株主・投資家向け情報

2012年1月27日(金)経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会
質疑応答
Q 10

 来期以降の業績見通しについて。冒頭に、来期には任天堂らしい利益水準に回復させるというコメントがあったが、先ほどから出ている追加コンテンツなどを中心としたネットワーク売上が、来期、再来期の大きな業績回復のドライバーの一つになるという前提で考えられているのか。または、来期、再来期まではまだ従前のハードとパッケージソフトの販売が中心になってくるのか、というところを教えてほしい。アジアでの本格的な販売開始についてもコメントがあったが、パッケージビジネスの難しいアジア地域ではダウンロード販売がカギとなると思うが、アジアでの戦略にも少し触れてほしい。

A 10

岩田:

 来期以降、業績が回復できるというふうに私たちが見ている一つの背景は、来期にいきなりデジタルビジネスだけが主役になって、パッケージはなくなってしまうというような未来を予想しているわけではありませんし、先ほどプラットフォームというのはこういうふうにソフトの出荷本数が推移しているんですよというグラフをご覧いただいた通り、新しいハードの3年度目というのはソフトの出荷本数を非常に大きく伸ばし得るチャンスですから、ニンテンドー3DSのハードによる逆ざやが解消できてソフトが大きく伸びれば、仮に為替が厳しい状況が続いても十分大きな利益が出せるはずだ、ということで申し上げました。ただ、(業績予想の)具体的な数字をお示しできないのは、例えば為替を見ても1週間前に私たちがユーロをいくらで想定しようかと考えていたときに適切と思われた水準と、今日現在のレートでは、たった1週間でこんなに変わるわけですし、今から3カ月後となれば、本当にどんなレートになっているか誰にも分からないように、為替レートも分からないのに、具体的な金額を示すと、それは皆様に正しく(業績予想を)ご提示した形にならないので、現時点では数字は差し控えさせていただいているということです。

 また、追加コンテンツに関してですが、もちろん追加コンテンツをはじめとするネットワーク経由の収入、いわゆるデジタルビジネスの収入が今後大きく増えていって、他の分野よりも圧倒的に大きな成長性を持つであろうということに関しては全く揺るぎないですが、一方でその規模が、今現在の私たちの主力ビジネスであるハードやパッケージソフトの販売による金額にまで本当にすぐになるかというと、そうではないと思います。また、そこを志向し過ぎると、先ほどのご質問にあったARPUを上げることにフォーカスし過ぎて別の副作用が出るというようなことになるかもしれません。あくまでどうやって幅広いお客様に受け入れていただける状態を維持するか、ということがポイントであるということから考えますと、あまり極端な課金に走るというわけには当然いきませんし、またあってはならないと思っています。そうすれば、短期的には業績が伸びるかもしれないですが、中長期的な発展はないと思っていますので、その意味で追加コンテンツなどのデジタルビジネスの収入は今後利益の大きな源泉になっていくとは思いますが、収益の主役、過半数になっていくというのにはもう少しの時間がいるのではないかと思います。

 また、アジアについては、先ほども申し上げた通り、詳しくは現地での発表をお待ちいただきたいと思っているのですが、当然のことながら、ダウンロードによる販売というのは、まだ販路が十分でないとか、海賊版対策が難しいとか、パッケージソフトが価格的に受け入れにくい地域があるとか、そういう上においては、私たちにとって販売戦略上の選択肢が増えたことを意味します。ですので、パッケージソフトを用意したらそれがすぐにデジタルディストリビューションできるという環境が既に整っている、ということは、今までよりもそういう戦略の選び方が販売地域によって自由にできるようになった、ということでもあるので、戦略の自由度が増しているという点で非常に大きな意味があると思っています。

