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2013年1月31日(木)経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会
質疑応答
Q 4

 Wii Uのアーキテクチャと開発について聞きたい。Wii Uはローンチ後にソフトは全然出てこないという状況になってしまった。宮本さんのお話でも『ピクミン3』がHD画質という話があったかと思うが、昨年の内覧会で触らせていただいたときに、光源処理などがかなり充実した仕様になっていた。また、『Nintendo Land』も恐らくほとんどの方が大したことないグラフィックスだと思っていると思うが、十分にGPUを使った形になっていたと理解している。そうなってくると、今回Wii Uのアーキテクチャは従来のトレンドからかなり変わっていると思うので、開発にかなり苦労されたと推察している。ゲームエンジンの開発も含めて、宮本さんにはこのWii Uの初期の開発でどの辺りが苦労したのか、特にチューニングに相当苦労されたんじゃないかと思っているが、これが合っているかどうかを教えていただきたい。もう一つは竹田さんに伺いたいが、Wii Uのアーキテクチャについて、「社長が訊く」を見ると、CPUとGPUのバランスがかなりGPUのほうに寄っていて、従来であればCPUとGPUはあまりサイズが変わらなかったという印象を持っているが、今回こういうアーキテクチャになっているのはなぜか教えてほしい。恐らく、今日のプレゼンで話があったアーキテクチャの統合論も含めて考えると、CPUのポーションは下がってきているので、やりやすくなってきていると思う。その辺についてもコメントいただきたい。

A 4

宮本:

 高画質を活かすためには光源の計算などは当然必要です。ただ、ハイエンドなグラフィックスをリアルタイムで描く技術というのは、Wiiまではあまり積極的に利用してきませんでしたので、Wii Uのソフト開発に移行するに当たって、Wiiという同じ名前がついたハードではありますが、勉強会が多い開発体制になっていました。そのような過程はひととおり全部終えて、今はそのパフォーマンスをどう引き出すかという段階に入っていますが、そのような点において、開発スタッフの再教育というか、勉強というのが一つの大きなハードルではありました。先ほどは去年の5月時点のピクミンの映像を褒めていただきありがとうございます。開発スタッフみんな非常に喜ぶと思います。(岩田:今はもっと良くなっていると思いますよ。)今は、本当にピクミンがいるかのような画がつくれるようになって、非常に楽しんでいます。ピクミンはCGに向いていると考えており、去年のE3のプレゼンテーションで、私がステージに出る前にピクミンが(私の)楽屋にうろうろいるというビデオをつくって、ピクミンと一緒にステージに上がるというチャレンジをしました。ピクミンのCGをもっとみなさんに見ていただきたいと思いまして、今は、TOHOシネマズさんが運営されている映画館に行かれますと、映画を見る前にスクリーン上に「TOHOシネマズ」というロゴがスクリーンに出る際、そこにピクミンが出てきます。さらに、3D映画を観ると、「3Dメガネをおかけください」というデモがあるのですが、そこでもピクミンとチャッピーというモンスターが出てきて走り回りますので、一度みなさんご覧になってください。そのようなピクミンがゲームの中に出てくると期待していただけたらうれしく思います。

(質問者:新しいアーキテクチャに対応した開発体制になっているのか?)。

 そこは特別、変わっているとは思っておりません。ただ、それぞれの専門分野の水準を上げるために核になる人をそれぞれに充てたりしています。それから、もう一つは、外部のソフトメーカーさんはすでにシェーダー系の技術に取り組んでいる会社さんが多いですから、そういう会社さんがつくりやすいように、実力を発揮しやすいようにという意味でWii Uのハードがあります。最近そういう会社さんと協力してつくっているケースが多く、その場合は、先方の技術を非常にスムーズに活かしていただけるということで、一緒に仕事をすることがスムーズになってきていると思います。

岩田:

