仕様書の行間を読む

開発者にとってのご褒美

「玉」の初期の仕様書 「玉」の初期の仕様書

入社して初めて、ゲーム開発のはじめから最後まで関わったタイトルが、Wii Uの『Splatoon(スプラトゥーン)』です。私が担当したのはギミック(仕掛け)で、動くベルトコンベアーやリフトなど、いろいろなものを作っていました。


ところで『マリオ』シリーズのコインは、ただ集めるのが目的ではなく、どの方向に進んだらいいかということを示してくれるナビゲーションのアイテムでもあります。


『Splatoon』でも、そんなアイテムを作ろうという話になり、ディレクターからは「マリオのコインのようなものを考えて、新しい歴史をつくろう」と、すごく威勢のいいことを言われたのですが、仕様書には「撃って取れる玉。触って取れる玉。それが通貨として使える。」という、すごく大ざっぱなことしか書かれていませんでした。でも、それって開発者にとってのご褒美のようなものなんです。


細かく書かれた指示書をもらって、そのとおりに作るのは、ただの作業で終わってしまいますが、シンプルに書かれた仕様書の行間を読んで、自分の好きなように、自由に作れるのは、とても楽しいですからね。

納得できるまで細かく調整

イクラの挙動の調整前と調整後の比較 イクラの挙動の調整前と調整後の比較

そこで同期のプランナーと一緒に実験をはじめることにしました。画面の中に銀色のパチンコ玉のようなものを置いて、インクを撃つと、それが取れるようにしました。『マリオ』シリーズのコインのように消えてもいいのですが、「取った」という感触を出すために、撃ったらパチンコ玉が手元に飛んでくるようにしました。それはそれで手ごたえはよかったのですが、納得はできませんでした。


プレイヤーに向かってくるパチンコ玉は、直線をつなぐ放物線で飛んでくるので、躍動感があまり感じられなかったのです。誰かから「これじゃあダメ」と言われたわけでもないのですが、もっと手触り感と気持ちよさが感じられるようにならないだろうかと試行錯誤を繰り返しました。


最終的には、パラメータを細かく調整して、パチンコ玉を高く飛ばしたり左右に散らしたりすることで、インクを撃ってパチンコ玉を取るのがとても気持ちよくなり、自分でも納得できる動きを表現できるようになりました。


ちなみにそのパチンコ玉は、最後の最後でイクラになりました。『Splatoon』の世界観に合わせる必要があるだろうということで、魚介類の中からイクラが選ばれたというわけなんです。

社員略歴

筒井啓太

筒井啓太企画制作部/2012年 入社
2012年「理工系(ソフトウェア)」入社。Wii Uの本体メニューの開発にプログラマーとして関わる。Wii U『Splatoon(スプラトゥーン)』(2015年)では、ゲームプログラマーを務める。
職種