株主・投資家向け情報

2015年5月8日(金) 2015年3月期 決算説明会
質疑応答
Q 4

2016年に詳細を発表予定のゲーム専用機NXについて、現状で答えられる範囲でヒントがほしい。2016年発表で2016年発売の可能性もあるのか。現在のゲーム機のリプレース(置き換え)と考えるべきなのか、それとも第三の柱と考えるべきか。そもそもホームコンソールとポータブルという考え方自体がなくなっていくのか。また、NXという名前は、Nが任天堂ということなのか、NXというコードネーム自体に何らかの意味があるのか。

A 4

岩田:

 NXについては、2016年まで具体的なことをお話しするつもりはありませんが、3月17日のDeNAさんとの共同記者発表会でNXという名前を出しましたのは、私たちがDeNAさんと提携してスマートデバイスのビジネスを始めるという発表をしますと、「任天堂はゲーム専用機の未来に悲観しているからスマートデバイスに乗り換えるのではないか」という誤解が世間で生じるのではないかと考えたからです。そこで「任天堂はしっかりと次のゲーム専用機もつくっているし、ゲーム専用機の未来に対して情熱を失っておらず、展望も持っていますよ」ということを公言するために、あえて早いタイミングで(NXの)存在を公表しました。今日の時点で「発売時期はいつなのか」、「どのようなものなのか」ということをお話しすることはできませんが、「新しいコンセプト」ということを申し上げましたので、ニンテンドー3DSまたはWii Uを「単純に置き換える」という考え方はしていません。

 「ホームコンソールとポータブルという考え方」というお話が質問に含まれていましたが、ゲーム専用機の遊ばれ方というのは、日本と海外ではずいぶん状況が分化してきています。地域ごとに異なるお客様のゲームプレイ環境も含めて、「私たちはどういうものをご提案したら世界中のお客様に受け入れていただけるだろうか」ということを考え「新しいコンセプトのゲーム機を出したい」ということが今日申し上げられることの全てです。

 ちなみに、今年のE3で「NXの話が出るのではないか」とか、「スマートデバイスの話は聞けるのか」あるいは、「QOL(Quality of Life)の話は聞けるのか」等々、いろいろお問い合わせをいただくのですが、E3はゲーム専用機のイベントだと私たちは理解していますので、スマートデバイスの話も、QOLの話もするつもりは全くございません。また、NXの話は「2016年になってからお話しします」と申し上げていますので、NXに関する発表が今年のE3であるのではないかと期待していただいても空振りに終わってしまいますので、その辺りは何とぞご理解ください。

Q 5

御社の「新しい基幹システム」について伺いたい。マスコミや投資家サイドで基幹システムについて話題になっていないので、ぜひ岩田さんに伺いたいが、なぜ、このタイミングでDeNAさんと組んで、「基幹システム」を入れ替えと考えたのか。恐らく目的と課題が存在するはずなので、その辺りを教えてほしい。また、「基幹システム」の共同開発のパートナーとしては、普通はシステムインテグレーターが対象になると思うが、なぜDeNAさんなのかということについてコメントしてほしい。

A 5

岩田:

 「基幹システム」というのは、私が先ほどのプレゼンテーションの中で「一体型メンバーズサービス」と呼んだもののことで、「スマートデバイスとゲーム専用機の間に架け橋を架けるもの」とご説明しました。

 これまで任天堂では、自社のホームページを作り、「クラブニンテンドー」というメンバーシップサービスを始め、ゲーム機をネットワーク対応にし、「Miiverse」のようなサービスを始め、という形でネットワークのサービスを一つずつ作ってきましたが、一つひとつが「全体の最終的なビジョンがあって作った」というよりも「こういう問題があるから、こういう形で解決しよう」、あるいは「こういうことをやりたいから、こういう解決策をつくろう」という、独立した形で進んできましたので、全体がきれいにつながっていませんでした。それらを設計していた当時は、「スマートデバイスとゲーム専用機の間に架け橋を架ける」という発想はありませんでしたし、また、「お客様が社会とつながり情報を得る手段として、これほどスマートデバイスの存在が大きくなることは、少なくとも5年前には見通せなかった」ということもあると思います。そういうことを含めて考えますと、今、私たちが持っているシステムは、さまざまなことが継ぎはぎ状態になっていて、お客様にとって使い勝手がよくありませんし、私たちも「新しい何かをやろうとすると、あっちもこっちも触らなければ実現できないために簡単にできない」という課題があり、「実現したいアイデアは数多く存在するのに実行がなかなか追いつかない」という状態でした。

 ご質問の中で「こういうことをするのであれば一般的にはシステムインテグレーターの方々に発注するのが普通ではないか」というご指摘がありましたが、確かに「世の中ではそういうふうに行われているケースが多い」と思います。一方で、事前に要件定義がしっかりとできる場合はそれでよいのですが、これからも環境は変化し続けると思いますので、要件を事前に完全に確定させることは難しいと考えています。この点で、システムインテグレーターさんというのは、「要件を定義できるもの」、すなわち、「事前にこういう仕様でつくってくださいと明確に依頼可能なもの」を組み上げることについては大変得意な方が多いのですが、クライアントの要求がどんどん変わったり、「環境が変わるので途中で修正をしてほしい」というような依頼に関しては、あまり得意でない方が多いと思います。もちろん、そういうことが得意であることを売りにしておられるシステムインテグレーターさんたちもおられると思いますので一概には言えないですが、一般論としてはそうだと思います。今回、DeNAさんとスマートデバイスのビジネスを共同で運営をしていくことになりましたので、新しいアプリをつくってサービスの運営をしていき、そして分析やフィードバックをし、その中で起こるさまざまなお客様の管理のための仕組みを作ります。「そのような仕組みと私たちが実現したい一体型メンバーズサービスとの間にはかなり重なりがある」ということがわかっていますし、また、「要件がどんどん変化していくということ」をDeNAさんは社風としてよくご存知で、「柔軟にどんどん変えていき、スピーディーに作り上げていく」ということに関して、高い能力をお持ちであるということが、この間の一連の提携に至るまでのさまざまなやり取りの中で当社にもわかってきました。スマートデバイスのビジネスをご一緒するのに加えて、一体型メンバーズサービスも一緒にやった方が「架け橋」はきれいに架かり、私たちが事前に要件定義をパーフェクトにできなくても、あるいは環境変化がこの先起こったとしても、より柔軟に対応可能な仕組みがつくれるのではないかと考えました。「任天堂の社内だけでは人的リソースが不足していることも含めて無理だったことが、ご一緒すればできるのではないか」という判断ができましたので、このような決断に至りました。

