思います。ただ10年前にはコントローラをワイヤレスにするっていうだけで、「そんなの無理だよ」ってきっと言われていたわけですから、まあ将来は変わるかも知れませんね。

宮本:

 今回の『Wii Fit』のバランスWiiボートっていうのは結構特殊で、あれ自体が無線機能を持っていて新しいリモコンとして作ったわけですね。ザッパーや、今度は『マリオカート』でもハンドルアダプターを出します。ザッパーやハンドルの場合はほとんどホルダーだけです。そのちょうど中間で、ヌンチャクをさすところに何かさすという形を、元々提案としてお話ししていると思います。そういうかたちでの周辺機器っていうのは比較的コストを安く抑えられますし、サードパーティさんからそういうアイデアが出てくる可能性もありますし、そういうものが今後展開できる可能性は高いと思います。

Q 14  2000万台というゲーム機の普及台数の壁を超えるには新たな生活をより豊かにする提案が必要ということだが、その生活をより豊かにする提案っていうのは、これまでのゲームジャンルにはなかった料理とか英会話とかをゲームにどんどん取り込んでいって生活を豊かにさせるということなのか、それともDSのハード自体を全く新しいものを出して、完全にインフラにしてしまうという考えなのか。
A 14

岩田:

 まず、お話しいただいたことは私は両方必要だと思っています。両方のアプローチをしないとDSの伸びというのは、これから鈍化していってしまうと思います。「今までこれでうまくいってたんだからこれからも同じように、定期的にタッチジェネレーションを出して、定期的に新作ソフトを出せば、これからも去年から今年にかけてと同じように売れるよ」っていうふうには私たちは全然思っていなくて、「やっぱり次の手がいる」と考えていますし、「そのためにはもっと他にテーマはないのか」と追い求めています。ちょっと前までは、犬を飼うことも、脳を鍛えることも、英語の勉強をすることも、料理を作ることもゲームじゃなかったわけですが、今は「ゲームかもね」って言っていただけるように変わりました。その次に、「じゃ、もっとそういうことで取り込めることはないの」と考えているわけです。今度、『Wii Fit』という健康をサポートする、健康を応援するって言うことをテーマにしますが、健康っていう周りにはものすごくたくさんのテーマがあるわけですね。ですから、「そういうことでできることはあるんじゃないか」っていうのはもちろん思いますし、一方で、せっかく一つのアーキテクチャーで2000万台もある機械なわけです。無線通信ができて、どこにでも持って行くことができて、一つのアーキテクチャーで、普及台数がこんなに多くて、しかも誰でも使えますと、こんな機械は史上初めてできたわけですからインフラにしないともったいないと思っています。ただ、今までのビジネスモデルではないわけですね。すなわち、任天堂がROMカートリッジを売るとか、ソフトメーカーさんにソフトを作っていただいて、作っていただいたソフトを任天堂が製造して、ソフトメーカーさんに売っていただくというようなビジネスとはまた変わるわけですから、当然、その展開を始めるには少し時間が掛かりますし、当然その接続拠点の整備とか、そういうことも含めて必要だと思っています。ただ、いろんな方がいろんなことを想像できますけれども、例えば、鉄道の駅に行ったら必ずDSが何かの役に立つとしたら、テーマパークに行って何かの役に立つとしたら、美術館に行ったら必ず何かの役に立つとしたら、そんないろんなことを一つ一つ考えただけでもいろんな可能性があるわけで、そういうことを来年にはいくつか実例をお見せできたらいいなというふうに思っています。

Q 15  私はWiiチャンネル全体に大きな可能性を感じている。『ショッピングチャンネル』には、バーチャルコンソールがあって、今度Wii Ware、そして今回、それにプレゼント機能を追加される発表をされたが、ゲームだけではなくて、例えばポケモンの映画を配信するとか、テレビの一話を配信するとか、ゲーム以外のコンテンツの配信はしないのか、また任天堂以外の商品、コンテンツの配信はしないのか、他社が使いたいと言えば使わせるのか。
A 15

岩田:

 プラットフォームというのは、常に鶏が先か卵が先かみたいな所がありまして、普及台数やそれを使ったビジネスの規模が一定に達していない段階で早くいろんなことをやりすぎますと、それは「一体何をする物なのかよく分からない」とか、「サービスを始めたけれども、お客さんの数がものすごく少なくて、結果として、ビジネスをされた方が収益を上げられない」というようなことが起こってしまう可能性があるんです。それと、もし例えば無料でテレビが見られ、映像が見られますというサービスであれば、多くの方がすぐに利用いただけるんじゃないかと思うんですが、これだけ払って見てくださいということをやるとすれば、そこにはやっぱりハードルがあると思うんですね。今、おっしゃったことはどれも技術的には実現可能で、Wiiチャンネルが将来、ポテンシャルをどんどん発揮していった時に、ほとんど全てありうるシナリオだと思います。しかし、ありうるシナリオだからといって、一遍にバッと門戸を広げて、どの仕事も何かうまくいかないというふうになってしまっては、意味がありませんので、私たちは順番にやりたいなと思っていまして、差し当たって、今まずチャンネルをもうちょっと充実させようということで11月、12月と増やしていくわけなんですが、来年には、「あ、チャンネルにはこんな使い方もあるのね」というようなことを是非実現したいなと思っています。これは、具体的に「最初にやることはこれにします」ということがはっきりした時点で、皆さんに正式にお話ししたいと思います。


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