株主・投資家向け情報

2009年1月30日(金)第3四半期決算説明会
質疑応答
Q 6  自己株の買い戻しに対する現在の考え方をお聞きしたい。まだピークアウトではないと感じられるが、一方でいま御社株がストップ安になっていて、売りが売りを呼んでいる状況の中で、自己株を買わないということは、まだ自身の判断として株は高いというメッセージにもなるので、確認したい。
A 6

岩田:

 自己株の買い入れをするかどうかということについては、もちろん経営上の一つの選択肢だと思っていますので、まったくそれを排除するつもりはございません。

 ですが一方で、いま、いつするつもりなのかとか、いくらになったらするのかということを申しあげるものでもないと思っています。常に選択肢として念頭に置きながら考えていますが、いまの株価について、高いとか、安いとかということをコメントするのは私の役割ではなくて、市場の皆様なので、それは決して、いま自己株を買っていないイコールいまの株価はまだ自分たちが思っているより高いのだという意味でないことはご理解ください。私もこの決算であれば、もう少しご評価いただいてもよいのではないかなというふうに思っています。

Q 7  2006年4月以降9回連続で上方修正をされ、今回は昨年の10月に次ぐ2回目の下方修正ということで、たとえが不適切な表現かもしれないが、マリナーズのイチロー選手のように、毎年200本安打を打ち3割以上の打率をキープしていても、数試合ヒットを打たないとシアトルで事件扱いにされるのが、今日の株価の反応なのかなと思っている。
 欧米のハードの実売のデータを見せていただいたが、ソフトも同様に伸びていると思っているので、中身はどうあれ、自社ソフトであれ、他社ソフトであれ、ソフトの通期予想数量の下方修正は不要ではなかったか。数%の修正ということなので、そこを誤差ととらえず、あえて下げたということに何か背景があるのかをお聞きしたい。
 それともう一つ、来期以降の欧米のDSハードの普及余地において、確かにPS2対比、人口対比という意味で、数字上はそのとおり余地があると思う。日本と特にアメリカでの違い、たとえば日本では電車の中で、みんな携帯電話をいじっているがアメリカでは、寝ている人がいないし携帯電話も触っていない。逆にiPod、iPhoneであったり、最近だとブラックベリー、キンドルであったり、こういうガジェットをいじっている人が多い。なので、プロモーションは当然その地域ごとにきめ細かくやっていると思うが、ソフトの品揃えも含めて、地域別の攻略法というのが必要なのかどうかをお聞きしたい。
A 7

岩田:

 まずソフトの下方修正はいらなかったのではないかということについてですが、私どもがその前提としているソフトメーカーさんのヒアリングに、10月末時点と現時点での変化がございましたので、はっきりと変化があるならば、開示するのがあるべき姿勢だろうと考えました。「なぜそんな損なことをするのだ」という見方も、確かにあるかもしれません。が、本来の開示の考え方というのは、「できないことをできます」と言い張るのではなくて、そのときに「自分たちがこう申しあげるのが、自分たちのビジネスの実態を最も正しく表すのだろう」ということを正しく開示して、短期的にはネガティブであっても、長期的に市場の皆様と信頼関係をつくっていくんだということが、私の考えるIRの価値観です。確かに人によっては、「任天堂はバカ正直だ。こんなときにこんな損なことをすることはないじゃないか」という見方があるのかもしれませんが、そのことがエスカレートすれば、粉飾になっていくわけです。私は今日の市場の評価は大変シビアであると思いますし、私も多くの方の期待を裏切ったという意味で、大変遺憾に思っていますけれども、われわれが集めた現時点で最も妥当と思われる数字を予想として発表するというのが、やはりあるべき姿だろうというふうに私は思っています。

 それからもう一つ、いまご指摘いただいたように、国による文化の違いというのがあります。おそらくDSがユーザー拡大を実現するのに要した時間の差は、まさしくご指摘のライフスタイルの差というのが非常に大きく影響していると思います。