 少しだけ補足します。ゲーム機はゲーム機ごとに、特徴といいますか、クセといいますか、性能を引き出すためのコツがあります。性能を引き出すためのコツが見えてくるまでは、少し試行錯誤をしないといけないタイミングがあります。それはどうしても実際の機械ができて、その最終的な性能が出る開発ツールを入手して、ソフトの開発のための土台がある程度こなれたところでないとできないですから、昨年の半ば以降にならないと、そういう部分というのは全部の準備が整いませんでした。その意味で、性能を引き出すためのソフトづくりという点で、特に最初は試行錯誤をしていたところがあります。これは、私たちもそうですし、他のソフトメーカーさんもそうだと思います。といいますのは、他社さんの今のホームコンソールゲーム機というのは、発売されてからすでに6年とか7年とか経っていますから、そういう部分というのはもう十二分に研究され尽くしていて、性能を引き出すコツをみなさん大変よくご存知で、そこにちょっと違うバランスのWii Uという機械が出てきましたので、それを非常にうまく使いこなされたところと、そうでないところの差が、今は見えやすいかもしれません。ただ、これは時間が解決する問題ですので、それほど心配しておりませんし、すでに任天堂の社内開発チームはその点をほぼ乗り越えたと思っておりますので、「今、開発にものすごく苦労していて全然前に進まない」ということが起こっているわけではありません。もしそういう状況であれば、私は今日、来期の営業利益1,000億円をコミットメントという言い方はできませんので、そういうところはもう乗り越えているとお考えください。では、竹田のほうからハードウェアのアーキテクチャについて、どういう思想でつくったのかという話をしてもらいます。

専務取締役・総合開発本部長 竹田玄洋:

 あまり専門的な話に入り込まないようにしたいと思いますが、Wii Uというハードウェアは、消費電力が低くて、性能はかなり出ている機械だと思っています。先ほどご質問があった中で、「CPUとGPUを比べてみればGPUに性能が偏っていて、CPUのほうは少し性能が出てないんじゃないのか」という話がありましたが、私はそう思っていません。「その性能を何でもって測るか」ということだけだと思います。チップサイズを見れば、確かにGPUのほうがチップサイズは大きく、CPUはかなりチップサイズが小さいです。ダイサイズ(チップの面積)を見るとそういうことかもしれませんが、近代のCPUというのは、いわゆる頭脳の、本当に計算するロジック部分は小さく、最新のPCやサーバーに使われているCPUを見ていただくと分かりますように、「CPUは大きいけれども、本当に働いて計算している部分は小さくて、周りのSRAMというキャッシュメモリーが大きい」というのが世の中の常です。そういう見方をすれば、私たちのWii Uは、必ずしも「CPUがGPUに対して性能が出ていない」とは思っていません。ですから、メモリー・インテンシファイド・デザイン、つまりメモリーを強調した設計というのを私たちはとっていると思います。ハードは黒子ですので、あまりこの部分を言っても仕方ないのですが、かなりの性能は出ていると思っています。

 GPUに関しては、その技術は、ある程度成熟してきており、これから競合他社さんもみんな同じ方向に向いていますので、使う方もだんだん経験が多くなってきて、もうプログラマブル・シェーダーでゲームをつくるということに慣れてきています。そのような経験は他社さんも任天堂も、活かされてきているという意味で、シェーダー初期の頃の苦しみというのはだんだん減ってきていると考えています。

Q 5

 パッケージソフトのダウンロード版の販売という新しい取り組みについて聞きたい。ダウンロード版の販売はパッケージ版の販売を置き換えるものではないということで、今後注力されていくということだが、今回『とびだせ どうぶつの森』のダウンロード版の販売の成功を受けて、ダウンロード売上高は売上高全体の数%という規模だと思うが、今後どういった収益拡大機会があるかを教えてほしい。
また、数日前から報道されていることに関連して、中国における展開について現状を改めて教えてほしい。2008年3月期の中間決算説明会のときに「Wiiは中国で一番有利であると思っています。中期的に取り組みたい」という話だったが、現状、中国の法規制であるとか、パブリッシャーさんが育っているのかとか、何かボトルネックがあるのかを含めて新地域展開の考え方を教えてほしい。

A 5

岩田:

