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2009年10月30日(金)経営方針説明会/第2四半期(中間)決算説明会
質疑応答
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Q 9  「Wiiの間」の番組評価の仕組み、広告主サイトへのリンクなど地上波テレビにはない仕組みについて非常に注目しているが、現時点で、広告主や番組制作者からどのような評価を受けているか教えてほしい。
A 9

岩田:

 テレビというのは、通常、視聴は受動型です。受動型というのはチャンネルを触る以外は黙って見ているわけです。それに対して、動画配信型というのは、能動視聴なわけです。すなわちお客さんが何か選ばないと始まりません。

 それから、「Wiiの間」が、お客さんが動画を見終わった後、「投票してください」ということに対して、「うっとうしい」とか「それはあまりいいとは思わない」とおっしゃる方もいます。一方で、あのような形で「能動であるから評価に価値がある」ということを言っていただけるのも事実です。実際にどんな年齢層の方が何人、その動画をどこまで見て、途中でやめたら途中でやめたことまで分かるわけで、そして、どう評価したのかというのが映像制作者に行くわけです。

 これは映像制作者の方からすると、「お客様の反応が知りたい」と強く思っておられるほど、ものすごく強力な刺激だそうです。現実に「Wiiの間」の関係者から聞きましたけれども、意図通りに評価をいただけなくて悔し涙を流される制作者の方、あるいは、評価されたことにものすごく喜ばれる制作者の方々がいらっしゃるそうです。これはちょうど任天堂の社内でクラブニンテンドーという仕組みができて、お客様の生のコメントをたくさんいただけるようになり、それを制作チームに回すと、制作チームはそれをものすごく真剣に読むんですね。やはり、作った人はお客さんにどう受け取られたかを知りたいんですよ。もちろん、我々は人に驚いてもらうのが商売なので、お客さんの言う通りにしてもお客さんには驚いていただけませんから、言われたことを全部そのまま反映しようとは思っていないのですが、どう感じたかはすごく知りたいんです。私たちは「ウケたくて仕事している」わけですから、ウケてないなら「ウケていないという現実」を知りたいし、ウケたなら「どこがウケたか」を知りたいわけです。そのことが自分たちのクリエイティブの質を高めることにつながると思っていますので、そういう点で、「そこと向き合ってもいい」と感じていただいている映像制作者の方は非常にその特徴に対してポジティブに熱く反応してくださいます。もちろん一方で、「そんなのはけしからん」とおっしゃる方もいらっしゃらないわけではありません。これは完全に二分されるという感じがします。

 それから広告主の方ですが、これはインターネット広告とテレビ広告の間にあるような、不思議なメディアであると感じていただけていると聞いています。そして、これは私たち自身が「Wiiの間」のコンセプトを考えた時から感じていることなのですが、『仮説の検証装置』として非常に面白い特徴を持っていると思います。どんなものを見ていただいたら、どんな反応が返ってくるかというのが、どんどん速いサイクルで試せるわけです。その可能性に気づかれて、「こんなことを試してみたい」、「あんなことを試してみたい」とか、今までのインターネットでやったどんな方法よりも「反応がダイレクトに返ってきて面白い」というようなことを言ってくださる広告主さんもいらっしゃいます。

