株主・投資家向け情報

2011年4月26日(火)決算説明会
質疑応答
Q 7

 携帯機の多様化についてお伺いしたい。3DSは御社が全力を注いで作ったハードだと思うが、もしかしたらDSよりも間口が広くないかもしれないし、4、5年前みんながDSを買った時とは少し環境が変わっているかもしれない。1人1台を目標にするなら、それに合わせて携帯機も多様化すべきように思うがどうか。
 それに関連して、既存のDSで十分だという方もかなり多いと思う。実際、(既存のDSシリーズは)累計で1億4000万台売られているわけで、これがすたれてしまうのはもったいない。例えば今年発売するソフトは3DS専用ソフトが多いように思うが、もっとDSにも使えるようにしてはどうか。例えば『ポケモン』の次作を3DS用にすると、販売本数が少し減る可能性もあると思う。現在のDSの巨大なインストールベースのソフトウェアマーケットをどのように活用していくのかという点が、御社の短期業績に大きく影響するのではないか。
 多様化という面では、もっとマルチなメディア機能を持った、大人が持ち運びやすいデバイス、もしかしたらゲームが中心でなくて、ほかの用途が中心であって、ゲームもついでに遊べるというような端末で、例えば任天堂スタンドアローン(単独)でなく出すとか、もう少し多様化を進めてもいいように思うが、それについての考え方を伺いたい。

A 7

岩田:

 今、「ニンテンドー3DSは間口が広くない」というご指摘をいただいたのですが、私としては3DSに期待をしていただかなければならないので、そういう声をお聞きしてしまう時点で、「今3DSには一つの課題があるんだな」と感じます。
 ただ、「じゃあニンテンドーDSが出た時、みんな間口が広いと言っていましたか?」ということも、また同時にあると思うのです。すなわち、新しいものを提案して、それが社会に受け入れられるまでは「本当にこれってメジャーになるの?」というふうに思うわけで、逆に「これはメジャーになるに違いない」と誰もが最初から思っていただけるというのは、言い換えると、現状の延長線上で誰もが分かっているものなので、それは化けないわけです。ですから、今日いただいた「間口が広くない」というお話を1年後2年後にゲーム業界にかかわる方が誰も言わなくなるように、是非私は努力しなければならないと決意を新たにいたしました。
 それから、もちろん任天堂の短期業績だけを考えますと、例えば普及しきったDSに最高品質のソフトを全精力を注いで作れば、たぶん今期業績だけを見れば、収益は上がると思います。ハードを売らなくてもソフトがたくさん売れるというのは、単純に利益ベースで言うと非常に効率が良いわけですから。ただ、われわれは、お客様は同じ構造にはいつか飽きるということを繰り返し味わってまいりましたので、それを続けていますといずれ行き詰まってしまいます。で、行き詰まってから「さあ大変だ」と言っても、もう遅いわけです。
 私が、例えば今期業績だけに責任を持てばよくて、2年後にはこの場にいないつもりでいればそういう選択肢もとれるのですが、いつ株主のみなさんから退場しろと言われるかわかりませんけれども、自分の体力、気力が続く範囲でもう少しいろいろやらせていただきたい夢や展望もあるので、それを続けていこうと思いますと、今年にとっての最大化ではなくて、この5年、この10年にとっての最大化は何なのかというふうに考えますので、任天堂は新しいものにおのずからパワーを割いていくことになります。
 一方で今日、森からご説明しましたとおり、今期の業績予想の中でDSのソフトの見込みが6700万本、3DSのソフトが6200万本という数字が出ています。恐らく、国や市場ごとに3DSのソフトとDSのソフトの配分は変わると思います。日本のように新しい商品に素早く反応し、そちらにどんどん切り替わっていくお客様の多い国では、3DSのソフトの割合が当然高まるでしょうし、アメリカのように、早く動かれるお客様も相当数おられますがマジョリティーはゆっくり動くという国の場合は、今年もDSソフトの方がたくさん売れると思います。そして、それは必ずしも新規にソフトを作ることでできる市場ではなくて、私たちの過去に作ってきたたくさんのライブラリーの定番化、あるいはソフトメーカーさんが巨大なインストールベースを使って、そこでビジネスをされるという目的の下で動かれるソフト群がそういう市場を作っていくと思うのです。なので、この1億4000万台のポテンシャルを活かすからこそ、われわれが今期、開発リソースをものすごく重点的に割かなくても、これだけのソフトが売れ、それは結果的に任天堂の業績にも寄与し、お客様にもソフトの提案がされていくということになりますので、そういう形かと思っています。

 また、多様化についてですね。任天堂に無限のリソースがあったら、例えば携帯電話みたいに、デザインの違うニンテンドーDSを20種類出し、好みによって選んでくださいとすれば、違う需要が生み出せるのかもしれないと思います。しかし一方で、その作り方をして今の品質と価格と量産効果が同じように出るということはないので、われわれが誇りにしている品質や量産効果の部分と、それからお客様の多様な好みに応えるという部分の両方をどうバランスをとっていくのかというのは、われわれのこれからの中期的な課題かと思っています。

