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2013年6月27日(木) 第73期 定時株主総会
質疑応答
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Q 1  昨日の「Nintendo Direct」を見て面白かったので、岩田社長と宮本専務に「直接」伺いたい。先日のE3で新ハードの発表を見たが、残念ながら個人的に大きな驚きはなかった。確かに非常にグラフィックがきれいなゲームもあったが、新たなゲーム性という意味ではこれまでの延長線上のように映った。それはWii Uも同じで、いまだに「Wii Uだからこそ」というゲームがないことを残念に思う。確かに「Off TVプレイ」はバーチャルコンソールを遊ぶ際には非常に便利だが、Wiiがこれまでの常識を覆し、新たな遊びを創造したのに比べて、Wii U自体に今のところ驚きはない。ソフトに関しても同じで、「Nintendo Direct @E3 2013」で2014年までのソフトが発表されたが、今までのゲームの延長線上のように思え、「Wii Uだからこそ実現できる」という部分が見当たらない。他のソフトメーカーでも同じで、ゲーム業界全体として、ビデオゲームの創造性や新規性に限界が来ていて、当分新しいものは出てこないのではないかと危惧している。
 任天堂の理念は「ゲーム人口の拡大」のはずで、老若男女、ゲームのプレイ経験を問わず受け入れてもらえる商品を作ろうとしているはずだが、今のラインアップを見ると、ある程度ゲームに興味を持つ者への作品ばかりだ。日本でも独創的なゲームを作られているところもあるが、それは規模が小さいからできるのであって、任天堂は、「業績を上げなければならない一方、独創的なゲームを作らなければ新たな客層が獲得できない」というジレンマに陥りつつあるのではないか。
A 1

取締役社長 岩田 聡(議長):

 応援の気持ちの込もったメッセージをありがとうございました。まず、今のご質問の中にはゲームをご自身で遊ばれる方でないと分からない言葉もございましたので、少し説明させていただきます。例えば、「Off TVプレイ」というのは、「Wii Uでは、コントローラーに画面が付いているため、テレビの電源をつけてテレビに向き合わなくても、テレビから少し離れた場所でゲームができる」ということです。これはWii Uの大きな特長で、一度使ったら、「とても便利だ」というご意見も多くいただきます。
ただ、質問された株主様がおっしゃりたいのは、「そうはいっても、プレイする場所にしばられなくなっただけで、遊び方は変わっていない」「ニンテンドーDSの『nintendogs』や『脳トレ』、Wiiの『Wii Sports』や『Wii Fit』のようなゲームのように、『今までにないものが出てきた』という実感が乏しい」ということだと思います。

 今までテレビゲームというのは数年単位で機械の世代交代があって、そのたびにできることがだんだん変わってきました。テレビゲーム機はいわばグラフィックをリアルタイムに生成するコンピューターと言えるわけですが、今までできなかった複雑な処理が行えるようになって、画像がきれいになったり、画面の中でたくさんのものが非常にリアリティーを持って動いていることを感じていただけるようになってきました。「その方向での進歩にだんだん前ほど恩恵を感じられなくなってきているのではないか」というご指摘もありましたが、事実、そういう面はゲーム業界の中でもよく言われていることで、「作り手の苦労が増えるほどに、お客様の驚きや感動につながっていないのでは」ということを心配されている方もおられるようです。

 また、先ほど質問された株主様が「直接」とおっしゃったときに、会場の中で反応された株主様がいらっしゃいましたが、その方々は、当社が「Nintendo Direct」という形で定期的にゲームの新しい情報を(インターネットを通じて)直接お客様にお届けするという試みをしていることをご存知なのだと思います。これは2年前の10月から開始しましたが、最近では非常に多くのお客様に受け入れていただいております。E3というのは毎年6月に、アメリカのロサンゼルスで行われている世界最大のゲームショーです。当社は今年そこで(例年のような)大きな発表会を開かずに、この「Nintendo Direct」を中心にして情報を発信し、2014年までにWii Uで計画しているソフトを発表しました。しかし、そこでお見せしたソフトが2014年までに発売される予定の全ソフトで、それ以外のものは一切ないということはございません。E3に関心を持ってくださるお客様の多くはゲームファンの方で、いわゆる伝統的なテレビゲームらしいゲームの情報を強く求めておられますし、当社としてもお客様にまだお知らせできていない情報が非常に多くございました。そのため、私たちはまず「Wii Uではこれらのゲームが間違いなく遊べる」という情報をしっかりお伝えして、「Wii Uを買ったけど、もっとたくさんゲームが出る時期まで待つべきだったんじゃないか」、「遊べるゲームがこれから本当にたくさん出てくるのか心配だ」とお感じのお客様に安心していただこうと考えたわけです。一方で、まったく新しいゲームについては、発表から発売までの間に、他の方に真似されたり競合製品が出てきたりして、そのインパクトが弱まってしまうようなことがないほうがよいと思っております。もちろん新しいタイプのゲームの開発にも取り組んでおりますが、このような事情で、こうしたゲームについては発売が近づいてからお話しする判断をさせていただいています。