 一方で、私は自分たちのビジネスについて「景気のせいにするのは一番やってはいけないこと」と思っているので、経済の環境が悪いからどうこうという話は極力しないようにしたいんですが、「Wiiの間」についてはちょっと気の毒な面があって、恐らく、考え得る最悪のタイミングで「Wiiの間」は始まったと思うんです。と言いますのは、あらゆる企業さんが広告費を絞らないといけないというタイミングで始めたこと、そして、「新しいことは原則凍結である」というようなことを、広告費を非常にたくさん使われる会社さんでもおっしゃらざるを得ないぐらい先が見通しにくい状況の中で始まったこと、という面があるからです。ですから、もしそういう環境でなければ、もっといろいろな会社さんに既に試していただけていたと思います。担当者の方がものすごく気に入っていただいていても、会社の経営陣を説得しようとすると、費用対効果の証明を求められるわけです。でも、始まっていないので証明ができません。自分たちが実際に始めてみると証明できるかもしれないんですが、「費用対効果を証明できないものは始めてはならない」という企業さんもいらっしゃるようで、その意味では、新しく広告主さんにどんどん試していただくという流れが、我々の期待通りになっていないことは事実です。しかし、『仮説検証装置』としての可能性というのは、今までのメディアにない可能性として、手ごたえを感じています。これからもう少し環境が変わってきて、「こういうことに積極的に取り組んでみよう」、「新たな可能性にチャレンジしよう」という気運が高まった時には、非常に面白い存在になり得るのではないかというのが私の見方です。

Q 10  アップルのiPodは、電話の力を借りてiPhoneとなって化けるチャンスをもらった。eリーダー(電子ブックリーダー)も3G(第3世代の携帯電話方式の総称で、現行のデジタル携帯電話の通信方式)につながり、今はアマゾンのキンドルなど、かなりのスピードで売れている。たとえば任天堂も無線とつながることで、携帯ゲームが化けるきっかけになると考えているのかどうか知りたい。任天堂のプラットフォーム、コンテンツは、無線との相性がいいのか。
A 10

岩田:

 私は、iPhone型のビジネスよりは、キンドル型のビジネスの方が興味があります。それはなぜかと言うと、お客様が通信費を負担するのではない、新しいビジネスモデルを提案しているからです。

 iPhoneが携帯電話の中で一定のシェアを持ち、さまざまなスマートフォンと呼ばれるプロダクトの中で最も成功したものであると、私自身もユーザーですけれども、そうなったというのは分かります。しかし一方で、iPodはもともとビジネスも大きかったので、iPodのビジネスがそろそろ限界に到達した時に、アップルさんは実にいいタイミングで電話への拡大を図られたな、というのがむしろ私の見方です。iPhoneで化けたというより、もともと化けていて、化けていたものが成長を鈍化させずに済んだというのが、実態ではないかと思います。ただ、いかんせん、お客さんは毎月何千円を払える人だけです。毎月何千円を払える方というのは、実は任天堂のお客様と相性が必ずしもよろしくありません。なにせ我々が作っているのは娯楽のための製品ですので、それに「向こう2年間、毎月何千円払うのを約束してください」というモデルは、なかなか相性が良くありません。

 一方で、キンドルのビジネスモデルはちょっと面白くて、いったんハードを買うと、中に3Gの通信機能が入っていて、いわば携帯電話のパケット通信ができるわけですが、お客さんは(通信のためには直接)お金を払わないんです。本をダウンロードで購入すると、その時に必要なパケット代は本の代金の中に入っているというモデルです。ただ、収益が上がっているわけではないと読んだことがあります。それでも、お客さんが負担しないでできている。しかも、最近はアメリカだけでなく、世界中に展開されています。日本のたとえばキャリアさんが、あのモデルにハッピーかどうかは私は分かりません。きっとどちらかというと、アンハッピーでしょう。ですが、うまくモデルをつくられたなあと思います。

 我々も、別に3Gのテクノロジーに恨みがあるわけではなくて、お客様が毎月お金を払うという構造ではない形で、何か面白いモデルが組み立てられたら、無線とつながればできることは増えますので、そういう可能性は否定いたしません。ただ現実に、それをしようとすればハードのコストアップも伴います。携帯ゲーム機はお客様が買える値段にしなければなりませんが、「任天堂は新モデルを出すたびに値段上げてるぞ」というご批判もいただいているようですので、「携帯型が据置型より高くていいのか」というようなことも含めて、未来の可能性の1つとして、無線とつながる可能性やその技術動向、そしてお客様が毎月お金を払うのではない形で、その技術をうまく使ういい方法というのを、我々なりのソリューションとして考えることによって、通信と携帯ゲーム機というのは本来相性がいいですから、その中で、未来のどこかで答えを出したいと思います。