Q 11

 改めてゲーム人口の増大に向けた施策についてお伺いしたい。例えばデジタル化について、コンテンツサービスの供給者がとてつもない数に増えてくる中で、ユーザーが本当に欲しいものとのマッチングの重要性が増していると思う。流通さんとのお話、システムのお話も出たが、ユーザーから見たとき、どういう条件がそろうとこのマッチングをしやすいのか、といった考え方を教えてほしい。関連して、地域展開についてもお聞きしたい。良いものを作るというのは根底にあると思うが、ターゲットであるとか、ゲームを遊んでもらうシチュエーションであるとかに特定化した製品機能というのが重要性を増していると思っている。これはアジア展開にも通ずるところだと思うが、この辺りに対する岩田社長の考え方を聞かせてほしい。

A 11

岩田:

 ゲームという娯楽に対して、どれくらい情熱を持って何を遊んだらいいかを選ぶかということについては非常に個人差が大きいと思います。非常に熱心に情報を集められて、ものすごく事情に詳しくて、ひょっとするとゲーム業界で働いている人よりも事情に詳しいお客様もいらっしゃいますし、一方で、ほとんど何もご存じないお客様もいらっしゃいます。ですので、お店に商品を買いに来られても、「宣伝に出ていたタレントさんの名前は覚えておられても商品名が分からない」というようなことがニンテンドーDSの拡大期にはよく起こっていました。そういういろいろなお客様がいる中で、マッチングの重要性というのはすごく高まるということについては全く同感です。マッチングについて最も適切な発明をした人が、これからのデジタルプラットフォームにおいて非常に有利な立場になると思います。その意味では任天堂も今日現在、はっきりとした解答を持っているわけではありません。もちろんこの間、クラブニンテンドー等を通じて非常にたくさんのデータをお客様との関係の中で任天堂もためてきましたし、『みんなのニンテンドーチャンネル』のように、お客様の同意を得た上でお客様のプレイ履歴を任天堂に集めてきて、そこから、「このソフトを遊ばれた方はこのソフトもよく遊んでいる」とか、「このソフトの満足度が高い方はこのソフトの満足度も高い」といった相関がいっぱい見えてきています。みなさんがよくご存じのところで言えば、例えばAmazon.comで「この商品を買った人はこんな商品も買っています」とあると、つい購入ボタンを押してしまう、ということを経験された方は多いと思います。私もそのひとりなんですけれども、そういうことがビデオゲームの分野ではどうあるべきなのかと考えますと、私は「この商品を買った人はこんな商品も買っています」だけでは実は不十分だと思っています。「この商品を非常に気に入った人はこの商品に対しても非常に高い評価をしています」という方が、ずっと有用な情報だと思っていますから、そういう情報をいかにお客様に届けるか。そして、もう一つは、熱心に情報を集められる方は、何階層先にあっても探してその情報を見てくださるのですが、熱心に情報を集めておられないお客様にとっては、表面に無いものは無いのと一緒でありますので、1ステップあるだけでお客様に伝わらないんだということを踏まえてしっかりやりたいと思っています。これは日本以外の地域に商品を出していく、あるいは今までゲーム機が売れていなかった地域の市場開拓をしていくという点においても非常に重要な考え方だと思っていまして、私たちが今Wii Uに向けて準備していることというのは、そういう提案の最初の一歩は踏み出せる状態でなにがしかご提案ができるのではないか、というくらいは準備しているつもりです。しかし、先ほど申し上げた通り、これに対して正しい答えを出した人は、未来のデジタルビジネスにおいて極めて有利な立場になるといって差し支えないぐらい重要なポイントだと思っていますので、一度でドンピシャの正解にたどり着けるとは思わずに、任天堂はどちらかというと「パッケージソフトをポンと出して、あとは知らないという方が得意で、持続的にビジネスをすることはあんまり得意じゃないのではないか」と感じておられる方が多いのではないかという気がするのですが、ネットワークの分野というのは実は「継続こそが力なり」で、毎日上がってきたデータをどう活かして次に反映するかということをどれだけデイリーで回せるかがカギだと思っていますから、そういうことができるようになる姿を近い将来お見せしたいと思います。


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