 日本では早期に電車の中でDSに触る人を見かけるということが一気に増えたことで、興味のない人も、「あれは何なんだろう」、「あれがあの噂のDSか」ということで、認知が非常に速いスピードで伝わったのに対して、電車の中で寝ている人がいない、携帯電話をいじっている人がいないというだけではなくて、そもそもアメリカには電車に乗らない人がいっぱいいらして、車で通うという生活をしている人にとって、移動中の暇つぶしの種類が違ってきます。ですから携帯型ゲーム機が生活の中で、1日の時間の中で、どこに入るのかということがおそらく違うというふうに思います。

 一方で、これはわれわれが大昔に、『ドンキーコング』や『スーパーマリオ』をつくったとき、『ポケットモンスター』が生まれて、それが世界に広がったとき、そして『ニンテンドッグス』ができたり、『脳トレ』ができたときに繰り返し経験してきたことなんですが、毎回のように、「これは海外で売れるのか」っていわれました。

 ただ日本人が本当におもしろいと思い、日本のお客様が受け入れてくださったものは、上手に伝えれば、世界に通用することが非常に多かったのです。もちろん日本で売れたもののすべてが、必ず海外で売れると申しあげたいわけではないのですが、人間がおもしろいと思うという、その共通する本質の部分を持っていれば、それは文化の違いを越えて、言葉の違いを越えて乗り越えられるんだということです。私はいまこのように申しあげていますが、「『脳トレ』って、日本で売れてるんだけど、アメリカで売ってみない?ヨーロッパで売ってみない?」と、私がアメリカやヨーロッパの人たちに、セールスマンのように活動していたころ、『脳トレ』が、まさか海外で日本の倍も売れるとは夢にも思いませんでした。『ポケモン』を持っていったときもそうです。「この黄色い可愛らしいモンスターじゃ(現地では受け入れられないので)ダメだよ」といわれました。

 ですから文化の違いというのは、実はけっこう乗り越えられると思います。ただ伝え方が違うという部分があるので、プロダクトそのものを変えるのではなくて、プロダクトの伝え方を変えるということがポイントなのではないかなと私たちは思っています。

 一方で、これだけユーザー拡大を目指していくと、アメリカやヨーロッパのマーケットを最初から対象に考えたユーザー拡大型商品というのがあるんじゃないかということも考えています。日本にはそういう習慣がまったくないのでニーズがないんだけれども、海外にはそういうニーズがものすごくある、というものをテーマとしていくつか挙げていて、そのテーマに基づいて、アメリカ発のタッチジェネレーションズ商品、ヨーロッパ発のタッチジェネレーションズ商品というのがあるんじゃないのということで、そういうものの開発もトライしています。これがうまくいくかどうかはわかりませんが、おそらくその最初の1つ、2つは、今年中に市場に問うことができるのではないかなと思っています。こういうものがまた花開くと、われわれの作戦も次の段階に入るのかなというふうには思っています。

Q 8  CSRの観点についてお聞きしたい。最近各社でCSRオフィサーをつくったり、御社もCSR報告書をつくられたり、前向きな取り組みがされている。特に御社は自社の工場をお持ちじゃなく、ファブレスということで、基本的にパーツもサプライヤーからの調達で、当然厳しいガイドラインでチェックをされていると思うが、特に欧州で環境についての規制がどんどん厳しくなっていく中、現状のチェック体制を、どれぐらいお金をかけてというか、あるいはヒューマンリソース的にきちんとしていかないといけないと思っているのか、現状認識をお聞かせ願いたい。
A 8

岩田:

 まず任天堂はCSRを何だと思っているのかということからお話ししたいんですが、これはうちのCSR報告書に私自身の言葉として書いているのですが、「任天堂にかかわるすべての人を笑顔にする」が、任天堂が目指すべきCSRだというふうに思っています。

