任天堂の曲づくりで大切なこと任天堂の曲づくりで大切なこと

メインテーマ曲を作る

サウンドスタッフとして入社した私は、『スーパーマリオ 3Dワールド』や『マリオカート8』、それに『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などの曲づくりに関わり、ステージやコースの曲でさまざまな経験を積むことができました。 そんな折、『あつまれ どうぶつの森』の音楽を担当することが決まり、そこで上司から「『あつまれ どうぶつの森』のメインテーマ曲を作ってみますか?」と言われたのです。

やる気満々で曲づくりに取り組みはじめたものの、それほど容易なことではありませんでした。というのも、私がそれまで関わってきた商品の開発では、どちらかといえば積極的に状況を演出するような音楽を求められることが多かったのです。ところが、『あつまれ どうぶつの森』では、ひとりひとりの楽しみ方があり、そのようなプレイヤーの遊びを邪魔しないような、隣にそっと寄り添うような曲づくりが求められました。

しかもメインテーマ曲ですから、フレーズをゲーム中のさまざまな音楽の中で使用するなど、他のBGMを作る指針にもなる重要な仕事です。さらに、長い間、ファンに愛され続けたシリーズでもありますので、「どうぶつの森らしさ」が求められると同時に、Nintendo Switchで発売される新作ということで「今作らしさ」も求められたのです。もちろん、CMなどのプロモーションにも使われるため、「音楽単体での完成度」も必要です。そこで私はしばらくの間、大いに悩み、何度も修正を繰り返すことになりました。

過去作を分析し、先輩の話を聞く

私がまず最初に取り組んだのは、過去のシリーズを毎日のようにプレイし、サウンドを分析することでした。そうやって、『どうぶつの森』のサウンドを自分の体できちんと理解できるようにしたかったのです。その一方で、シリーズの曲づくりに関わってこられた先輩たちの席に足を運び、開発当時にどんな考えで作曲したのかを、何度も何度も繰り返し聞くようなことも続けました。

すると、大きな気づきがありました。このシリーズについては、「のんびり」や「かわいらしさ」と表現されることが多いのですが、じつは「新生活にわくわくする気持ち」や「素朴さ」を意識して曲づくりがされてきたことがわかったのです。そこで私は、「新しいことがはじまるトキメキ」をメインテーマ曲で表現したいと思うようになりました。

さらに楽器選びについては、『あつまれ どうぶつの森』の舞台は無人島ですので、持ち運びが容易なものを選ぶことにしました。そこで上司のアドバイスもあり、フリューゲルホルンをメインの楽器に採用することにしました。この金管楽器で、無人島の解放感や、気楽に演奏しているような雰囲気が出せるといいなと思ったのです。

曲づくりというのは、天性のひらめきで作れることもあるかもしれません。でも、任天堂の曲づくりで大切なことは、ひとりよがりではなく、過去作のサウンドも含めた、幅広い音楽の探求の積み重ねや、開発中のゲームを実際にプレイしたり、いろんな先輩方や担当ディレクターの話を聞いてみるようなことを地道に繰り返すことだと思います。できるだけ多くの人に受け入れられるよう、周りと一緒に考えながら、試行錯誤をひたすら繰り返し、ようやくあるべき曲にたどり着けるのだと思っています。

社員略歴

岩田 恭明企画制作部/2013年入社
2013年「サウンド系」入社。
作曲・編曲スタッフとして、Wii U『スーパーマリオ 3Dワールド』(2013年)、Wii U『マリオカート8』(2014年)、Wii U/Nintendo Switch『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)、Nintendo Switch『ARMS』(2017年)、Nintendo Switch『あつまれ どうぶつの森』(2020年)の開発に関わる。
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