 以前から私は、「携帯電話は付けないんですか」というご質問には、「いや、お客さんが毎月お金を払わなくてよくなったら付けてもいいですよね」とよく申しあげているんですが、その根っこは変わっておりません。

Q 11  今期2010年3月末は、営業利益が対前年でマイナス33%の目標だが、来年もそうならないという根拠はどこにあるのか、来期の見通しを教えてほしい。
A 11

岩田:

 来期の見通しを具体的に語るには、やはり、今年の年末商戦を経て、市場がどうなるかを見極めた上でないと具体的な数字は申しあげられません。

 一方で、私たちは、いわゆる市場のプラットフォームサイクル説、「何年周期でビジネスというのは回っていて、任天堂はピークを越えたので、これからどんどん下がっていく」という考え方にはくみしておりません。言い換えますと、来年下がっていくというつもりで計画を立てているのではなくて、どうすれば来年、増収増益が達成できるのかということを前提に考えています。ただ、具体的に、来期の業績はどういう予定ですと申しあげるのは、まず、この年末商戦が済み、それを分析し、そして恐らく、次の本決算が出た後、来年の春に具体的な数字を申しあげることになると思います。

Q 12 現在SNS上のゲーム、ソーシャルゲームというのがグリーさん、ミクシィさん、DeNAさんとか、海外、FaceBookも含めてかなり広まっており、プラットフォームの競争という意味で影響を与えているのではないかと思うが、こういったSNSの事業者は御社から見て、新たな競争業者が出てきたという認識はあるのか。また、将来に与えるインパクトはどうか。
A 12

岩田:

 いわゆる携帯電話の無料ゲームというものは、無料でたくさん存在するわけですから、もし、そこで得られる面白さや満足と変わらない程度のものしかDSで提供できないとすれば、我々のビジネスというのは瓦解すると思うんですね。これは、ずいぶん前に携帯電話でゲームができるようになった時に、「これから携帯ゲーム機は携帯電話に飲み込まれていくだろう」と言われていたゲームボーイアドバンスの時代の議論と似ていると思うんです。

 ですから任天堂がやったようなことの中から、今の携帯電話で実現できそうなことを、どんどん無料ゲームとしていろいろな方が作られる。そして違うビジネスモデルでビジネスをされる。それは、ある意味新たな競争かもしれませんが、一方で我々は彼らとどう向き合うかという意識よりは、「どうすればお客さんはわざわざ高いお金を払ってまで、任天堂プラットフォームのソフトを買っていただけるだろうか」、「そこでしかできない魅力的な体験とは何だろうか」、それが、携帯電話の無料ゲームで味わえるようなもの、あるいはiPhoneのたくさんあるゲームでできることと大差なければ、任天堂の未来というのは暗くなるでしょうし、「我々の機械ではできる、独特の魅力と面白さがある」ということが実現できれば、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDSが携帯電話に飲み込まれなかったように、我々のDSそして将来の展開が先ほどおっしゃったようなSNS型のゲーム事業に飲み込まれることはないと思います。

 ただそれは、彼らだけをライバルに見てもしょうがないわけで、我々は世の中にある、ありとあらゆる娯楽をライバルと見た中で、「自分たちの提案するものにお金と時間を投じてもらえるだろうか」、ということを考えてやっていますので、特別に特定のサービス、特定の製品を、「これはライバルだ」「これは脅威だ」という発想はしておりません。「いかにその場にとどまらないか」ということだと思っています。もし、ゲームボーイアドバンスの時代のまま任天堂がそこにとどまっていたら、DSで起こしたようなイノベーションがなければ、きっと、任天堂は今の地位にいないわけですし、それはこれからも同じだと思っています。

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