 「任天堂にかかわる人すべて」というのは、言い換えるとステークホルダーということになります。ですからお客様はもちろん、また株主の皆様はもちろん、取引先の方々も、そして社内の従業員たちも、そして地域社会も、任天堂とかかわる人たちが、任天堂があることで笑顔になるという状況にしたいと思っています。「かかわる人が笑顔になることにつながるなら任天堂がやるべきことで、そうなることにつながらないなら任天堂がやるべきではないことなんだ」ということを、私は社内で繰り返し社員に対して話しています。

 なるべくCSRの本質をシンプルに語ろうと思ったら、自分なりにこういう結論に行き着いて、また、たまたまわれわれの製品がお客様を笑顔にするということが非常にわかりやすく、多くの方に共感をいただきやすいので、この説明がいいなと思っているのですけれども、当然そのことの中には環境への配慮ということが含まれます。

 任天堂は世界中でビジネスをしておりますので、いまやはり環境関連の規制においてはヨーロッパの国々で決まる規制が大変厳しくて、それを満たすようなかたちで進めていけば、多くの場合は世界で大丈夫ということなので、その規制にあわせて、社内でいわゆるグリーン調達をしようということで、そのためのチームがあって活動しています。

 ちなみに一つの製品には1,000個とか、もっと多い種類のパーツが使われていて、そのパーツのサプライヤーさんが複数あって、そしてその複数のパーツはどんどん改良が加わったり、ロットが変わったりしていきます。そしてつくったサプライヤーさんは、「それは前のモノとまったく同じ品質ですよ」とおっしゃるんですけど、調べてみると含まれている物質が変わっていたり、そのサプライヤーさん自身が管理しきれないところで、よけいなものが材料に混ざっていてということも起こりえるので、これはもうどんどん調べるしかないと取り組んでいます。

 なので、当社の宇治工場(製造本部)には、製品技術部という部門があり、工場で直接モノはつくってはいませんが、製品の評価、あるいはグリーン調達上の分析を、かなり大きなマンパワーを割いてしておりますので、われわれは製造は外投げなので外に投げて何もしていないというふうなご理解がもしあるとしたら、それはまったくの誤解です。

 ちなみに、そのことについて、私たちは求人向けにも「社長が訊く」という企画を展開しています。外から見ると任天堂の仕事にはわかりやすい仕事とわかりにくい仕事があって、製品開発とかはわかりやすいんですが、たとえばデバッグであるとか、いまのようなグリーン調達であるとか、あるいはパッケージのイラストを描く仕事とか、そういう外から見るとわかりにくい仕事を紹介するために、採用広報のページに「社長が訊く〜任天堂で働くということ〜」というページをつくっていて、その中に製品技術部の人が出てくる回があるんですが、そこでグリーン調達の話を書いていますので、もしご興味があれば、ぜひご覧ください。

Q 9  DSiのビジネスについてお聞きしたい。国内は出だしから非常に好調のようだが、実際にどういった属性のお客様が中心に買われているのかと、当初の御社の狙いである新規のユーザーにもDSiが届いているかどうかと、その評価を教えていただきたい。
 また、現在のDSiの生産の規模および今後の生産計画を可能な範囲で教えてほしい。それに関連して、海外でのDSiの市場投入時期やDS Liteからの置き換え、両者の生産の割合がどのように変わっていくと考えているかをお聞きしたい。
A 9

岩田:

 まずDSiのお客様がどういう人かということについてですが、DSiのことを一番早く理解する人というのは、どういう人かといいますと、もちろんゲームの情報を能動的に集められる方々です。「ああ、今度任天堂はこういう違う機械を出したんだな。それはちょっと興味があるから触ってみよう」とおっしゃるような方々が、先に行動されますので、最初は、実はすでにDSをお持ちの方の割合が多くなります。