 私たちは、テレビゲームをより多くの方に受け入れて、触っていただいて、よさを実感していただきたいと思っております。最初はゲームユーザーではなかった方が、家のリビングルームにある、自分には無関係だと思っていたWii Uという機械をいつの間にか毎日触るようになっていたということも大事なことです。また一方で、ゲームを愛し、ゲームに対して非常に情熱を持っておられるファンの方にご満足いただくということも必要です。Wiiに関しては、『Wii Sports』というソフトがあまりにもセンセーショナルに世界中に広がっていったために、「Wiiというのはリモコンを振って遊ぶ(だけの)機械だ」という誤解につながった面がございました。その意味では、Wii Uでは、まずゲームファンの方にもご満足いただけるようにし、新しい驚きといったものはもう少し後の段階でと思っています。ただ画質をきれいにしただけではお客様は感動できなくなっているというのは、ご指摘のとおりですので、そうではない方法で驚いていただけるよう模索したいと思います。

 ご指名がございましたので、来月に発売される『ピクミン3』というソフトに関して少し宮本に話してもらいます。私はこのソフトは「Wii Uでよかった」と言っていただける出来映えだと思っております。なお、昨日の夜に『ピクミン3』に特化した「Nintendo Direct」を放映いたしました。これは、ダウンタウンの松本人志さんがもともと『ピクミン』の大ファンで、以前にテレビで(宮本が)対談したときにも『ピクミン』のことを聞かれていたので、2人で対談しながら新しい『ピクミン3』を遊んでいるところを撮影させていただいたものです。YouTubeや当社のホームページで探していただくとすぐ見つかりますので、もしご興味がある方がいらっしゃいましたら、観ていただけたらうれしいです。

専務取締役・情報開発本部長 宮本 茂:

 一生懸命『ピクミン3』を作っていました。『ピクミン3』は、ゲームを全然遊んでいない人から遊び込む人まで幅広い層に受け入れられるゲームになったという手ごたえを感じています。質問された方がおっしゃった点はまさにそのとおりで、ゲーム業界全体のジレンマですが、同時に、そういう変化というのは、ゲームに限らずどこにでもあるものだとも思います。例えば、テレビ局というのはコマーシャルを軸に成り立っていますが、ネットの普及等によってコマーシャルはテレビだけのものではなくなっています。ゲーム業界について言えば、インターフェイスを除けば携帯ゲーム機と能力はあまり変わらないし、全部ネットワークにつながっている、スマートフォンというのが出てきたということがあります。これは今に限ったことではなく、例えば、僕は連続朝ドラのファンで『ゲゲゲの女房』も見ていましたが、紙芝居から始まりテレビアニメにつながる漫画がたどった歴史が非常に興味深かったです。その中を生き抜いた人というのは、メディアの変化というのを敏感に感じとって乗り換えていきます。当社もかなり長い間ゲームとかかわっておりますので、その流れをある程度俯瞰して見ており、そのことがニンテンドーDS やWiiにつながってきていると思いますので、これを続けていけるよう努力したいと思います。もちろん、小売店さんから見て売り上げがある程度読めるソフトでないと仕入れてもらえないという事情もありますので、質問された方がおっしゃったように、一定の規模の利益を目指そうとすると、どうしても有名タイトルが優先されるということもございます。ただ、それ以外のものもいろいろ常に努力をしながら、幅広く作ろうとはしています。

 また、開発の規模について申しあげると、Wii UがHDになったことで、以前の倍ぐらい人手がかかるようになっています。言い訳になりますが、全体的にソフト開発が遅れ気味だったのは、その規模の変化を読み誤った面があり、しっかりした仕上げをしようとすると少しずつ(予定以上に)時間がかかってしまうという状況でした。ただ、最近ではそのようなこともかなり少なくなってきましたし、「Nintendo Web Framework」というもっと簡単にゲームが作れる仕組みを使ってユニークなものを作っていこうという試みもしています。

