株主・投資家向け情報

2012年4月27日(金)決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡
前のページへ1 2 3 4 5 |

そして、このアプローチは、デジタル商品の露出面積を拡大するという私たちのメリットだけではなく、新たな提案に気づいていただきやすくなるというお客様にとってのメリットになり、新たなビジネス機会となるという小売店さんにとってのメリットにもなります。
また、この小売店さんに関与していただくアプローチは、露出面積を増やすという意義だけでなく、ほかの意義も生み出すと考えています。
昨今、一部のソフトを除き、ゲームソフトの商品寿命は、以前にも増して短くなりがちで、少しでも過剰在庫があると、非常に短期間に値崩れが起こりやすくなりました。そのこともあって、小売店さんはソフトの仕入れに非常に慎重な姿勢を取られるようになり、逆に、予想以上に売れたソフトは品切れが起こりやすくなり、頻繁に機会損失が生じています。
小売店さんが、デジタル商品を取り扱っていただくことで、過剰在庫による損失を防いだり、品切れによりビジネス機会を逸したりすることを防止する可能性が生まれると考えています。

特に、POSA(Point of Sales Activation)と呼ばれる、在庫価値のない状態でソフト引き替え番号を仕入れ、販売が成立した段階で実際の仕入れが発生し、POSレジスターにてソフト引き替え番号を有効化することが可能となる技術を活用すると、販売が成立するまでは小売店さんに在庫負担をしていただかなくてもすむようになるため、この流通方式による可能性は、さらに大きくメリットを生み出すことになります。また、このような形態の取引であれば、在庫リスクの問題によって、これまで、当社の商品を取り扱っていただくことができなかった販売チャネルを通じて、商品を展開する可能性も広がっていくのではないかと考えています。

 


また、これまでニンテンドーeショップで販売してきたソフトは、ニンテンドーeショップのみで販売していましたので、価格が事実上固定となっていましたが、小売店さんに販売していただくデジタル配信ソフトは、パッケージソフトと同じように、小売店さんに値付けをしていただくことになりますので、デジタル商品も、小売店さんによって価格が変わることになります。私たちは、ソフトそのものの価値をお客様に提供しているという観点から、「デジタルだから安く売り、パッケージだから高く売る」という発想は持っておらず、日本でいうところの「希望小売価格」は原則として同額に設定する予定ですが、このような販売方法になると、「パッケージは値引きがあるのが当たり前なのに、デジタルには値引きがない」ということにはならないと思いますので、この前提で、お客様にどちらかの形態をお好みに合わせて選択していただければと考えています。

今日お話ししたことを図にしますと、

 


従来のデジタルビジネスでは、この図のように、プラットフォームホルダーが直接お客様に販売する、すなわち流通中抜き型のデジタル商流をつくるのがスタンダードとなっていますが、任天堂の考えるデジタル商流は、流通中抜きではなく、

 


ご覧のように、任天堂は、小売店さんにデジタル商材を卸売販売し、お客様には、小売店さんから購入いただくという形態になります。
この場合、従来は、任天堂が決定してきたお客様への小売価格を、小売店さんに決定いただくことになり、任天堂はその決定に関与しないことになります。また、これまでのニンテンドーeショップのビジネスでは、任天堂が課金決済コストを負担する形を採ってきましたが、通常のパッケージ商品と同じように、任天堂は課金決済のコストを負担しない構造に変わることになります。

また、本日、Wii Uのことはお話ししないと申し上げましたが、1つだけ、

 


今日お話しした、パッケージソフトをダウンロード販売することについては、Wii Uではハード発売時から展開し、お客様にパッケージとデジタル2つの形態から選択していただけるようにすることを予定していることを申し上げておきます。

 


任天堂は、ゲームビジネスを取り巻く環境の変化に対応するために、デジタルビジネスを本格的に展開しようとしています。
過去には、環境が整わず、幅広いお客様にご提案することが必ずしも適切とは言えなかったことが、例えば、インターネットの一般家庭への普及や、ゲーム機のネット接続率の向上などによって、ご提案できるようになってきました。
過去にデジタルビジネスについて、私たちが申し上げてきたことは、すべて当社ホームページのIR情報に書かれていますが、誤解されている方もおられるようですので、もう一度改めて整理してお伝えしますと、「追加コンテンツ販売を意識するあまり、パッケージとして未完成と受け止められるような商品を任天堂としてご提案するつもりはない」、「ネットワークを通じてコンテンツを配信することで、さらにお客様に長く、深く遊んでいただくために、追加コンテンツ販売を行っていくが、この際には、あくまでお客様に提供するクリエイティブなコンテンツを制作したことに対する対価として、お客様にお金を支払っていただけるようにする」、すなわち「構造的に射幸心を煽り、高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、仮に一時的に高い収益性が得られたとしても、お客様との関係が長続きするとは考えていないので、今後とも行うつもりはまったくない」ということです。これらのことをご理解いただければ、「『どうぶつの森』は、アイテム課金ゲームになるのではないか?」というような誤解をされることもなくなると思います。

このことを基本原則としてみなさまにご理解いただいたうえで、これから、任天堂のデジタルビジネスへの取り組みが長期にわたって発展していくことを証明できるように、最大限努力してまいります。

 


ご清聴、ありがとうございました。

 


前のページへ1 2 3 4 5 |

このページの一番上へ