Q 8

  3DSとWiiのタイトルの考え方について確認させてほしい。既に発売日が決まっているタイトルがいくつか紹介されたが、未定になっている『どうぶつの森』、『マリオカート』、『スーパーマリオ』などが出てくると、まさに販売モメンタム(販売の勢い)がつきそうだが、これらのタイトルに関しては今期というよりは来期以降というふうに考えた方がいいのか。あるいは下期にかなりドライブがかかるような予算になっているので、下期に出てくるとみていいのか。
 また、Wiiについて、バイタリティセンサーが発売予定に出てこないうちにWiiの次世代機の話が出てしまったが、これはお蔵入りなのか、次期に出すのか、それとも引き続きWiiをやっていく中での目玉商品というふうに考えているのか。

A 8

岩田:

 まず、ニンテンドー3DSのタイトルですね。今名前の挙がったタイトルが一本も今期中に出ないようでは、ニンテンドー3DSは年間1600万台売れないと思っていますので、全部かどうかは分かりませんが、必ずそういった多くの方が期待いただけるタイトルは今期投入することになると思います。一方で、発売日をまだ決めていない事情は、私どもの開発状況という問題だけではなくて、3DS発表の時に私どもが掲げた目標である、ソフトメーカーさんのタイトルも売れる状況を作りたいと。それができなければ、持続的に安定したプラットフォームの活性というのは維持できないわけです。任天堂一社ですべてを支えられるというような考えを私たちは持っていません。もちろん、「任天堂のタイトルがハードを売る責任を持つ」ということに関しては強く意識しているのですが、任天堂一社で市場が維持できるなどとごう慢なことは考えておりません。他社さんにも成功していただきたいわけです。そして、他社さんの予定がもう少しクリアになってきた時に、私たちのタイトルはどうすれば一番販売を最大化でき、かつ短期的な食い合いをしないで済むのかということを意識して決めたいということもございますので、そのようなこともあって時期の明言はもう少し先にさせてもらおうということです。ただ、今日ご紹介した『マリオカート』や『スーパーマリオ』の新作は、来期以降をイメージしてお話ししたわけではありませんので、そういうふうにご理解いただいてよいのではないかと思います。

 また、Wiiバイタリティセンサーですが、発表してからなかなか市場に出せずに、みなさんに気をもませてしまっていると思います。何せ新しい遊びですし、それから、人間の生体情報というのは大変個人差が大きくて、例えば世の中の8割の方にとって、自分にとって自然に感じられればそれでOKという状況であれば、極端な話、すぐにでもお客様に提案できるわけです。しかし、私たちは99%のお客様が自分にとって違和感がないと感じていただけるような完成度にしたいと思ってやっていますので、時間がかかっています。私はここに大変面白い可能性があると思っていますので、あきらめずにやっていきたいのですけれども、なかなかそのハードルを越えるのが大変だなというような状況ですので、今すぐに、いついつ市場に出せますと申し上げられる状況にないことはご理解ください。

Q 9

 アメリカのマーケットについて。アメリカでXbox360が結構売れているという中で、Kinectが貢献している可能性があると思うが、この辺りでWiiへの影響があるかどうかを教えてほしい。
 併せて、Wiiの後継機を出すにあたって、海外のゲーム開発リソースの拡大への取り組み方針について伺いたい。

A 9

岩田:

 日本にお住まいの方がお持ちのマイクロソフトさんのXbox360に対するイメージと、アメリカにお住まいの方のイメージとが、非常に大きく異なる状況にあると思います。昨年の夏以降、Xbox360のビジネスは好調に推移していると言えると思います。一方で、ではKinectが出たことで、すごくお客様が増えたのかということについて言いますと、同じ時期に、先ほどWiiのお客様が1000万人ぐらい増えているというデータをグラフでお見せしましたけれども、マイクロソフトさんの(お客様の)数の伸びというのはずっと小さいです。ですから、Kinectが出たことで急速に任天堂のWiiのマーケットが浸食されているだとか、今まではWiiで遊んでいたけれどもWiiを全く遊ばなくなって他機種に行ってしまったというようなことは、あまり起こっていないように私たちは感じています。もちろん、アメリカという国は複数のコンソール(ゲーム機本体)を家に置かれる方がたくさんいらっしゃいますので、Wiiのお客様の中にXbox360をお持ちのお客様はたくさんいらっしゃいますし、その逆もたくさんいらっしゃるので、当然、遊ぶ頻度などの点で一切影響がないと申し上げるつもりはありません。ただ、いわゆるKinect用のソフトというものの中で、次々と毎月ヒット作が生まれるというような状態にはなっておりませんので、私たちとしては、それほど大きな影響を受けているとは考えておりません。
 それから、海外の問題ですけれども、かつて日本で作られたゲームが世界中でよく売れるという時代がありまして、これはプレイステーション2の頃までは現実にそうだったと思うのです。ところが、ここ最近、ここ3、4年ですかね、日本のソフトメーカーさんの海外での存在感が相対的に小さくなっていると思います。任天堂の自社ソフトは比較的海外でもよく売れていますけれども、今海外のマーケットのいわゆるゲームを熱心に遊ばれる方向けの例えば『Call of Duty』に代表されるようなゲームは、やはり海外の開発会社さんが作られたものがもうマーケットの中心になっています。なおかつゲームの表現にリアリティーが増したことで、恐らく文化的な受容性の違いがはっきり表れるようになって、日本のゲームソフトメーカーさんの作られるものよりも、海外のものを西洋のお客様は好まれるという状況になってきていると思うのです。当然、任天堂は任天堂らしいゲームを作り続けることで、西洋でビジネスをしていくのですが、海外での開発のリソースの強化というのは、これから必要になってくると思います。ですから、E3の時に何らかそういうようなことをお見せできるといいなと私は思っています。


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