 その他に、よく「新しいフランチャイズがないじゃないか」と言われることもあります。今年のE3の際に「任天堂は同じシリーズばかり並べている」というご意見をいただいたのですが、それは、任天堂の持っているフランチャイズに出てくるキャラクターを中心に展示したからなんですね。『ゼルダ』や『マリオ』や『ドンキーコング』等の世界をイメージした6つの特別展示スペースがあり、来場者がそれらに出てくるキャラクターと一緒に記念撮影できるというものでした。当然、こうした展示をして来場者に喜んでもらえるのはすでに知名度のあるものに限った話ですので、そのことが目立ってこのようなご意見になったのだろうと思います。ただ、任天堂にそうしたフランチャイズがあるということは、一つの強みだと感じています。社内の若いスタッフから「新しいフランチャイズを作ろう」という話が出ますが、新しいキャラクターを作ることが同時に新しいフランチャイズを作ることかというと、僕はそうではないと思います。要は、新しい遊びの仕組みやメディアの新しい使い方を展開できるのが「新しい商品」であって、最初にキャラクターから作るわけではありません。そういう意味では、『nintendogs』や『脳トレ』や『Wii Fit』は全部新しいフランチャイズだと思っています。『マリオ』のようにシンボルとなる「絵」がないので、なかなか新しいフランチャイズと思ってもらえませんが、こうした商品は実際に売り上げに貢献しています。ゲームファンに限らず幅広い人に楽しんでいただくという視点を持って、ずっとこれからも開発を続けていきたいと思います。よろしくご支援をお願いします。

Q 2  ニンテンドーDSやWiiでは、既存のフランチャイズのソフトに新しい操作性を加えて新しい魅力を出すという試みがされていたが、個人的な感想として、一番恩恵を受けたソフトは『マリオカートWii』だった。それ以外のソフトで、独自の操作性を加えたことで新しい面白さを感じることはあまりなかった。ニンテンドー3DSやWii Uでも新しい操作性を加えていくと思うが、既存のゲームと新しい操作性をどのようにうまく練り合わせていくのか。
A 2

岩田:

 ニンテンドーDSやWii以降、当社は、いわばゲームの操作を新しくすることでより幅広いお客様にアピールするということをしてきました。新しい操作性と従来型のゲームの組み合わせという面で、『マリオカートWii』では、Wiiリモコンをはめて使う「Wiiハンドル」というものがあり、そのハンドルを持って車を運転するように動かすことで、従来のコントローラーではレースゲームが遊べなかったお客様でも幅広く遊んでもらえるようになりました。ただ、質問された株主様は、「これ以外のソフトではあまり手ごたえをお感じにならなかった」ということで、「今後ニンテンドー3DSやWii Uではどのような見通しを持っているのか」というご質問であると理解いたしました。

 私たちは、ゲーム機を新しくする際に、お客様がゲームに入力される手段についても新しくなるようさまざまなことをして参りました。例えば、ニンテンドーDS以降に導入されたタッチスクリーンや(ニンテンドーDSiやニンテンドー3DSで導入された)カメラ機能がありますし、Wiiでは、Wiiリモコンに加速度センサーや(Wii リモコンプラスからは)ジャイロスコープが内蔵され、「お客様がコントローラーをどのように動かしたのか」とか「コントローラーを今どちら向きにどのような角度で持っているのか」が、分かるようになりました。このように、お客様により直感的に入力してもらうことによってゲームを変えられないかということに取り組んできました。ご指摘の『マリオカートWii』以外にも、ファーストパーソンシューター系のゲームにおいて、「アナログスティック2つを器用に使いこなすことは苦手だけれども、Wiiリモコンのポインティングとヌンチャクを組み合わせた操作だとより直感的に遊べるようになった」というご意見もいただいております。他のゲームにおいても、それぞれ操作に関して新しい要素を加えたことで、「この部分は変わったな」ということは確かに起こっております。また、例えばニンテンドーDSでは画面が2つあって、常に2つのものが同時に表示できるようになったといったことも、ゲーム性が変わったり、より理解しやすくなったり、といった面で大きな影響を与えています。いわば私たちは、より多くの方に遊んでいただけるようゲームを遊ぶ敷居を下げる方向でやってきたといえると思います。

