株主・投資家向け情報

2009年5月8日(金)決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

そして、もうひとつ、ゲーム人口の構成が日米では大きく異なるということがあります。これは、先ほどご紹介した、任天堂のゲーム人口調査の分析でお話しします。


先ほど、任天堂の調査結果をお見せしたときに既にお気づきと思いますが、スリープユーザー比率がほぼ全人口の1/4に達する日本の市場と、わずか7%しかないアメリカというのは大きな違いです。これは、言い替えれば、かつて「ゲーム離れ」が起こっていた日本と、これまで起こっていないアメリカという違いでもあります。また、アクティブユーザー比率の高まり、言い替えればゲーム人口の拡大が、DSを軸に動いた日本という市場と、Wiiを軸に動いたアメリカという違いもあります。すなわち、日本と海外の市場には、共通点もありますが、環境が大きく違う点もあるわけです。アメリカ市場が、そのまま日本市場の後を追う、という分析は、あまりにも単純すぎるのではないかと私たちは考えています。実際にDSとWiiのお客様の年齢別・性別の構成を日米で比較してみたいと思います。


これは、私たちの直近の調査による、日本のDSのお客様の構成です。非常に幅広い年齢のお客様に、男女ともバランス良くDSを楽しんでいただいています。


これは、アメリカの最新の調査におけるDSのお客様の構成です。日本と比べると、大人層の厚みがまだ十分に拡大しておらず、そこに市場拡大のチャンスがあると考えられます。先ほどお話ししたとおり、対人口比では、DSの普及率は日本のまだ半分なのですから、まだまだ拡大の余地があると私たちは考えています。


一方で、こちらはアメリカの最新の調査におけるWiiのお客様の構成です。年齢による偏りがなく、非常に幅広い年齢で、男女のバランスも良く、幅広いお客様に楽しんでいただけていることがわかります。


そして、これが日本最新の調査におけるWiiのお客様の構成です。アメリカと比較すると、子供さんとその親御さんの年齢層においてお客様が多い、いわゆる「ふたこぶラクダ型」のプロポーションになっています。DSでも、普及の初期には、このようなプロポーションだったのですが、普及が進むにしたがってバランスが変わり、先ほどお目にかけたように、幅広い年齢層のお客様にバランス良く楽しんでいただけるように変わっていきました。私たちは、日本でもアメリカと同じようなお客様のプロポーションを目指して普及を進めてきたのですが、日本では、必ずしもそれが期待通りに進みませんでした。
それは、別の角度からの分析でも確認できます。


それは、Wiiのサードパーティソフト、ソフトメーカーさんのソフトの存在感が、日本と海外で大きく異なるということです。

日本では、「任天堂ハードでは、売れるのは任天堂のソフトばかりで、ソフトメーカーさんのソフトが売れない」というご指摘をよくいただいていました。DSの普及の初期にもよくこのようなご指摘がありましたが、それはDSの普及と共に変わりました。しかしながら、Wiiについては、今でも、そのようなご指摘を引き続いていただいています。


これは、以前にもご紹介したことがありますが、DS発売以来、任天堂やポケモンのソフトが市場全体に占める割合がどのように推移したかを示すグラフです。最新のデータで更新してあります。このグラフでハードの発売から約2年は、任天堂の比率が非常に高かったことがおわかりいただけると思います。以前にもお話ししたことがありますが、私たちは、自社ソフトいわゆるファーストパーティソフトの使命は、「ハードを購入してでも遊びたい」と感じていただけるだけの魅力あるソフトをプラットフォーム普及の序盤に次々と投入し、ハードが順調に普及していく流れを作ることにあると考えてきましたので、ハード発売から2年ほどは、特に重点的にソフトを展開するようにしています。この時期、自社ソフトの市場占有率は高まってしまう副作用もありますが、WiiやDSのような全く新しい概念のプラットフォームでは、自分たちが市場を切りひらく必要があると考えて、そのように進めてきました。そして、ハードが一定数普及した後は、ソフトメーカーさんから多彩なソフトが登場するようになり、それに伴って、お客様の年齢構成バランスも、より幅広くバランスが良くなっていくという流れが、DSでは順調に機能したわけです。


しかし、日本におけるWiiでは、DSで機能した流れ通りに推移しているとは言えません。発売から2年を経過した前期の下半期も、ソフトメーカーさんのソフトの割合を大きく高めることはできませんでした。DSとWiiでは、ソフトメーカーさんがソフトを開発されるのに要する時間の長さが異なることや、Wiiという全く新しい思想のハードでのソフトづくりに苦労されているソフトメーカーさんがおられるということも耳にしています。このようにソフトメーカーさんのソフトによる市場形成がまだ機能していない日本の市場の環境の中で、今年の前半に新ソフトによる新たな提案することがタイムリーにできなかったことが、現在の日本のWii市場の勢いが失われた要因になっていると分析しています。日本では、この夏に『モンスターハンター3(トライ)』という大型ソフトが登場しますし、その後も有力ソフトがいくつか登場してきますので、これを重要な局面と捉えて、Wiiにおけるソフトメーカーさんのソフトの存在感を高めることにチャレンジしていきます。
その一方で、アメリカの市場では全く様相が異なります。


アメリカでは、海外のソフトメーカーさんが、Wii発売直後から積極的にWiiのソフトを展開されており、ミリオンセラーのソフトも複数登場しています。2008年暦年において、サードパーティソフトが最も売れたプラットフォームはWiiであった、ということも、NPDのデータで明らかになっています。

このように、Wiiにおけるソフトメーカーさんのソフトの充実度やその市場形成の状況は、日米の市場で大変大きく異なっています。このことが、日米のWiiの勢いの差に大きな影響を与えているのではないかと、私たちは分析しています。



このページの一番上へ