 「それでは単なる同じお客さんが買うだけだからゲーム人口が増えないじゃないか」というふうにお感じになるかもしれませんが、そのお客様には家族がいらして、その家族の別の方に自分専用のDSが回ってくるチャンスになるわけです。ですから現実に直接買った方がどういう属性かという認識だけではなくて、買った結果DSユーザーというのはどういうふうに広がり、どの人がどのように自分専用のDSを持つように至っていくのかということのほうを見ないといけないと思っています。

 いま申しあげたのは、実は最初に発売して1ヵ月ぐらいの話でして、これが2ヵ月目、すなわち12月に入りますと、(お客様の層が)ぐっと広がっていきます。最初のうちは「何かやっぱりゲームのことに詳しそうな人が多く買いに来られていました」といわれていたのですが、12月になってから、お客様の層が急に広がりまして、「非常に多彩なお客様が売り場に来られるようになった」と聞いています。そしてそのお客様は、ご自身でゲーム情報を能動的に集める方ではないようで、ホームページを事前に見ているわけでも、カタログを事前にしっかり調べておられるわけでも、あるいはゲーム雑誌を読んでおられるわけでもないようです。そういう方たちが来られて、最初は「これは何が違うんですか」とけっこうお店で聞かれているそうです。それで両方のことを聞いて、実際に触ってみると、「ああ、なるほど、こちらが魅力的だ。これだけの値差ならこっちを買おう」といって、DSiを買われる方が多くなったと聞いております。

 DSiの発売後も、DS Liteは一定数売れ続けているのですが、DS Liteを選ぶ二大理由は、手持ちのアドバンスのソフトを遊びたいのでDS Liteがいいという方です。もう一つは色で、DS Liteの方が多彩なので、そちらがいいというふうに選ばれる方です。それ以外の方々は、かなりの割合でDSiをお求めになっていたというふうに聞いています。また最近では、いままでまったくDSは触ってこなかったというような方がお店でDSiを買われているということも、報告を受けております。

 生産規模につきましては、いま数字を申しあげると、それが独り歩きして、それに12を掛けて年の販売数ということになりかねないので、これは海外で発売し、その勢いの見極めをしてから、これぐらいの規模で、これぐらい生産しますということを申しあげたいと思いますので、今日はご容赦いただきたいと思います。

 それから海外の導入時期ですが、来期の前半をイメージしております。そしてDSiとDS Liteの割合ですが、これはこれまでも感じていることですが、日本での初代のDSとDS Liteでは、DS Liteの方が価格が高かったのですが、需要はどんどんDS Liteに一極集中いたしました。それからヨーロッパも同じく値差があったのですが、これはかなり長い間併売いたしました。すなわち違っても安い方がいいというお客様が相当数いらしたんですね。それからアメリカは、実はそのころDSの勢いが非常に弱くて、DS Liteに高い値段がつけられず同じ値段でしたので、DS Liteにかなり早いサイクルで収束しました。

 今回、現状の為替水準も含めて考えますと、DSiをDS Liteと同じ値段で海外で売れる見込みはゼロです。ですから、必ず値差ができると思います。その値差がある中で、アメリカやヨーロッパはおそらく両方のハードがしばらくの間併売されることになると思います。その割合については、今日はまだ値段を対外的に申しあげておりませんし、また、その発表のあとのお客様の反応を見極めたあとでないと規模、通年の売れる規模というのは申しあげられませんので、今日のところは両方併売するのではないかなというところまでとさせてください。

Q 10 Wiiのハードウェアの通期予想を2,750万から2,650万へと削減されたが、これは100万の在庫があるという意味か。
A 10

岩田:

 これは単純に、現時点で100万の在庫があるという意味ではございません。当然毎月つくる数量というのは、最大の枠というのは決まっていますが、われわれの方で細かい調整ができますので、その中で3月末までに任天堂グループの外に出荷する台数が、現時点ではこうなる見込みであるということです。(昨年の年末に)日本に割り当てていた量をもっと海外に割り当てられていたら、販売台数がもう少し増やせたというのは、結果論としての反省材料です。


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