もう一歩踏み込みたい

「ヘタなものは作れないぞ」

イカたちが敵味方に分かれてインクを撃ち合うWii Uの『Splatoon(スプラトゥーン)』は、ゲームの終盤になると画面の大半がインクだらけになってしまいます。なので、ある意味「主人公はインク」とも言えるゲームです。


入社してからずっとエフェクト(映像効果)を担当してきた私は、『Splatoon』のインク全般を担当することになったのですが、インクが主役なだけに「ヘタなものは作れないぞ」という覚悟で臨むことになりました。


インクの表現で、私が最も試行錯誤を繰り返したことのひとつは、ブキで撃ったときのインクの見えかたです。ブキを横に振りながら撃つと、槍のような形をしたインクが断続的に飛んでいるように見えて、周りの人たちは「これでいいよ」とは言ってくれたものの、自分ではどうも納得しきれませんでした。もっとよりよく見える方法がないかと、デザイナーという仕事柄、もう一歩踏み込みたいと考えたのです。


そこでプログラマーと相談して、それまでは1つだけの軌道計算を、2つに増やすことにしたのです。そうすることで、ブキを横に振りながら撃つと、まるでホースで水をまくような表現を実現することができました。

「普通の軌道」(左側上下)と「液体らしい軌道」(右側上下)の比較 「普通の軌道」(左側上下)と「液体らしい軌道」(右側上下)の比較

「普通の弾道」と「液体らしい弾道」の比較(動画は開発中のものです) 「普通の弾道」と「液体らしい弾道」の比較(動画は開発中のものです)

ずっとインクのことだけを考えていた

壁にインクがあたって垂れる様子(動画は開発中のものです) 壁にインクがあたって垂れる様子(動画は開発中のものです)

また、壁に向けて撃ったとき、インクがタラーッと垂れるようになっていますが、その表現にも試行錯誤がありました。
開発初期の頃は、壁を塗ることができなかったのですが、壁が塗れるようになった頃、塗ったインクが垂れるようにしてほしいという要望がありました。そこで、エフェクトでインクが垂れる表現を乗せてみたのですが、あまりに処理が重く、ハードに負担がかかりすぎるため、このままでは実装できないという壁にぶち当たってしまいました。でも、インクが垂れる表現自体は好評で、どうしても実装したいという強い思いから、1秒間に60フレームで動かしている『Splatoon』の絵を、インクの垂れる描写のみ、かなり思い切って20フレームや15フレームに減らすことで、なんとかインクがタラーッと垂れるアニメーションを実現させることができたのです。


私が『Splatoon』の開発に関わったのは1年半ほどですが、その期間はずっとインクのことばかりを考え続けていました。仕事中だけでなく通勤途中でも、どうすればインクらしい粘性が表現できるんだろうかと考えたり、お風呂に入ったときも、湯船をバシャバシャと叩いて、水の動きを観察したりしていたのです。


そうやってインクと、まるで友人のようにじっくり向き合ったからこそ、インクの弾道がよりリアルに見えるようにできたり、壁に撃ったインクが垂れるシーンなどが実現できたりしたのだと思っています。そしてもうひとつ、私がこのように動きを観察する癖がついたのは、学生時代にアニメーションを学んでいたことが大きく影響しており、あらためて大学で学んだことが仕事に活かされていると実感しています。

社員略歴

植田宏詞

植田宏詞企画制作部/2010年 入社
2010年「デザイン系」入社。エフェクトデザイナーとして、ニンテンドー3DS『マリオカート7』(2011年)/ニンテンドー3DS 『とびだせ どうぶつの森』(2012年)/ Wii U『Nintendo Land』(2012年)/ニンテンドー3DS『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』など、多くのタイトルの開発に関わる。