 ご質問にもありました通り、本件についてはあまり報道されていませんし、注目されていないのかもしれませんが、私は非常に重要な取り組みになると思っています。この仕組みがうまく動けば動くほど、スマートデバイスとゲーム専用機の間をお客様に上手に行き来していただけるようになりますし、お客様にとってはゲームで遊び続ける理由やゲームを仲間と一緒に遊ぶ理由が増えたり、あるいは、お客様自身が薦めたり薦められたり、教えたり教わったりという状況がどんどん増えていくと思います。今は情報拡散の速度が非常に速く、世の中で流行るもののほぼ全てはその流れに乗って広がっていきますので、今の世の中の環境に合った新しい仕組みを作らないといけません。昔はテレビ広告と口コミがその仕組みだったのかもしれませんが、今はそれらに「インターネットをどう組み合わせるか」、「スマートデバイスをどう組み合わせるか」ということが議論されていると思いますので、そういうものを作っていきたいと考えています。「単に商品を買ってくださった方にポイントが付与されて、そのポイントで何か景品がもらえる」という今までのロイヤリティープログラムの形から、単にご購入いただくだけではなくて、プレイ履歴やお客様同士のやり取りといったようなことが、お客様にとって何らかの見返りとして感じていただけるような、いわば、エンターテインメント要素を持ったロイヤリティープログラムを私たちは目指しています。事前に(このようなロイヤリティープログラムの)要件定義を100パーセント確定させることは無理ですから、そういった観点からも柔軟に対応していただけるDeNAさんと組めることにはメリットがあると思っています。次回の説明会は、決算説明会になるのか、経営方針説明会になるのかはまだ決定していませんが、10月末頃にはまた皆様にお話をする機会ができると思いますので、その時にはもっと詳しく「このようなものです」とお話ができるように準備したいと思っています。

Q 6

ニンテンドー3DSの現状を整理したい。先ほどのプレゼンテーションではニンテンドー3DSにまだ海外で伸びしろがあるという説明だったと思うが、会社予想ではハード、ソフトともに減販と見ているようである。研究開発費もあまり増えない予想となっているので、ある程度開発リソースのシフトが計画されているのか、もしくは単純に保守的な数字になっているのか、今回のニンテンドー3DSの予想販売数量設定の背景を教えてほしい。

A 6

岩田:

 まず、国内におけるニンテンドー3DSと海外におけるニンテンドー3DSは、市場ポテンシャルをどこまで実需化できたかということが大きく違うと思います。国内でニンテンドーDSというゲーム機が3,000万台以上普及しましたので、それに比べると「1,900万台でもまだまだじゃないか」というご指摘もあるかもしれません。一方で、発売後4年で1,900万台売れたゲーム機は過去にそれほど多くはなく、また、日本のマーケットの現状を考えると、ポテンシャルをかなり実需化できています。ただ、実需化できていない部分というのが女性層で、任天堂はニンテンドーDSやWiiの時代には、お客様の男女比がほとんど1対1でしたが、ニンテンドー3DSでは、やや男性寄りとなっています。それでも、女性のお客様は他社さんのゲーム機と比べると多いのですが、私たちの強みとして、年齢性別を問わず受け入れていただけるというゲーム人口拡大路線以降の流れからすると、やはりその面が少し弱いと思います。ですから、「国内の課題は実は女性のお客様で、それも年齢の低いお子様から一定以上の年齢の大人の女性、あるいはシニアの女性までアピールできるかどうか」ということが、これからの伸びしろを決めると思っています。

 一方で、海外に関しては市場ポテンシャルからすると、ニンテンドー3DSの普及台数はまだまだ小さく、また、どうしても海外のゲーム市場というのはホームコンソール機にアテンションが集まりがちで、私たちはそのハードルをまだ越えられていません。Newニンテンドー3DSの発売後の反応を見ますと、ソフトとハードの提案次第で、もう少しでそのハードルを越えられるという部分も見えてきましたので、今年はなんとかそこの扉を開けたいと思っています。一方で、その扉が開いたことを前提に業績予想を立てますと、もっと強気の数字が出せるわけですが、任天堂が業績予想を達成できないということが営業赤字になったこの3期の間、何度も続いてしまいましたので、努力目標のような数字を出すわけにはいかないと考えました。各販売地域の営業部隊から、「これぐらいは達成できるはず」という数字を集めたものをもとに、現実に私たちが置くべき目標として今回の数字をつくっています。ですから、「これが市場ポテンシャルの上限だと考えているわけではなくて、これぐらいは十分に達成可能であろう」という前提を販売数量予想の根拠にしているとお考えいただくとよいと思います。

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