遊びを引き立てるグラフィックス

最も手ごたえを感じた水の表現

『ピクミン3』のゲーム中の水表現

ニンテンドー ゲームキューブで1作めが発売された『ピクミン』シリーズの売りのひとつは、実写のような、フォトリアルなビジュアルです。任天堂に入社した直後の私は、3作めのWii U『ピクミン3』から関わることになり、エフェクト(映像効果)など、特殊な表現を作ることになりました。


手がけた仕事の中で、最も手ごたえを感じたのが水の表現です。『ピクミン』に限らず、これまでも任天堂は水の表現に力を入れてきましたし、Wii Uの世代では他社が技術的に先行していましたので、より一層「頑張らないといけないな」という意気込みで、この仕事に取り組みました。


例えば、プールに波が立つと、底にコースティクスと呼ばれる集光模様が映ります。デザイナーと相談しながら、そのようなエフェクトに取り組み、「水らしさ」の表現を少しずつ実現していきました。


特にこだわったのは、ピクミンが水に入ったときにできる波紋です。そもそも波紋って、あってもなくてもゲーム自体に影響が出るものではないんです。しかも、そのようなオマケ的なものを入れることで、ゲーム機の限られたパワーに負担をかけてしまいかねません。でも、なんとか実現させようと思いました。波紋が生じることで、『ピクミン3』の世界がより豊かに、よりリアルになると思ったからです。

いい意味でウソをつく

波のシミュレーションの様子を示す画像です。実際にこのような画像データとして、Wii UのGPU上で計算しています。

ボートが進むときにできる波紋のように、歩いた動きにそって波が広がっていったり、水際では波がはね返ったりと、Wii Uの性能を生かしたインタラクティブな表現をしたいと思い、いろんな映像を見て、波紋の研究をしました。


ピクミンはプチトマトくらいの大きさです。それと同じくらいのサイズの小石を水たまりに投げ込むと、波は一瞬で端っこに到達してしまいます。物理的にはそれが正しいのですが、ピクミンにとっては、波の動きが速すぎるように感じました。


そこで、いい意味でウソをつくことにしました。小さなピクミンを人間のサイズに見立て、それに合わせて波をつくることにしたのです。あくまで遊びを引き立てることに重点を置くことで、心地よい表現ができたと思います。


ディレクターから「波紋をつくりましょう」と言われてやった仕事ではなかったのですが、新人であってもやりたいようにやらせてもらえましたし、自分の仕事全体でみると1割にも満たない量の作業ではありましたが、水の表現はとても思い出深い仕事になりました。

社員略歴

木下直紀

木下直紀企画制作部/2010年 入社
2010年「理工系(ソフトウェア)」入社。Wii U『ピクミン3』(2013年)には、グラフィックスプログラマーとして、敵(ラスボス)や地形などの特殊なCG表現の開発に関わる。
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