音作りへのこだわりを受け継ぐ

装備の音を聞きわけられるように

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、自然音をとても大切にしているゲームです。広大な大地に一歩踏み出すと、聞こえてくるのは勇壮なBGMではなく、風の音や虫の鳴き声、鳥のさえずりなどなど……。そのようなゲームの効果音を担当することになった私は、たとえば転がる岩の音をつくったり、自分の声を録音して、「イーガ団」という忍者のような集団の声に当てたりするようなこともしていました。


そのように仕事を進めていくなかで、とくに試行錯誤をしたのがプレイヤー、つまりリンクが装備を身につけて歩くときの音づくりです。装備には剣と盾、そして弓矢があり、その素材は木や金属、骨などさまざまです。組み合わせがたくさんあるだけに、どんな装備を身につけているのか、遊んでいる人にも聞きわけができるようにしたいと考えたんですね。

スタジオでさまざまな音を収録

装備などの音の収録は専門のスタジオで行いました。そこには木の枝や金属の破片、欠けた瓦にいたるまで、いろんな素材が用意されていて、私は協力会社の人と一緒に、開発中のゲーム画面を見ながら、それらを叩いたりこすったりして、さまざまな音の収録を行ったのです。また、リンクの足音の録音もそのスタジオで行ったのですが、土などを用意していろいろな固さに調整し、それを実際に踏んで、さまざまな土地に合わせて録音することもしました。が、ちょっと困ったこともありました。氷上を歩く音を録るために、大きな氷を買ってきたのですが、すぐに表面が溶けはじめてしまったので、慌てて収録を行いました。

前を歩く人のショルダーバッグがヒントに

そのように、いろんな音を録音して、剣などの3種類の装備の音として同時に鳴らしてみたのですが、まるで3人から同時に話しかけられたときのように、聞き取ることができなかったのです。そこで3つの音が鳴るタイミングを少しずつずらすようなことも試してみたのですが、何かがまだ足りないように感じられたんですね。


そんな折、会社の帰り道で目にした日常の光景が大きなヒントになりました。ショルダーバッグを背負った人が私の前を歩いていたのですが、片方の足を地面につけるときに、そのショルダーバッグが鳴ることがわかったのです。そこで、右足が着地したときは盾だけを、左足のときは弓、そしてちょっとずらして剣の音を鳴らすようにすると、それぞれの素材の特徴を損なわずに聞きわけができるようになったのです。


リンクの足音 リンクの足音

装備の音だけでなくリンクの足音も、プレイをしている間はずっと聞き続けることになります。そこで私は、遊んでくださるお客様がちょっとでも心地いいと感じていただけるように、細部までとことんこだわって音作りをしました。そのようなことができたのは、経験豊かな先輩たちが任天堂にいて、インターネットで調べてもわからないような、とても細かな音作りの技法や調整法までをも、惜しみなく伝授してくれたおかげだと思っています。そんな微妙なさじ加減ともいえる伝統の技法を、自分なりに解釈して、新しい製品に落とし込んでいけるというこの仕事に、私はとても満足しています。

社員略歴

安田 拓朗

安田 拓朗サウンド系/2014年 入社
2014年「サウンド系」入社。サウンドデザイナーとして、Wii U『Splatoon(スプラトゥーン)』(2015年)、Nintendo Switch / Wii U『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)、Nintendo Switch『スプラトゥーン2』(2017年)の開発に関わる。
職種