 一方で、質問された株主様のおっしゃるのは、「これまでゲームを遊ばれてきた方の実感としては恩恵がそれほど大きくなかった」ということだと思います。私たちは、『常に新しいお客様が入って来ない娯楽というのはいずれ衰退してしまう』と考えておりますので、新しいお客様に入って来ていただきやすいように間口を広げるという点は引き続き努力していきたいと思います。ただ、今後は、従来からそういうシリーズを遊んでいる方にとって何が新鮮なのかという視点にも、より大きな注目をして取り組むようにしていきたいと思います。貴重なご意見、ありがとうございました。

Q 3  ニンテンドー3DSのバーチャルコンソールが出てからずっと心待ちにしているが、そろそろバーチャルボーイを復活してほしい。その予定はないか。自分の年代やその下の年代など、プレイしたことがない方も結構多いと思うので、是非検討してほしい。
A 3

岩田:

 現時点で発表していない商品について、ここで申しあげるわけにはいかないのですが、バーチャルボーイは任天堂が以前に発売した、のぞくと立体に見える黒と赤だけの世界のゲーム機です。ビジネスとしてはあまりうまくいきませんでしたが、当時の流れの中では非常にユニークで魅力もあったと言ってくださる方もいらっしゃいますので、バーチャルボーイのソフト資産をうまく活かせないのかということは、貴重なご意見として賜ります。ありがとうございました。

Q 4  先日、ニンテンドー3DSの「すれちがいMii広場」の新しいソフトが4本、有料コンテンツで追加になったが、とても面白く、今日も株主総会が始まるまでひたすらやっていた。特に『すれちがいシューティング』と『すれちがい迷宮』が面白く、いずれも外部の会社の方が作られたソフトで、『Wiiリモコンプラス バラエティパック』のときと同じような感じで作ったのかなと思う。こういう仕組みがこれからもっと増えていくようにお願いしたい。
A 4

岩田:

 今お話しいただいたように、ニンテンドー3DSには「すれちがいMii広場」という仕組みがあって、電源を入れた状態で、無線をオンにしてふたを閉じて持ち歩いていただくと、常に周りにほかの3DSがいないか探しているんですね。それで、誰かとすれ違ったときに、そのすれ違った人同士の似顔絵、「Mii」というんですけど、これが交換されるという仕組みがあります。そこで、今まではピース合わせをしてパズルを作っていくゲームと、『すれちがい伝説』という、非常にシンプルなロールプレイングゲームが遊べるようになっていたんです。ただ、発売から2年以上が経過しまして、以前から「もう遊び尽くしたので新しい遊びがほしい」という声があることが分かっておりました。今まではどちらかというと、「すれちがい」を楽しんでいただく入門を作っていたので、その意味では「なるべくシンプルに分かりやすく」だったのですが、次のステップとしては、もう少し深くて遊びごたえのあるゲームを作ったらどうかということで、実はかなり前から取り組んでいました。今もう一つお話をいただいた『Wiiリモコンプラス バラエティ』ですが、これはWiiリモコンプラスができたときに、そのWiiリモコンプラスと(それを活用するゲームを詰め合わせた)ソフトをセットにして、ソフトは割安な価格帯でご提供しました。そのときに、たくさんのソフト会社の人に「Wiiリモコンプラスを活かす」ということをテーマに、競作をしていただきました。いわばゲームのコンペですね。それでできあがった複数のゲームを一つのパッケージにしたものです。当時Wiiでは、ソフトを(後から)ばらばらに売るための仕組みも十分整備できていませんでしたし、今ほどデジタルビジネスが盛んではなかったこともあり、当時はあの売り方しかなかったと思います。
それができあがってから「次に3DSで何かやるなら何をやろうか」という話の中で、あの構造(の競作方式)で「すれちがいMii広場」を拡張したら面白いのではないかということになりました。それで、この1年ほどかけて準備をしてきたのが、あの新しい「すれちがい」のゲームなのです。先ほどご紹介いただいたように、1週間前から配信が始まったばかりなのですが、日曜日までにだいたい20万人強の方に何らかのゲームを有料でダウンロードしていただくことができました。これはマス宣伝をしていない状態でのことなので、私たちは順調な出足ではないかと思っています。これから、こういうことも任天堂の新しいビジネスになっていくと思いますし、その内容とお客様に払っていただいた価格がしっかり釣り合っていると思っていただければ、今質問いただいた株主様からは「大変満足されている」というメッセージをいただいたと受け止めましたけれども、もしそういうことができれば、任天堂の新しい提案に対して付き合ってみよう、試してみようと感じてくださる方が増えていくと思いますので、これからの新しい流れとして、いろんな可能性を検討していきたいと思います。ありがとうございました。


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