 こちらはダウンロード売上高の推移です。今期はまだ第3四半期までしか終わっていませんが、第3四半期の時点で111億円となっており、間違いなく今期は過去最高になると思います。この真ん中にある比較的バーが高い時期というのは、Wiiがかなり普及していて、ニンテンドーDSiが出始めた頃でしたので、当時のWiiの普及台数よりもかなり少ない今のニンテンドー3DS中心のダウンロードビジネスがかなり大きくなったということは、一定の手応えが出てきたと思っています。単純にパッケージ版をダウンロード版に置き換えようとは思っておりませんが、現状のパッケージ版の流通にはいろいろな課題もあり、私たちのつくるゲームソフトは発売前に何本売れるかを完全に予測することは誰にもできません。誰もが「ヒットさせたい」と思ってつくり、売り出します。それがどれだけ売れるかは、どんなにご経験の長いバイヤーさんにも分からないことで、時には過剰在庫になって値崩れが起き、時には品薄になって買えなくなってしまうということが起きるわけです。そういう課題があり、そういうリスクがどんどん大きくなり、小売店さんもなかなか在庫リスクをとれないという流れの中で、「せっかく良いソフトをつくってもチャンスロスがあった」、あるいは、「お客様からかなりご評価いただけたのに、つくり過ぎたために値崩れが起きてブランドが壊れてしまう」というようなことが繰り返し起きておりました。このダウンロード版の販売について、POSAカードの取り組みを通じて店頭に広げることを私が波多野に話した際、波多野が最も強く言っていたのは、「これは現行の流通さんが抱える問題を大きく解決するチャンスがある」ということでした。今回『とびだせ どうぶつの森』のダウンロード版を、いわゆるPOSAカードという形での、店頭でPOSレジを通ったときに初めてアクティベーションされる、小売店さんからすると在庫リスクのない形で並べていただき、かなりの数量を販売することができました。こういう事例ができたことにどんな意味があったかといいますと、「こういう形でも、ゲームソフトが売れる事例がある」ということを小売店の方々にご理解いただけたことにあると思っています。ですから、今後は、例えば「デジタル専売の商品でも、POSAカードで売るというようなことが可能になるのではないか」とか、あるいは「POSAカードへの展開をするタイトルを増やしていただけるのではないか」と思います。さすがに、コンビニエンスストアさんの店頭というのは棚の(陳列)面積に制限がありますのでそれほど増やせないと思いますが、「もう少し大きな規模の小売店さんの場合は、そういう売り場を拡充していただけるのではないか」、あるいは、「そういうことをよくご存知ない方のためにいろいろ店頭でアシストしていただけるような小売店さんが出てくるのではないか」など、いろいろな可能性があると思っています。その意味において、これからデジタル販売というものの重要性はますます高まると思いますし、これから有望な分野だと思っています。

 次に中国についてですが、確かに先日報道がございましたが、私たちの認識では、いま状況が大きく変わったという認識はしておりません。もちろん、状況が大きく変われば私たちにはチャンスがあります。そういうことがあった場合に動けるような準備はしておりますが、現状で状況が大きく変わったという認識をしておらず、そういう情報の確証がございません。情報に確証があれば正式にどうするのかということを現地からお知らせするようにしていきたいと思っています。状況が変われば、私たちにはできるオプションが増えるとご理解ください。

Q 6

 Wii UのNFC機能について聞きたい。以前、岩田社長がWii Uの一つの可能性としてNFCについて言及されていたことがあったと思う。ゲームに限らず、ノンゲームにおいても非常にポテンシャルがあるものとして期待しているが、どう見ているか?

A 6

岩田:

 まず、NFCの活用には二つの方向性があると思っています。一つは「ゲームそのものに活用する」ということです。例えばNFCが搭載されたカードやフィギュアなどをつくり、それと連動するゲームをつくったりすることです。あるいは、最近ではアーケードゲームで、データの読み書きの機能をもつICカードを使って自分の成績を記録するというようなものが増えており、そういうものと連携するポテンシャルがありますので、「そういうことにご興味はありませんか?」と、いくつかのソフトの作り手のみなさんとお話をしています。このような準備も進めておりますので、今年中にはいろいろな形で、何らかのアウトプットができたり、あるいは可能性を具体的にお話しできたり、あるいは実際に試していただけるようになると思います。もう一つは、NFCというのは、日本で非常によく使われている電子マネーのFeliCa仕様を包含したものになっており、NFCが搭載されている今のWii U GamePadに何らかの電子マネーカードをかざして決済をするということが技術的には可能になっている点です。これは、私たちの将来の可能性の一つとして現在研究をしておりますので、「この時期にこういうことができます」というお話ができるようになりましたら、具体的にお話ししたいと思います。どちらにしましても、せっかくコストをかけてNFCを搭載しましたので、ぜひコストをかけた分の元をとれるように努力したいと思います。


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